現在、様々な業種・職種で人手不足が起きています。売り手市場となる前から、「定額働かせ放題」の「ブラック職場」というイメージが定着した教員の志願者数は減少を始めていました。これは「長時間労働の解消」「教員を増やそう」と訴えてきた、私たちの要求に国がまじめに取り組んでこなかった結果です。北九州市は試験日程を前倒して実施しましたが、問題の解決につながったでしょうか?
試験日程の前倒しで人手不足は解消できる?
試験日程の前倒しで教員確保?
文部科学省は現在の試験日程では民間に学生が流れるという理由で、実施を前倒しするように各都道府県政令市の教育委員会に強引な要請を行いました。その結果、北九州市を含め多くの地域が約1か月前倒し一次試験を6月中旬、二次試験を7月下旬に実施しました。同時に、一次試験を大学3年生から受験できるようにしました。
これらの変更は効果があったのでしょうか。北九州市教員採用情報専用サイトによると、志願者数は、小学校では若干増えたものの、中学校、特別支援学校、養護教諭ではいずれも減っています。日程変更の効果は見られなかったと言えるのではないでしょうか。なお、教育委員会提供の資料によれば、今年の試験の倍率は、教職経験者特別選考(現職正規教員枠)募集をこれから行うことなどからデータを出していません。
前倒しに効果はあったか
今年度の倍率をみる限りでは、教員採用試験日程を前倒しした効果はあまり見られません。一次試験を受験して合格した大学3年生が、来年度の二次試験を受験するとは限りません。
日程の前倒しは受験する人、学校の双方に大きな影響があります。前倒しの日程では、年度初めから2か月半しか経過しておらず、学級・学校は落ち着いていません。また、修学旅行や運動会・体育祭などの行事や、部活動によっては中体連等の日程が重なり、多忙な方もいます。さらに、教育実習の時期にまで影響する学校もありました。
ところが、文科省は、来年度は5月の連休明けに日程を前倒しするよう要請をしています。これでは試験対策がさらにできないばかりか、教育実習を一次試験後に行う必要が出てきます。大学生は教育実習で自分が教員に向いているか、やりがいを感じるかを確認できないまま試験を受けることになります。
前倒しで不利になる講師
一次試験が免除されない非常勤・常勤講師にとっては、試験対策の時間が十分確保できません。そのため講師の受験率は約30%、そのうち合格率は35%、対する新卒者の合格率は40%です。一方、福岡県では平均すると約55%。中学校や特別支援学校では約60%となっています。新卒者を一定採用する必要は世代をつなぐために必要ですが、講師の受験率と合格率は改善が必要です。
「辞退者数は想定の範囲内」でよいのか
前倒しと同時に気になることは、採用試験最終合格者に占める辞退者の人数です。小学校はとりわけ多く24年度23年度ともに約50人が辞退しています。校種合計では24年度約80名、23年度約60名が辞退しています。
教育委員会はこの問題について、次のように述べています。
最近、受験者が複数の自治体を併願受験する傾向が全国的に顕著となり、さらに、複数の自治体から合格を得た受験者が自治体を選択する時代となっている。このことを受け、近年、最終合格者(二次試験合格者)とは別に、「補欠合格者」の枠を設け、辞退者が出ればここから繰上合格を行い対応してきた。しかし、辞退者が出そろう時期が、最終合格発表の2カ月後になるため、本来北九州市が第一希望であった「補欠合格者」のなかには、他都市から先に声がかかり、他都市へ採用される事態が発生した。そこで、そのような繰上合格者の他都市流出を防ぐため、令和4年度実施分から面接等で確認した「併願の有無」や「北九州市に縁があるか」といった内容を鑑み、最終合格者の中からどの程度の辞退者が出るかを予想して、これまでの「補欠合格」の枠ではなく、辞退者数の予測も「最終合格者」の枠に初めから上乗せして盛り込むこととした。これにより、辞退者数と採用者数についても予測の範囲内となり、教員採用への影響は出ていない。
選ばれるために必要なこと
委員会も分析しているように、採用合格者が自治体を選択する時代となっています。であれば、試験日程の前倒しよりも、「定額働かせ放題」「ブラック職場」という教員の仕事についたイメージを根本的に解消し、合格者に選択してもらえる給与・勤務条件とすることが必要ではないでしょうか。
北九州市は、福岡県からの権限委譲(2017年4月)以降、多くの面で賃金・労働条件が切り下げられました。特に給与面での県内較差(福岡市、福岡県、北九州市の順)はぜひとも改善できるように、秋に行われる給与等改定交渉に臨みます。
私たちは引き続き、教育予算の増額、教職員の増員、業務削減、多忙化解消などを求めていきます。