全教北九州共済会はこちら

(全教談話)子どものスポーツ・文化要求実現と教職員の働き方改善を基本に据えた部活動改革の推進を

1月18日、全教は昨年12月27日に発表された「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方に関する総合的なガイドライン」に対する書記長談話を発表しました。


スポーツ庁・文化庁は2022年12月27日、「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン 」(以下、「ガイドライン」)を発表しました。

このガイドラインは2020年9月の文部科学省「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革について」およびスポーツ庁・文化庁「部活動の地域移行に関する検討会議提言」(2022年6月・8月)を具体化するために出されたものです。しかし、寄せられた980件のパブリックコメントの中には、「拙速に移行するものではない」「3年間の移行達成は現実的に難しい」「(地方のとりくみは)義務ではないことを明記してほしい」など、部活動の地域移行そのものに批判的な意見が少なくありませんでした。このことは、部活動の地域移行に対する理解や共感の広がりが不十分であることの現れであり、ガイドライン案の「改革集中期間」が「改革推進期間」と修正され、「地域の実情に応じ、関係者の理解の下、できるところから取組を進めていくことが望ましい」と書き込まれたことは、きわめて重要です。

しかし、このことによって、部活動の改革が止まってしまうことがあってはなりません。今後も、地域移行を押しつけるのではなく、教職員、保護者、関係者、何よりも子どもたちの合意形成を大切にしながら、子どものスポーツ・文化要求の実現と教職員の働き方の改善の両方を基本に据えた部活動改革の推進が求められます。以下、その観点からガイドラインに対する見解を述べます。

目次

1.学校部活動の改善のために

「新たな地域クラブ活動」が創設された場合であっても、学校部活動の多くが残ることは明らかであり、その改革と改善は待ったなしの課題です。ガイドラインの力点は、まずこの部分に置くべきです。

その一環として、ガイドラインが、部活動顧問の決定にあたって「本人の抱える事情等を勘案する」としたこと、教職員が「直接休日の指導や大会等の引率に従事しない体制の構築」を求めていることはきわめて重要です。パブリックコメントに寄せられていた「顧問を望まない教員に強制しないこと」などの記述は追加されませんでしたが、ガイドラインを活用して地方教育委員会への要請や各学校でのとりくみを強め、顧問の強制に反対する動きを広げていくことが求められています。

子どものスポーツ・文化要求をかなえるためにも、子どもたちの自主的・自発的な活動を中軸に据えた学校部活動への改革が求められます。この点から見ると、学校部活動に関する方針の策定等が、このガイドライン⇒都道府県の「方針」⇒学校設置者の「方針」⇒校長の「活動方針」等⇒教職員や部活動指導員、外部指導者といったように、上意下達で行うしくみとなっていることは重大な問題です。部活動顧問の決定はもちろん、各学校での部活動に関する方針や計画の策定について、子どもたちを含め、保護者、教職員の民主的な話し合いで進めていく体制の構築が必要です。

また、教職員の働き方改善のためには、部活動の運営・指導のための時間を含め、教職員の長時間過密労働を解消するための条件整備が不可欠です。各学校や地方教育委員会のとりくみまかせにせず、国の責任で正規教職員を大幅に増やし、受け持つ授業の時間数をはじめ、教職員一人あたりの業務量を縮減していくことが重要であり、文科省がそのことに正面から取り組むよう、強く要求します。

2.「新たな地域クラブ活動」の創設にあたって

今回のガイドラインにおいて、「地域部活動」という名称が「新たな地域クラブ活動」に変更されました。地域クラブ活動においても、子どもたちの自主的・自発的なとりくみを中軸に据えた活動をすすめていくことが求められますが、そのために必要な視点や条件が整備されているとは言えません。

第一に、部活動の地域移行の方針が示された時、多くの教職員や保護者、国民が危惧したのは、「地域部活動」がスポーツ産業等の新たな市場としてねらわれ、公教育への民間大企業参入が進行してしまうのではないか、ということでした。そのことによって、保護者の負担が増大したり、自治体や家庭の経済状況による格差が拡大したりしてしまうことも重大な問題です。

ガイドラインには、「可能な限り低廉な会費の設定」や「経済的に困窮する家庭の生徒の地域クラブ活動への参加費用の支援等」の記述がありますが、これは、すべての子どもの権利を保障する立場とは異なります。子どもたちのスポーツ・文化要求にこたえ、その成長・発達を支えるためには、地方自治体と国がそれぞれの役割を果たしていくことが重要です。スポーツ産業の利益優先ではなく、子どもの権利保障としての地域クラブ活動が運営されるようにするための手立てを盛り込むことも必要だったのではないでしょうか。

第二に、地域クラブ活動によって子どものスポーツ・文化要求を実現していくためには、他国と比べてきわめて貧弱なスポーツ・文化施設、指導者の体制の抜本的改善が不可欠です。そのためには国の予算措置が欠かせませんが、この点についてもガイドラインは全く触れていません。

スポーツ庁・文化庁の概算要求で118億円が計上されていた部活動の地域移行のための予算が、年末に発表された政府予算案では28億円に削られ、2022年度の第二次補正予算の19億円を加えても要求額の半分にも満たない状況であることもまた、重大な問題です。

第三に、地域での指導者の確保、養成・資質向上についてです。これらのことは、都道府県・市区町村とスポーツ団体等にまかされていますが、技術指導の力量だけでなく、子ども理解や教育的配慮を踏まえた指導者としての資質を備えることができるような提起ととりくみを求めます。

また、地域クラブ活動への教職員の兼職・兼業について、「指導を望んでいないにもかかわらず参加を強いられることがないように」「勤務時間等の全体管理」などが追記されたことは重要です。現場での運用にあたっては、さらに踏み込んで、兼職・兼業の場合においても、教職員の時間外勤務の上限ガイドライン(月45時間)が遵守されるよう、とりくみを強めることが求められています。

3.大会等の在り方の見直しについて

パブリックコメントには、全教からも含め、「全国大会や地方大会の廃止」を求める意見が寄せられましたが、「本ガイドラインの趣旨を踏まえて改めて検討し、…生徒にとってふさわしい全国大会等の在り方…に見直す」、「全国大会の開催回数について…適正な回数に精選する」といった記述にとどまっています。学校部活動の改革を進める上でも、新たな地域クラブ活動を意味あるものにするためにも、全国大会・コンクール等について、廃止を含めて抜本的に見直していくことは不可欠の課題です。各地域において、ガイドラインに提起された「多様な大会の開催」など、さまざまなとりくみを展開し、全国大会・コンクール等の廃止を求める声をいっそう大きく広げていくことが重要です。

全教は、すべての子どものスポーツ・文化要求を実現し、教職員の働き方を改善できるよう、教職員、保護者、地域の関係者のみなさんとの共同を広げ、部活動の改革に取り組んでいく決意です。

この記事をシェアして応援していただけるとうれしいです。
目次