全教(全日本教職員組合)は、10月12日、書記長談話「改めて明らかになった学校給食民間委託化の構造的な問題と「公共を取り戻す」とりくみの重要性」を発表しました。
9月初め、広島市に本社を置く給食サービス会社「ホーユー」が、全国各地で業務委託契約を結んでいた学校への給食提供、寮や官公庁の食堂への食事の提供を中断したことの波紋は大きく社会に広がっています。報道によれば同社が契約していた全国およそ150の施設の給食・食事の提供が止まりました。そのうち、約半数の施設には事業停止の事前連絡はなかったとのことです。その後、同社は裁判所に破産申し立てをして、9月25日に広島地裁から破産手続き開始の決定がなされました。現在、同社のホームページには「お詫びおよび破産手続き開始のお知らせ」のみが掲載されており、そこにはコロナ感染症による利用者減少、物価高騰と人件費増が経営悪化を招いたと記されています。
しかし、今回の給食などの提供の中止は、民間委託化の構造的な問題によるものととらえることができます。同社は、他の業者と比べて極端に低い価格を提示して、契約先を拡大してきたことも報じられています。この事実からうかがえることは、調理担当者の低賃金労働と、経営状況等を把握することなく応札価格最優先で業者を選定してきた当局の姿勢に問題があるということです。
学校給食は、食を通じて健康と豊かな人間性を育む食育という教育活動の一環であり、子どもたちの成長や発達にきわめて重要な役割を担っています。特別支援学校では、子どもの障害の状態に応じた刻み食やペースト食など食形態の準備などきめ細かな対応が求められています。しかし、この間、行政の効率化などを掲げて、民間委託化が進行し、業者は低価格への競争を強いられ、給食の質の低下が懸念されてきました。
いま、学校給食無償化を求める幅広い運動が展開され、東京都23区のうち18区、県庁所在地で青森市、大阪市、奈良市、高松市、那覇市など、約500の自治体で無償化が具体化されています。その際、質の低下を招くことなく、食材の地産地消など、農業や漁業など地域経済の好循環や食の安全を視野に入れたとりくみを重視している自治体もあります。このような自治体のとりくみを支え、直営で自校方式の給食提供を可能とするような政策が展開されるべきです。
ことは学校給食にとどまりません。学校や自治体における現業職員や図書館司書などの民間委託化をすすめるのではなく、直接雇用に転換することが求められます。また、公共事業において公契約条例をいっそう推進するなど、行政が公共部門を積極的に担い、人々のくらしを支える政策こそが求められています。
全教は、保護者のみなさん、地域のみなさん、自治体労働者のみなさんと連携して「公共を取り戻す」運動を前進させる決意です。