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新聞全教北九州2023年7月号

「働き方改革」は教育現場でも推進されてきましたが、実際の労働時間の改善にはほど遠い状況です。2022年の文科省の勤務実態調査によれば、前回の調査と比べて僅かな減少にとどまっています。これはコロナ禍で実施した調査の影響で、行事の縮小などが在校等時間の減少に寄与した可能性が示唆されており、現場の教職員は改善を実感できない状況です。

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教職調整額の増額より増割増賃金の支給を!

機能していない上限45時間

2019年に行われた給特法の改正により、北九州市でも教員の労働時間の上限が設定されました。この上限は、首長や教育長による順守の責任が課されました。しかし、文科省が定めた勤務上限月45時間を超える残業が依然として存在しており、過労死ラインである月80時間以上を超えて働かざるを得ない状況も放置されたままです。これは、働き方改革の指針が現場で機能していないことを示しています。

残業を前提とした状況の改善には関係者の協同が必要

残業を前提とする状況は、教育現場における労働環境の改善や働き方改革の進展に向けて、より一層の取り組みが必要であることを示しています。この取り組みは政府や教育委員会、労働組合などが連携し推進することが必要です。

教員の仕事は社会的な責任が大きく、教育の質を維持・向上させるためには専門性を発揮する必要があります。そのため、無理な働き方や長時間の残業が生じることがあります。そのため労働時間の適正化や負担軽減のための施策、労働環境の改善、業務見直しの促進など、さまざまな方策が必要です。

割増賃金とコスト意識向上は残業抑制に有効

残業抑制策として割増賃金の支払いを求める意見や、労働コストの意識向上が重要であるという意見があります。労働コストが高くなることで、文科省や教育委員会が労働時間の適正化や業務量の見直し、教職員の適切な配置などを考慮せざるを得なくなるでしょう。このような規制や意識の向上は、長時間の残業抑制に有効です。

教職調整額の増額は長時間の残業を助長するおそれ

教育現場の働き方改革には、単純な議論や取り組みではなく、複合的で継続的なアプローチが必要です。文科省、教育委員会、労働組合などが協力し、教員の労働環境の改善と教育の質の両立を目指すべきです。

文科省が検討している教員調整額の増額は、労働時間の問題や労働コストの考え方の曖昧さが進み、長時間の残業を助長するおそれがあります。

例えば、民間の固定残業代が長時間労働や違法な労働状況を助長する場合があるという指摘があります。固定残業代に関する最高裁判決においても、違法な労働状況を是正するために規制が強化されています。

働き方改革を推進する上で市長と教育長が果たす役割は大きい

文科省や教育委員会が行う取り組みは、教育現場の実情や教員の声に基づいて慎重に検討されるべきです。また、教員や労働組合、専門家などの関係者との対話や協力が重要です。さらに保護者や地域の理解と支援は、教育現場における働き方改革の推進において重要な要素です。これまでの学校教育の現状維持や充実を求める保護者の声があることは理解できます。そのため、社会や地域が学校の働き方改革を理解し、応援する社会に変わるためには、市長や教育長の役割が重要です。

市長や教育長は、教職員の働き方改革を市政の重要課題と位置付ける必要があります。保護者や市民に対して、働き方改革の必要性やその意義を説明し、理解を促すために積極的にメッセージを発信することが重要です。

このような取り組みが保護者や地域の理解を促し、安心して働き方改革を進めるための土壌を作り上げるのではないでしょうか。

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