この文章は、2022年5月1日の第92回北九州統一メーデーで行った全教北九州市教職員組合の発言です。
文科省は1月31日、全国の公立学校の「『教師不足』に関する実態調査」の結果を発表しました。2021年4月1日時点、5月1日時点の不足数が示されましたが、それ以降の教員不足はいっそう深刻です。文科省は継続的に調査を実施し、実態を明らかにして、教員不足解消のために教員を増やす具体的な施策を講ずるべきです。教員不足の根本的な原因は、教育予算を抑え、総額裁量制や定数を崩して臨時・非常勤の教員を多用してきたことによるものです。教職員の賃金や処遇を抑えてきたことも重大です。教員採用試験の受験者が減り、教員を目指す学生が減少しているのは、端的にこの間の教育政策が大きな失敗であったことを示しています。
教員不足、長時間過密労働が解消されない中、小中学校における一人一台端末の配備から1年が経過し、教育の機会均等という重要な理念が置き去りにされている問題が明らかになっています。家庭の通信環境や保護者の対応などによる差や、教員の得意・不得意による使用状況に差がある現状です。また初回こそ公費負担で配備された一人一台端末も今後はBYOD(個人が私物として所有しているパソコンなどを仕事や授業で使用すること)の方向性も示されており問題です。高校における端末配備を公費負担とすることを求めることに加え、「一人一台端末」を子どもたちの成長と発達を保障するように活用する教育実践を研究することが求められます。
一方、この間の文科省の政策は、学校における働き方改革と強く結びつけられており、GIGAスクール構想やICTの活用が、あたかも教職員の負担軽減に直結するかのように描かれています。文科省がまとめている「全国の学校における働き方改革事例集(令和4年2月改訂)」には、ICT活用によって業務の効率化をすすめる例が「紹介している取組例の中には、見直しすることに賛否両論があるものも含まれるかもしれません。(中略)しかし、人・モノ・カネ・時間という限りあるリソースを有効活用するためには、業務に優先順位をつけて精選を進めていく必要があります」という文章とともに紹介されています。教職員の負担軽減は必要ですが、その判断は現場の教職員に任せるべきです。また、経済界主導の政府の案では、一人一台端末の活用を通じて子どもや教職員の個人データを収集し、だれもが教育データを利活用できるようにすることの利便性などが、個人情報の保護やいったん収集された個人情報の削除を求める権利を保障することよりも優先されています。子どもたちを守るために、マイナンバー制度に見られる「便利」の陰に潜むものを見失ってはいけません。
全教北九州市教職員組合は、子どもたちと教職員の命と安全、豊かな教育を守るために、仲間を増やし、また市民の皆さんと力を合わせて頑張る決意です。