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(全教中央執行委員会声明)中教審答申「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する 総合的な方策について」の具体化を許さないたたかいに力をつくそう

中教審答申「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」について、全教(全日本教職員組合)は中央執行委員会声明を発表しました。


8月27日、中央教育審議会は「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」 を答申しました。「質の高い教師の確保特別部会」の「審議のまとめ」にわずかな修正を加えた内容です。

5月13日に「審議のまとめ」が公表されて1か月あまり後の6月14日にようやく始まったパブリックコメントには、わずか2週間で1万8354件もの意見が寄せられました。7月26日の第14回特別部会に提出された資料から、教職員定数の抜本的増員や残業代支給を求める意見や、「審議のまとめ」の問題点を指摘して、「このままでは学校がもたない」危機的状況は打開できないという意見が相当数寄せられたことが推察されます。ところが特別部会は、それらの意見を「誤解にもとづくもの」と斥けました。教職員の働き方の重要な変更の審議に現場の教職員がかかわれないばかりか、多くの人々の意見を受けとめようとしない中教審のあり方そのものが問われます。

私たちは、現在の危機は、教育予算を増やして、教職員定数増を実現することと、実際に生じた時間外勤務に対して手当を支給できるように給特法を改正し、長時間労働に法的な歯止めをかけることを一体的に進めることでこそ解消できると求めてきました。答申はさまざまな理由を述べて、教職員増による授業の持ち時間数の上限設定、時間外労働に対する手当支給の要求を否定していますが、その反論は矛盾に満ちており、かえって私たちの要求の正当性を際立たせています。

答申の問題点として以下の3点を指摘します。

まず、教職員定数増について基礎定数改善を先送りして、加配定数の改善にとどめ、教育予算の大幅増を求めていないことです。毎年度、予算獲得が必要となる加配定数に、教育委員会は臨時・非常勤教職員を充てざるを得ないため、社会問題化している教職員未配置がいっそう深刻化するおそれがあります。そもそも教職員定数が満たされていても業務量に比して教職員が不足している現状において、乗ずる数を引き上げる標準法改正による基礎定数の改善が最優先されるべきです。ところが、答申は「基礎定数を増やしても持ち授業時数の減少には用いられない可能性がある」と述べて、基礎定数改善を今後の検討課題としました。現場の切実な願いを裏切るものと言わざるを得ません。

次に、教職調整額を支給する給特法の仕組みは今もなお合理性があると述べ、長時間労働の法的な歯止めとなる残業代支給のしくみを否定していることです。超勤4項目以外の時間外勤務を命じないと規定しながら、給特法制定以来50数年間にわたって、無定量の長時間過密労働が容認されてきた大きな要因は法的な歯止め機能がないことです。引き続き、残業代を支給することなく実際に生じている時間外勤務をなかったことにしてしまうことは、法制上、到底許されません。政府・財界が労働基準法制を見直し、労働時間規制の緩和をねらっている情勢下で、答申の具体化を許さないたたかいは教職員のみならず全労働者のたたかいという意義を持っています。答申は、すべての教員の時間外在校等時間を45時間以内にする、将来的には月20時間程度にすると数値目標を掲げています。しかし、どのように在校等時間を縮減するか示していないことも重大な問題です。

第3に、新たな職と、新たな職に対応する給料表の新たな級の創設をすべりこませたことです。加えて人材確保法にもとづき一律支給されている義務教育等教員特別手当を学級担任に傾斜配分するとしています。いずれも教職員の共同を破壊し、教職員の差別化と階層化を進めるもので、子どもに向き合うよりも、言われたとおりにやればよいという教職員を増やすことにつながってしまいます。教員の仕事を高度専門職と位置づけ、自発性・創造性、自主的・自律的判断の必要性を強調する一方で、学校現場の指揮命令系統を強化しようとする答申の論理はまったく矛盾しています。

処遇改善にかかわって、財務省・財政審建議は、既定の給与予算の活用、および文科省の歳出・歳入の見直しによって財源確保するよう求めています。来年度の予算編成に向けた骨太方針2024は「財源確保とあわせて給特法改正案を提出する」と記述しています。処遇改善というのであれば、すべての教職員に一律におこなわれることこそ必要であり、それを可能とする教育予算増が伴わなければなりません。

答申とあわせて示された工程表によれば、給特法改定案は来年1月開会の通常国会に提出され、新たな職と級の創設や学級担任手当の加算などは検討を経て、自治体における条例「改正」に委ねられます。通常国会での議論を通じて、残業代支給の仕組みではなく教職調整額を増額することの問題点を明らかにして法案成立を許さないたたかいとともに、地方議会における条例化を許さないとりくみを展開することが重要になります。

全教は、全国の教職員が職場から中教審答申に対して怒りを込めて声を上げ、私たちの要求への社会的理解を広げ、保護者、労働者をはじめ多くの人々と中教審答申の具体化を許さない共同のたたかいを広げる決意を表明するものです。

                                       

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