全教(全日本教職員組合)は、12月27日、書記長談話「2024年度政府予算案の閣議決定について」を発表しました。
2023年12月22日、政府は総額112兆717億円の2024年度予算案 を閣議決定しました。過去最大だった今年度当初予算を2兆3095億円下回るものの、2年連続で110兆円を超え、過去2番目の規模となりました。防衛省予算案は2023年度当初予算より1兆1292億円増額され、7兆9172億円となりました。今年度より予算総額が減るなかでも、大幅な防衛費の増額で「戦争する国づくり」をすすめる大軍拡予算となっています。一方で、文部科学省予算案は一般会計で前年度比443億円(0.8%)増の5兆3,384億円で、文教関係予算は4兆563億円(前年度比417億円増)と今年度当初予算並みとなっています。国民的要求である教育予算の大幅増額を行わず、大軍拡に突き進む岸田政権の姿勢が表れています。
教職員定数は「小学校における35人学級の推進」3171人、「小学校高学年における教科担任制の推進」1900人等を含め、合計9991人の定数増に対して、自然減等7776人、差し引きで合計1665人の定数増となります。「えがお署名」をはじめとする私たちのとりくみや、多くの教育関係者が声を上げ、運動を広げてきたことにより、13年ぶりの定数増を実現させたことは重要です。しかし、定年延長に伴う「特例定員」4331人を除くと、2666人の定数減となります。全教・教組共闘連絡会の調査では今年10月1日時点で、32都道府県12政令市で3000人を超える教職員未配置が起きています。すべての学校での少人数学級前進、教職員の長時間過密労働の改善、教職員未配置解消を実現するには程遠く、さらなる定数増が求められます。
また、支援スタッフや教員業務支援員、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー、学習支援員などの拡充は、現場からの期待に一定応えたものとなっています。しかし、現場の教職員がもっとも強く求めているのは、正規教職員を増やすことです。文科省は定数改善計画の策定や、標準法改正を視野に入れた抜本的な教職員定数の改善を行うべきです。
「GIGAスクール」「教育DX」関連予算が35億円となっています。その内「教育DXを支える基盤的ツールの整備・活用」の項目は今年度の1.5倍となる9億円が充てられています。文部科学省CBTシステム(MEXCBT)は2024年度の全国学力・学習状況調査や、2025年度の教科調査の悉皆実施での活用が予定されており、そのための予算拡充と考えられます。しかし全国学力・学習状況調査は児童生徒間、学校間、地域間の競争を煽り、その結果、授業時間を過去問題指導に費やすなど、過度な対策が問題点として社会的にも広く知られるところになりました。独自の学力・学習状況調査を取りやめる自治体も出てきています。子どもたちを過度な競争の中に置き続ける教育のあり方そのものから問い直されるべきであり、MEXCBT の拡充、押しつけや、全国学力・学習状況調査の悉皆調査を見直すべきです。
「高等学校等就学支援金」について、私立高校の授業料相当加算の対象は年収590万円未満世帯にとどまり、公立高校は年収910万円未満世帯に制限されます。「高校生等奨学給付金」について、引き続き非課税世帯・全日制等の第一子加算の増額があることは重要です。しかし、「高等教育の修学支援新制度 」は対象が非課税世帯等に限られ、個人や機関への要件でさらに対象を制限する等、課題は解決されないままです。各地方で、高校授業料の無償化をすすめる動きがあるもと、国の責任で教育無償化をすすめることが求められます。
全体として今回の予算は、教職員・保護者、地域が願う教職員定数の抜本的改善、少人数学級のさらなる前進に背を向け、国・財界のための「人材」育成や社会の「デジタル化」を学校教育へ強力に押し付け、公教育の市場化につながるものとなっています。
OECD の調査によれば、2020年度の日本の公財政教育支出の対GDP比は2.98%でOECD加盟38か国中、下から2番目です。OECD平均4.28%まで教育予算を増やせば、少人数学級や国際公約である高等教育の無償化の漸進的導入などを実現できます。物価高騰や引き続くコロナ禍から子どもたちのいのちと健康を守り、成長と発達を保障するために、大軍拡予算ではなく今こそ教育予算の増額が必要です。 全教は、大軍拡予算を大幅に削減し、「20人学級」を展望した国の責任による少人数学級のさらなる前進、正規・専任教職員の増員、給付奨学金制度拡充、公私ともに学費の無償化など、子どもの学ぶ権利を保障する教育予算への抜本的な転換を求め、保護者・地域住民とともに、2024年1月からの政府予算案審議における予算の組み替えに向けて奮闘する決意です。