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(談話)PISA調査結果について~「学力」偏重の教育を改め、子どもたちの成長と発達を保障する教育を

全教(全日本教職員組合)は、1月17日、書記長談話「PISA調査結果について~「学力」偏重の教育を改め、子どもたちの成長と発達を保障する教育を」を発表しました。


経済協力開発機構(OECD) は12月5日、「国際学習到達度調査(PISA2022) 」の結果を公表しました。

PISA2022は、81か国・地域から約69万人が参加しました。日本からは、全国の高校、中等教育学校後期課程、高等専門学校の1年生のうち、国際的な規定に基づき抽出された183校(学科)、約6000人が参加し、2022年6月〜 8月に実施されました。新型コロナウイルス感染症の影響で、2021年に予定されていた調査を2022年に延期して実施されたものです。

中心分野は数学的リテラシーで、 日本の平均得点(536点)は、「引き続き世界トップレベル」(国立教育政策研究所 。以下、国研)で、OECD加盟国中1位(順位の範囲:1-2位)とされています。前回調査(2018年)からOECDの平均得点は大きく低下する中で、日本は高水準で安定し、「各プロセスの平均得点」「各内容知識の平均得点」を見ても、国際的に高いとされています。また、OECD平均と比べて、習熟度レベル5以上の高得点層が多く、習熟度レベル1以下の低得点層が少ない傾向が引き続き見られ、高得点層の割合が前回より有意に増加していることが指摘されています。

他の分野「読解力」「科学的リテラシー」も、OECD平均得点の長期トレンドは下降している中で、日本は高水準で安定している、と分析されています。

この結果について、盛山正仁文科大臣はOECD主催の国際イベントで「対面での、教師と子供や子供同士の関わり合いを通じた学習の機会を極力確保されるなど、学校ならではの学びの充実に取り組んでいただいたことが、今回の結果につながった」「バーチャル世界のみで学ぶのではなく、五感を重視し、実世界を体験することが学習において非常に重要であると考えている。日本では、一つの教室で35人程度が集団で学び、一人一台端末などのICT機器も活用するが、他の生徒と討議したり、集団で外に出て実世界を体験したりする学習も重視している」「日本が今回好成績を達成できたのは、教師の献身的な取組によるところが大きいが、それのみに頼ることは持続可能ではない。引き続き、教師の厳しい勤務実態の改善に努めたい」と発言しました。

これらの結果は、正解が一つしかないテスト教育の「成果」であり、効率的に問題を解く方法やドリル学習主体の教育で培われた「学力」によるものとみることができます。「社会経済文化的背景」の水準に関係なく同じ程度の正解を出す子どもたちが多いと指摘されていますが、それはすべての子どもたちに強制する「全国学力・学習状況調査(以下、全国学テ)」の「効果」であるということができるのではないでしょうか。

しかし、PISA調査への偏重は、規格化された共通テストの実施を加速させ、量的に計測されるものへの依存度を上げてしまうことや、参加国がすぐに順位を上げられるような短期的に行える制度変更にばかり関心が集まってしまうおそれがあります。そのことで、身体的、道徳的、市民的、芸術的など、計測が難しい教育対象への関心が離れてしまう懸念もあります。

日本は2003年調査で順位が急落し、「PISAショック」と呼ばれ、文科省が全国学力テの復活や学習内容の増加など「脱ゆとり教育」を本格化させるきっかけとなるなど、PISA調査の結果に過剰な反応を示してきました。2018年調査で読解力が大きく順位を落としたことから「GIGAスクール構想」による「1人1台端末」の「活用」をすすめPISA調査に対応できるようにしてきました。今回の高順位という結果を受けて、文科省は「日本型学校教育」をますます子どもたちや教職員に押しつけてくることが考えられます。PISA調査結果が表すものは日本の子どもたちの「学力」というものさしによる一つの側面に過ぎません。

全教は、PISA調査結果に一喜一憂することなく、全国学テによる「学力」偏重の教育を改め、子どもたちがえがおでのびのび、生き生きと学び、遊び、生活することができ、成長と発達が保障される教育課程づくり・学校づくりのために、全力をあげてとりくみをすすめる決意です。

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