全教(全日本教職員組合)は、3月21日、書記長談話「中教審「質の高い教師の確保特別部会」に長時間過密労働解消のための議論を求める」を発表しました。
3月13日、表記の特別部会が開催されました。昨年5月の中央教育審議会へ「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」が諮問されました。諮問内容から明らかな通り、中教審には現在の学校現場の長時間過密労働と教員不足の深刻な実態を受け止め、具体的な改善策を答申することが求められます。6月から始まった特別部会では、これまで、支援スタッフの配置や教職員定数増の必要性などが議論されてきました。2月の第9回から「教員の処遇改善の在り方について」が議題となり、3月13日には第9回で示された「教師の職務の重要性等を踏まえた処遇改善の必要性について」、「教師の職務と勤務態様について」の2つの論点に新たに「職務や勤務の状況に応じた処遇の在り方について」が示されました。
今回の議論の重大な問題は、長時間過密労働の解消という大きな目的をまったく見失った議論が展開されたことです。多くの委員が教育職給料表に新たな級を新設し、階層化の促進に肯定的な意見を述べています。2007年の学校教育法改定により導入された主幹教諭・指導教諭など教職員の階層化は、教職員間の民主的な議論による学校づくりを否定し、上意下達の指揮命令による学校運営への転換をはかるとともに、「メリハリある賃金体系」による総人件費抑制をねらうものでした。その結果、多くの学校現場で、教職員間の分断と孤立が進み、息苦しい学校・職場となってしまいました。このことが今日の病休者の高止まりや教職志願者減の要因のひとつであることは明らかです。教職員の階層化をさらにすすめることは、魅力ある職場をとりもどすことにまったく逆行しています。そもそも負担軽減を図ることが求められているのに、「メリハリある賃金体系」で分断を図ることは、現状の負担を「温存」し、むしろいっそうの負担を強いるおそれがあります。これでは教職員不足は解消できません。
次回4月の特別部会では給特法の見直しが議題となることが見込まれます。前回の特別部会では、給特法については、時間外勤務に対する手当支給を求める意見は少数で、子どもたちへの臨機応変の対応の必要性、業務の精緻な切り分けの難しさなどを理由に、教職調整額の上乗せに肯定的な意見が多数を占めました。しかし、教職調整額の上乗せには、長時間労働を抑制する効果はまったくありません。制定以来50余年が経過した給特法を改正し、勤務時間の計測対象となっている在校等時間を労働時間と認め、法の趣旨である時間外勤務を規制できるように、時間外勤務に対する手当支給のしくみをつくることこそ求められます。
全教は、引き続き中教審の議論を注視するとともに、長時間過密労働解消のたしかな道すじである全教の7つの提言が述べる総合的な施策の実施を答申することを求め、とりくみをすすめる決意です。