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全教 7つの提言「このままでは学校がもたない! 子どもたちの成長が保障され、せんせいがいきいきと働くことができる学校をつくる」

全日本教職員組合(全教)が2023年10月7日に発表した「全教 7つの提言 このままでは学校がもたない! 子どもたちの成長が保障され、せんせいがいきいきと働くことができる学校をつくる」をご紹介します。

目次

はじめに

教職員の長時間過密労働と「教育に穴があく」深刻な実態が、「このままでは学校がもたない」危機的な状況に追い込まれています。子どもたちは、忙しくゆとりなく働いているせんせいをみて、授業での質問や悩みごとの相談をためらうなど、人間らしくふれあう時間がうばわれ、ゆたかな人格を育むことが阻害されています。この間、「学校における働き方改革」がすすめられてきましたが、状況の改善につながっていません。

教職員がいきいきと働ける条件を整えることは、子どもたちの教育条件を整えることであり、かけがえのない学ぶ権利を保障することです。いま中教審で「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」審議が始まっています。子どもたちの人格を育むことができるゆとりある教育現場をつくることが急務です。

全教は、この教育危機を打開し、子どもたちの成長や発達が保障され、せんせいがいきいきと働くことができる学校をつくるために、以下の7つの提言をおこないます。

1.教職員の抜本的改善を

勤務時間内で授業準備やすべての勤務が完了できる時間の確保

小学校の年間標準授業時数は1015時間です。平均すると週29時間となります。ほぼ毎日6時間授業で、小学校の担任には空き時間がほぼないので、授業準備や成績処理などは子どもたちの下校後となります。しかし、放課後は会議や打ち合わせがあり、勤務時間内にそれらを終えることはできません。教職員定数を増やし、ゆとりのある学校にすることが必要です。

教員の授業持ち時間数に上限を設定

義務標準法 がつくられたとき、「授業1時間につき準備1時間」を基本として教員数を決めるようにしたため、小学校の授業は教員一人当たり「週20時間」が標準とされました。それが、教育にお金をかけない教育政策と膨らみ続ける学習指導要領 によって教員の持ち時数が増やされ続けてきました。原点に立ち返って、教員の担当授業時数の上限を設定し、当面、小学校20時間、中学校18時時間、高校15時間を目標に計画的に教職員定数を改善することが必要です。

「総額裁量制」「定数崩し」を廃止し、正規教職員の配置を原則とする教職員定数改善を

各地で深刻化している教員未配置(教師不足)解消のため、緊急的な対応に加え、抜本的な改善策を講じることがもとめられています。「定数くずし」による臨時教職員の拡大・多用化をやめ、「総額裁量制」を廃止し、都道府県・政令市が正規教員の配置を原則とするよう国として予算措置することが必要です。

スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、支援員など、必要な専門職員をすべての学校に配置

いじめの増加や過去最多になった登校拒否・不登校などに対応するため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの存在は大きくなつています。学校常駐も含めた拡充がもとめられています。ほかに、ICT支援や部活動支援などの専門的知識のある支援員の配置も必要です。

2.少人数学級の推進を

小学校35人学級を前倒しさせるとともに中学校・高校でも早期の実現を

すべての子どもたちの成長と発達を保障し、ゆきとどいた教育を実現させるため、小学校35人学級を前倒しして完成させるとともに、中学校・高校での早期実現が必要です。

20人学級を展望した少人数学級を推進

少子化を理由に全国各地で学校統廃合がすすめられていますが、むしろ学級規模を縮小する対応とすべきです。いまこそ義務・高校標準法 を改正し、国の責任による小・中、高校すべての学校で、「20人学級」を展望した少人数学級の前進が必要です。

特別支援学級の1クラス8人を6人に、2学年以内の複式学級編成に

特別支援学級の学級編制標準を1学級6人に改善し、少なくとも通常の複式学級同様に2学年以内で編制し、小学校で1年生が在籍する学級は少人数編制とすることが必要です。

3.競争主義的な教育政策の見直しを

学習指導要領を見直し、教育内容の精選と総授業時数の削減

学習指導要領の押しつけ、首長・議会や行政の介入など、子どもや教職員をしばり、教育内容の管理統制を強化することに強く反対します。特に、改訂学習指導要領の抜本的な見直しと、憲法 にもとづく学問・教育の自由を尊重する施策を求めま
す。

