全教北九州共済会(全教共済)に御用の方は全教北九州共済会に移動する

権限移譲に関する意見

この文書は権限移譲交渉の資料として作成したものです。


目次

基本的な考え

今回の権限移譲による教職員の市職への移管は、今後の北九州の教育全般に関わる重要な制度の変更である。教育長も言ったように、この移譲が教職員のモチベーションを低下させるものあってはならない。

また、北九州市の将来の教育を考えるならば、若い教職員、これから夢と希望を持って北九州市の教職員になろうとする人たちが、情熱をもって教育に携わる教育環境と、安心して働き続けることができる勤務条件、労働条件の保障が重要であると考える。

今回の政令都市への税源・権限移譲は、行政の要望から始まったものであり、教職員が望んだことではない。この移管に際し、教職員に不利益が生じないよう、当事者である教職員の意見を十分に聞き、納得と合意のもとに制度設計をするべきであると考えている。                            

さて、北九州市の教員は、今三重苦で疲れきっている。三重苦とは、長時間勤務、過密労働、そして過重労働である。

大都市である北九州市は35人以上の学級が多く、地域の特徴を反映して生徒指導が必要な事案も多く発生するところである。また、学力、体力の低さが問題となっているが、その向上に向けて教員に様々な公務の押し付けが行われている。以上は三重苦の一部だが、そのような働き方が常態化していることを行政は知っていただきたい。

そのような三重苦の労働が強いられるなか、市への移管による給与削減、労働条件の低下を教職員は到底納得できない。例えば移管による給与の削減額が、北九州市以外の県費教職員と大きな収入の差を生じさせることであり、非常に公平感に欠ける。これにも納得ができない。例として、市職になれば地域手当は3%というが、福岡県の郡部は4.25%であり、県の人事委員会は「給与制度の総合的見直し」の経過措置が終わる平成32年度には、5%にあげると言っている。

三重苦で苦しみながら、日々努力してる北九州の教員はこれでは報われないし、士気も低下する。もう一つ危惧されるのが、北九州市を希望する人が少なくなるということである。考えれば、北九州の教員はわずか4%の教職調整額で、これまで文句も言わず一生懸命働き続けている。行政はこれに処遇で報いる努力をしていただきたい。

以上の理由により全教北九州市教職員組合は、これまでの給与、勤務・労働条件すべてをそのまま引き継ぐことが望ましいと考えている。また、移管してくる教職員の数は約5千人おり、移管後の北九州市職員数におけるかなりの割合を占めることになる。専門職であり職務と勤務様態の特殊性を考えれば、ダブルスタンダードになっても問題はないと考える。

給与について

給料表

労働内容は何ひとつ変わらないので、県の給料表を使うことが当然である。

総合的見直しに伴う経過措置

県職員は平成32年3月31日までの経過措置である。市の職員の平成31年3月31日までの経過措置となれば、移管によってかなりの不利益が生じることになる。教職員については、32年3月31日までの経過措置を行うべきである。

昇給

教員は、管理職のポストも少なく昇任での昇給を受ける割合は小さい。また、勤務成績による査定昇給制度は学校現場にそぐわない。従来通りの勤続年数による査定昇給を引き継ぐべきである。

地域手当

地域手当が下がることによる収入の低下は、従来の収入で生活設計を立てている教職員にとっては大打撃となり、モチベーションも下がる。特に、採用間もなく単身で暮らし、奨学金を返済している若い教職員にとっては負担感が増大する。地域手当の低下は毎月の給与だけでなく、期末勤勉手当等にも反映し、年間収入を大きく下げることになる。地域手当は、下げるべきではない。また、福岡県全体を見たとき、北九州市の周囲の市町村でも地域手当は4.25%であり、政令都市でもある北九州市の3%が適用されることに矛盾と不公平感を感じる。

通勤手当

まず、学校の立地場所は不便なところが多く、持ち帰りの仕事で荷物も多い。そのため、自家用車通勤がほとんどである。市の通勤手当をそのまま利用となると、片道15kmの人で毎月3700円の減額になる。これは総収入の減額に大きく影響する。教員の場合、日頃から家庭訪問や生活指導で自家用車を使っている。最近の数々の事件でも問題となった、不登校や問題行動を起こした児童生徒への教員の家庭訪問だが、児童生徒だけでなく保護者とのコミュニケーションをとるためにも、日頃から頻繁に行っている。また「まだ子どもが帰宅していない。」「万引きをした。」「公園でけんかをしている。」などの保護者や地域からの連絡で、担任だけでなく複数、場合によっては職員総出で出ていくこともかなりある。このような学校現場特有の事情を考えると、通勤手当の減額は納得がいかない。

時間外手当

給特法により教員に時間外手当がつかないのは知っているが、学力テスト、体力テストの取り組み等、公務命令によって与えられた職務が多様化・複雑化し、長時間過密労働は益々酷くなる、給与は下がる、行政職にはつく時間外手当が教員にはつかないとなると、現場の教員のモチベーションが下がる原因となる。

期末勤勉手当

地域手当の減額等によって、期末勤勉手当が減額される。期末勤勉手当でローンの返済や生活費の穴埋めをする人にとっては減額は打撃である。

退職手当

退職手当の算定がよくわからない。が、増えることはないと思う。市の算定では管理職には調整額がつくようだが、前述の通り教職員には管理職のポストも少なく、同じ調整額なら不公平ではないか? さらに、過酷な勤務実態から早期退職(昨年は退職者の1/4が早期退職者)を考えている教員が多い。県にはあった45歳以上20年以上勤務の職員に対する早期希望退職制度は維持するべきである。

