全教は、10月21日、文科省に対して「日本国憲法が保障する基本的人権を擁護し、教職員の政治活動の自由を保障することを求める申し入れ」を行いました。
近く行われる衆議院選挙は、今後の政治、教育のあり方に大きな影響を与える選挙であり、国民一人ひとりの政治活動の自由が保障され、主権者の意思表示によって国政の方向が決定されるという民主主義の発揮が求められています。選挙権年齢が「18歳以上」へ引き下げられ、有権者となる高校生の政治活動の自由を保障することなど、政府には積極的な役割が求められます。
文部科学省は、この間の国政選挙にあたって、「教職員等の選挙活動の禁止等について(通知)」を発出し、都道府県教育委員会等を通じた周知徹底を求めてきました。全教は、選挙のたびに発出されてきた「教職員等の選挙活動の禁止等」を求める通知について、法令に抵触していない正当な政治活動まで抑圧し、憲法に保障された基本的人権をないがしろにするものと厳しく批判してきたところです。
2012年12月7日に出された最高裁判決 では、国家公務員の政治活動を禁止した国家公務員法や人事院規則によって
禁止の対象とされるのは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為に限られ、このようなおそれが認められない政治的行為や本規則が規定する行為類型以外の政治的行為が禁止されるものではない
職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもないことから、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない
最高裁判所最高裁判所第二小法廷判決 平成24年12月7日 国家公務員法違反被告事件 平成22(あ)957
と断じています。文科省通知は、この判決の趣旨を十分に踏まえたものとは言い難いものです。
また、教育基本法 第14条は「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない」としており、通知2(5)にある「学校の政治的中立性の確保に留意」および「教育の政治的中立性を疑わしめる行為」「信用失墜行為の禁止に抵触する可能性」などの言葉で、良識ある公民として必要な政治的教養を育てる教育活動に委縮を生じさせること等は、避けなければなりません。
すべての国民には、主権者としての重要な権利として、政治活動の自由が保障されており、教育公務員といえどもその例外ではありません。憲法が保障する政治活動の権利を擁護する立場から、以下のことについて申し入れます。
- 法令に抵触していない正当な政治活動まで抑圧する「通知」を撤回すること。
- 文部科学省として、憲法で保障された教職員の正当な政治活動の自由を保障する立場に立った行政を行うこと。
- 高校生の政治活動の自由を保障する立場に立った施策をすすめること。