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(全教談話)中教審特別部会で議論されている「学校と教師の業務の3分類」のアップデートについて

全教(全日本教職員組合)は、9月19日、書記長談話『中教審特別部会で議論されている「学校と教師の業務の3分類」のアップデートについて』を発表しました。


8月19日、中央教育審議会初等中等教育分科会における「教師を取り巻く環境整備特別部会」で、改定給特法を受けた形で、「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針」の改定案が示されました。今後、議論を重ね、秋に改定された指針が示され、2026年4月から施行される予定です。

改定案には、2019年の答申の「学校・教師が担う業務に係る3分類」のアップデートが盛り込まれていますが、業務を仕分けた「3分類」は2017年から示されています。5年後の2022年実施の文科省の勤務実態調査では、時間外勤務を1か月で計算すると、小学校72時間20分、中学校76時間、高校56時間40分といずれの校種も月45時間を大きく上回っており、「3分類」が労働時間の短縮に効果的で自治体・学校に浸透し活用されていたとはいえません。支援スタッフが配置されたとしても、「依頼する段取りが新たな業務になる」「翌日の業務を依頼したいと思っても15時過ぎには退勤している」などの声や、「「3分類」のひとつ「「必ずしも教師が担う必要のない業務」にあたる「休み時間における対応」について、実際は、宿題の丸つけをしながら、子どもたちの「先生、あのね」に耳を傾け、次の授業で使うものの準備を別の子どもたちに頼むなど、その内容は教育活動そのものであり、常に複数のことを同時にこなしているため、切り分けられないのが現実だという声が届いています。

「3分類」の最大の問題点は、お金をかけずに、現在配置されている教職員で業務分担しようとしていることです。「「3分類」が長時間過密労働解消にあたって、必ずしも有効でなかったことの反省と総括がないまま、「3分類」の内容を14項目から19項目に増やしました。修正を図った「学校と教師の業務の3分類」は、「過労死ライン」80時間超えの教員を早急にゼロにし、全教職員の時間外勤務45時間以内達成の決定打になり得ません。

「教師以外が積極的に参画すべき業務」に事務職員等が中心に担うことで軽減を図ることが示されています。新たに盛り込まれた広報資料、ICT関連業務にも事務職員等が中心であることが明記されています。実習教員は、「高等学校等におけるメディアを利用して行う授業に実施に係る留意事項」(通知)において、遠隔授業の受信側の配置として、昨年4月から事務職員とともに位置付いています。また「給食時間における対応」の食に関する指導に、1校1名配置が全く実現していない栄養教諭等も明記されています。このままでは、事務職員、実習教員、栄養教諭等に過重な負担を強いることになります。時間外労働縮減の対象はすべての教職員でなければなりません。業務支援員、支援スタッフ、専門スタッフ等の配置は、国として実効ある予算措置があってはじめて実現するものです。2026年度文科省概算要求に示された「教員業務支援員」の配置は、今年度比2800人のみの増員です。また、指針改定案には、保護者や地域住民の支援といったボランティア任せの対応も散見され、目標と具体化に向けた対策があまりにも乖離しています。

「3分類」に盛り込まれたICT機器・ネットワーク設備の保守・管理、学校プールや体育館等の設備管理の外部委託、部活動の地域展開など一定業務改善につながる側面や、調査・統計等への回答や文書量の縮減なども指摘されていることは重要です。しかし、現場の声を反映させず、一方的に押し付ける施策では、教師の教育の自由と専門性が阻害されます。新たに「学校以外が担うべき業務」に加わった「保護者等からの過剰な苦情や不当な要求等の学校では対応が困難な事案への対応」も、ともすると学校が、保護者の思いや願いを一方的に「苦情や不当な要求」と見なしてしまう危険性も孕んでいます。「教師の業務だが負担軽減を促進すべき業務」に「授業準備」「学校行事の準備・運営」「支援が必要な児童生徒・家庭への対応」が対象になっていますが、本来、何が重要な業務で、何を削減するかは、現場の協議と判断に委ねられるべきであり、現場の必要に応じて予算措置がなされるべきです。

全教は、長時間過密労働解消のために、基礎定数を抜本的に改善し、持ち授業数の上限設定するために教職員増を強く求めます。少人数学級の実現は、一人ひとりの子どもの思いと願いに寄り添い、教師にゆとりとやりがいをうみ出します。そのために、職場での対話や社会的なアピールを広めていく決意です。

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