全教(全日本教職員組合)は、12月27日、書記長談話『2025年度政府予算案の閣議決定について』を発表しました。
2024年12月27日、政府は総額115兆5415億円の2025年度予算案を閣議決定しました。3年連続で110兆円を超え、過去最大の規模となりました。防衛省予算案は2024年度当初予算より9%以上増額の8兆7005億円となりました。一方で、文部科学省予算案は一般会計で前年度比645億円(1.2%)増の5兆4029億円で、文教関係予算は4兆1218億円(前年度比656億円増)と、微増にとどまっています。総選挙で教育予算増を掲げた政党が過半数を占めているにもかかわらず、教育予算の大幅増額を行わず、大軍拡に突き進む石破政権の姿勢が表れています。
教職員定数は「35人学級の推進等、義務標準法の改正に伴う定数増」「中学校における生徒指導担当教師の配置拡充」等、合計5827人の定数増に対して、自然減等8803人、差し引きで2976人の定数減となります。すべての学校での少人数学級前進、教職員の長時間過密労働の改善、教職員未配置解消の実現に逆行するものです。文科省は標準法改正を視野に入れた、抜本的な教職員定数の改善を行うべきです。
教職員の処遇改善として、教職調整額が来年度5%へ増額されること、2026年度以降も段階的に10%まで引き上げることが盛り込まれました。本給に位置づけられている教職調整額の引き上げは生涯賃金の増額につながり、すべての教職員に対して一律に行われる処遇改善として重要です。しかし、給特法制定時の53年前と比べ、授業時数の増加や道徳の教科化、小学校における外国語教育の導入、GIGAスクールなどICTの導入、観点別評価など評価の複雑化など、教職員を取り巻く状況は大きく変わっており、教職員定数の抜本的改善や長時間労働の法的な歯止めなどがないままの教職調整額の増額では、いっそうの長時間労働を生み出す危険性もあります。
抜本的な教職員基礎定数の改善が不十分である上に、時間外勤務手当支給を可能とするしくみについては何も触れられていません。そもそも教職調整額は、教職の特殊性に対する職務給としての性質を有しているのであり、「みなし残業代」「固定残業代」ではありません。それは、給特法が時間外労働を禁じていることからも明らかです。教職調整額とは別に、長時間労働に法的な歯止めをかけるために、実際に生じた時間外労働に対し残業代支給を可能とするしくみをつくることが必要です。
「新たな職」と「級」の創設は教職員の分断につながりかねません。差別化、階層化により、目の前の子どもたちより、いかに自らへの評価を高めるかを重視する教職員を生み出す懸念があります。担任への義務教育等教員特別手当の加算も分断につながる懸念があります。「メリハリある処遇改善」は、すべての教職員が子どもたちの教育に関わっている現場の実態を無視するものです。
来年度予算ではありませんが、2026年度から中学校における35人学級の方針が示されました。今年9月に公表されたOECD調査で、OECD諸国における2022年の中学校の学級規模は日本が最大であり、環境として最低だったことが明らかになりました。ゆきとどいた教育実現に向けて一歩前進であり、歓迎します。しかし2026年度での財源確保など条件がつけられています。中学校における35人学級の確実な実行、そして高校での35人学級、特別支援学校・特別支援学級のさらなる少人数学級化前進は急務です。
何より、依然として学級規模が大きいことに変わりはありません。先のOECD調査によれば、OECD平均は小学校で20.7人、中学校で22.9人です。中学校での35人学級導入については、小学校での効果を検証した上で検討するとされてきました。20人学級を展望して、さらなる少人数学級化を行うべきです。
OECDの調査によれば2021年度の日本の公財政教育支出の対GDP比は2.90%でOECD加盟38か国中、下から2番目です。OECD平均4.15%まで教育予算を増やせば、少人数学級や国際公約である高等教育の無償化の漸進的導入などを実現できます。東日本大震災被災県の子どもたちをケアする教職員定数はさらに減らされ、能登半島への人的措置は見られません。大軍拡ではなく今こそ教育予算増額が必要です。
全教は、大軍拡予算を大幅に削減し、「20人程度学級」を展望した国の責任による少人数学級のさらなる前進、正規・専任教職員の増員、給付奨学金制度拡充、公私ともに学費の無償化など、子どもの学ぶ権利を保障する教育予算への抜本的な転換を求め、保護者・地域住民とともに、2025年1月からの政府予算案審議における予算の組み替えに向けて奮闘する決意です。