勤務条件等

勤務時間

昼休みは、学校に勤めるものにとっては休憩時間ではない。小学校では様々なトラブルへの対応、学習の補習、委員会活動や生徒会活動などクラスを超えて行う活動の指導などが常時行われている。中学校でも給食後の休憩時間は生徒指導、後付けの休憩時間は部活指導に追われている。休憩時間をどうとらえるのか、どう保証するのかが根本的な問題である。勤務時間終了が17:15になれば、会議などを17:15まで行うことになり、ますます仕事を増やすことになり反対である。

年次休暇

労働基準法の趣旨からいえば、時間給取得に上限があることは望ましい。しかし学校現場の実態からいえば、半日休むと補欠に入る人がいなかったり、いても自習となったりして授業に穴があくことになる。児童生徒の学習権の保障、安全管理の上で時間休取得の制限なしはゆずれない。

病気休暇

結核性疾患の1年は維持するべきである。

学校は集団で活動する場であり、感染の危険性を考えると感染の心配がなくなるまで治療に専念できるようにするべきである。また、ヒューマンサービス労働である教員はストレスを感じやすく、長時間過密労働もあり精神疾患になる人が多い。治療には時間が必要であり職場に戻れば、また同様のストレスが待っていることを考えれば180日の休暇は維持するべきである。ガンも同様で、復帰後の簡便な労働が用意されない職場(デスクワークのみ、担任を外す等)であるから、十分な回復期間が必要であり、180日は維持するべきである。

学校現場は女性が多く、またストレスや過酷な勤務実態によって不妊で悩む人が多いのも実態である。不妊治療を病休取得の対象にすることも維持するべきである。1時間、1分単位の病休は必要である。児童生徒を下校させるまで責任を持ち、その後病院に行く場合、16:00からは出られず、17:00に出たのでは病院の受付に間に合わないこともある。(辺鄙なところにも学校はある。)時間で刻まず分単位が認められているのにはそのような事情がある。

公務による負傷疾病の扱いは市では職免とあるが、そもそも公務に起因しているものが所属長の許可がいる職免であることがおかしいと思うがなぜだろうか。学校は学校行事、実験、実習を伴う仕事が多く公務による負傷は起こる率が高い。病休を維持するべきである。職免にすることで現給保障をするのならば別である。

市の制度では、3日以上は診断書が必要とあるが、診断書を取るにはお金がかかるので領収書等でいいはず。また、今まで6日以内は、管理職が職員を信用し領収書等を提出しなくても病休は認められた。頭痛や腹痛、腰痛など病院にいく体力もない場合や、休養することで回復する場合も県は認められている。

日頃から授業に穴をあけないように無理をしている教員に対して、信頼関係を失うこのような労働条件の低下はあってはならない。病気休暇に関するほかの項目すべてにおいても、著しく県の制度を低下させるものであり、このような変更は認められない。

職員の結婚

県は、結婚休暇は半年後までにとることができる。これは、結婚しても旅行は長期休暇を利用してとるなど、学校現場の実態に合わせた県の制度であるので維持すること。

子育て支援休暇

ワークライフバランスの考えにたてば、このような県で積み上げてきた労働条件が下がることは許されない。子育てに手厚い制度は、当該の親子にとって必要なものである。また、看護だけでなく学校行事にも適用される県の制度は維持するべきである。下げる理由は何もない。

生理休暇

なかなか取得することができない現場の実態ではあるが、本来生理休暇は、生理中の体の安静だけでなく、将来も含めた母性保護のためにある。妊娠出産だけでなく女性特有の更年期症状にも影響する。ほとんど立ちっぱなしで仕事をし体育なども指導する女性教員にとって、生理日の苦痛と不快さは男性には理解できない。3日あればせめて授業終了後に早めに帰宅し、休養をとることができる。そのためにも時間や分単位で取得できる制度も残すべきである。

長期勤続休暇

10年、20年、30年の節目に3日休暇を取れる制度は市の制度に移行することで不公平が生じるので今までの制度を維持するべきである。教職員は授業に影響が出ないように長期休暇に取得するのだから、問題はない。

妊娠障害休暇

教員は、立ち仕事が多い、一人で多くの児童生徒を担任し仕事量が多い、夏は暑く冬は寒い環境の中での仕事、屋外での業務も多い、危険なことも起こるなどの理由から切迫流産などが多く,医師から安静を言い渡されても安静に仕事を行うことなどできない。つわりのときは、給食のにおいでも気分が悪くなることがあるが、避けることはできない。このような現場で働く教職員にとって、40時間以内の妊娠障害休暇は実態に合わない。14日という日数は維持するべきである。

スクーリング

専門職である教員の場合、免許取得のためにスクーリングが必要になることもある。スクーリングは特別休暇を維持するべきである。

介護休暇

6月以内の介護休暇に60日の取得制限を設けることは、介護離職を生むことになる。介護離職を生めばベテラン教員が職場を去ることになる。また、児童生徒の下校後に介護のため早退する人にとっては、30分単位も維持するべきである。

出張

自家用車出張

学校には公用車がない。また公共交通機関で出張に行くと、かなり早く学校を出ることになり児童生徒は自習が増えることなる。学校現場は辺鄙な場所にあることも多く、また午後からの出張に行く場合は公共交通機関の本数も少なくますます出かけにくい。また、職務によっては、学校を巡回訪問する出張もあるので、自家用車出張は認めるべきである。(例えば合馬小学校の教員が教育センターの2時からの研修に行く場合、11時20分には学校を出発し、昼食をとる時間もない。)※ 出張には、研修のみならず、少年自然の家での事前説明会、校外学習の下見、大会引率、教科書採択時の展示本閲覧などもある。養護教諭は、授業の区切りのようなものがなく、病人けが人の手当をした上での出張であり、常に時間に追われている。

この記事をシェアして応援していただけるとうれしいです。
目次