全教(全日本教職員組合)は、4月9日、書記長談話『奈良教育大学附属小学校から出向させられた教員の復帰について』を発表しました。
4月1日、奈良県教育委員会、奈良教育大学附属小学校はそれぞれ人事異動を発表し、昨年度公立小へ強制出向をさせられた3名の教員と、学内の新設部署に事務職として配転させられた教頭の、あわせて4名の原職復帰が明らかになりました。また、新たな出向者が出ないことも明らかになりました。
これは、強制出向させられた3名の教員が原告となって裁判をたたかい続けてきたこと、奈良教育大教職員組合連合を中心として複数回の団体交渉を行ってきたことの成果です。しかし、復帰の理由は出向者の「健康上の理由による」とされており、不当な処分そのものは撤回されていません。加えて、教育課程の自主編成権への介入も撤回しておらず、問題は残されたままです。同様に、当初示されていた19人の教員を他校へ順次出向させる方針についても撤回をしていません。あくまで「今年度は希望者がいない限り出向させない」だけであり、来年度以降もこの問題は継続することになります。
そもそもの発端として、奈良教育大学側は、文部科学大臣へ「奈良教育大学附属小学校における教育課程の実施等の事案にかかわる報告書」を提出し、その「報告書」において教育実践を学習指導要領通りでないということだけで「不適切」と決めつけました。この報告書自体が教育課程の自主編成権を自ら放棄する行為といえます。
学習指導要領 はその前文で、「教育課程の基準を大綱的に定めるものである」として、「各学校がその特色を生かして創意工夫を重ね、長年にわたり積み重ねられてきた教育実践や学術研究の蓄積を生かしながら、児童や地域の現状や課題を捉え、家庭や地域と協力」することが重要である、としています。
しかし、奈良教育大学は、「報告書」の内容もその後の方針についても撤回しようとしていません。加えて、文部科学省も、奈良教育大学附属小学校の問題を理由にして、大学及び附属学校に対して学習指導要領の順守の確認と点検を求める「通知」を全国の国立大学法人に発出しましたが、その「通知」も撤回しておらず、重大な問題を残したままです。改めて、学習指導要領を理由とした学校現場への介入、教育課程の自主編成権への侵害自体が撤回されたわけではありません。これは、今も全国すべての学校現場へ対して、教育課程編成に一種の「委縮」効果を及ぼす攻撃が続いていることの現れだと指摘せざるを得ません。
全教は、文科省に「通知」を撤回することとともに、改めて現場の教職員の自主性・自律性を保障し、創意ある教育課程編成を認めることを求めるものです。引き続き、今後の推移を注視し、日本の民主教育を守り、人格の完成をめざすゆきとどいた教育を実現するために、学校現場の教育課程編成権への不当な攻撃を許さないとりくみをすすめます。