目の前の子どもたちに責任をもつ、各学校の教育課程編成権の尊重

機械的な授業時数確保がおこなわれ、子ども・教職員の声を聞くことなく学校行事の削減などがおこなわれている実態があります。学校は教科の学習だけでなくさまざまな活動を通して子どもたちの成長と発達を保障する場です。学校行事は人間関係を育み、子どもたちの可能性を大きく広げる機会でもあります。学校の教育課程はそのような観点から子ども・地域の実態をふまえ編成するもので、行政からの介入があつてはなりません。

過去最多となっている登校拒否・不登校やいじめ、自殺などの課題を急ぎ解決するために、子どもの悩みや苦しみ、様々な思いに寄り添い、人間として尊重する教育課程づくりをすすめることがもとめられています。

学校教育をゆがめている、悉皆の全国学力・学習状況調査の廃止

国連子どもの権利委員会「日本政府第4・5回統合報告に関する最終所見 」をふまえ、子どもの権利条約を遵守し生かす立場から、子どもたちや学校にいつそうの競争と序列化をもたらし、学校教育をゆがめる「全国学力・学習状況調査 」(金国学テ)の廃止をもとめます。当面、全国学テの悉皆実施を中止し、民間企業等への「個票データ等の貸与」をおこなわないよう強く求めます。

4.給特法の改正を

「在校等時間」をはじめ、学校教育に必要な業務を「労働時間」として法的に整理

常態化した時間外勤務については、「上限指針 (第7条)」を改訂し、「在校等時間」や学校教育に必要な「持ち帰り業務」を「労働時間」と規定し、使用者による労働時間管理義務を明確化するよう求めます。

常態化した時間外勤務に対しては残業代を支給する仕組みを法制化

教員の長時間労働に歯止めがかかつていない現状を解決するために、長時間労働に法的抑制をかける「時間外勤務手当および休日勤務手当」を支給する仕組みを法制化するよう求めます。

教職調整額は、専門職としての職務給として位置づけ

教職調整額については、教員の職務の専門性、特殊性に対応する職務給であることを明記し、4%を維持します。

5.労働安全衛生体制の確立を

小規模校をふくむすべての学校に衛生委員会設置を義務化

管理職だけでなく教職員の代表もふくめ、ハラスメント防止や休養室の設置、一人ひとりの勤務実態の改善や、悩みを抱える教職員を孤立させずにサポートできる体制を整えるなど、働きやすい職場環境の改善を法的拘束力をもってすすめていけるよう求めます。

市区町村単位(服務監督権者ごと)に総括衛生委員会の設置

学校による長時間労働の実態格差の解消や、市区町村全体でおこなわれるべき教育環境改善や にもとづく産業医の配置などを求めます。

6.部活動の見直しを

学校部活動が教職員の長時間過密労働の大きな要因となつていることから、当面次のような見直しを求めます。

  • 部活動への強制加入や「全員顧問制」、顧問押し付けがないよう、必要な部活動指導員を配置すること
  • 地域のスポーツ・文化施設の整備・拡充を図り、適切な指導員の養成確保に国が責任をもつこと
  • 保護者負担が増大することにないように、国、自治体が支援すること

7.教職員の声を施策に反映させるしくみを

教育課程や学校の在り方について、各校の教職員の民主的な議論を重視すること

教育課程や学校のあり方については、教職員全員の民主的で集団的な議論が欠かせません。職員会議も決定事項の伝達の場にとどめることなく、必要なことについて民主的な議論ができるようにします。

中央教育審議会や教育委員会等が設ける審議会に、教職員や教職員組合の代表の参加を

ユネスコ における特別政府間会議で採択されているILO/ユネスコ「教員の地位に関する勧告 」では、「教員団体は、教育政策の決定に関与すべき勢力として認められなければならない」とあります。中央教育審議会 をはじめ、教職員の代表が、直接現場の教育に責任をもつ立場として意見を出せる場を保障することは、ゆきとどいた教育をすすめていく上でも必要なことです。

公務員の労働基本権を回復し、現場の声の反映を

教員の労働条件の向上のために、国、都道府県や市区町村、職場の各段階で、労使対等で交渉によって決定することができるようにするために公務員の労働基本権回復が必要です。

さいごに

教育研究者有志が呼びかけている全国署名のとりくみをすすめるとともに、この提言をもとに、教職員と保護者、地域の人々、教職をめざす学生のみなさんとの話し合いや教育委員会や議会に働きかけをすることをよびかけます。来年の春には一定の方向性を示すとしている中教審に私たちの意見を反映させましょう。

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