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(全教談話)財政審建議の問題点

全教(全日本教職員組合)は、5月29日、書記長談話『財政審建議の問題点』を発表しました。


5月21日、財務省財政制度等審議会が「我が国の財政運営の進むべき方向 (以下「建議」)を財務大臣に提出しました。「建議」は、2025年度政府予算編成について財務省の考え方を示し、6月に閣議決定される「骨太方針2024」に向けて財務省の考え方を反映させようとするものです。「建議」は財政健全化や規律ある財政運営の必要性を強調し、社会保障や教育関連予算を抑えることに多くのページを費やす一方で、突出して急増する防衛予算について一切言及していません。

「建議」は「人口減少下での教員の処遇の見直し」という項を設け、教員の給与は一般行政職と比べて優遇されていると述べ、教職調整額の増額は適当でないと結論づけています。5月13日に中教審・質の高い教師の確保特別部会「審議のまとめ」 が示した教職調整額を10%以上に増額することを否定しています。また、「建議」は、教員の処遇の改善は一律に給与水準を引き上げることによるのではなく、メリハリある給与体系とすることを基本とすべきであると述べています。さらに、その財源は従来の文科省予算の歳出・歳入を見直して捻出すべきであるとして、教育予算の増額をまったく認めていません。

このような主張から、財政審が、財政支出の引き締めばかりを偏重し、学校現場の長時間労働と教職員未配置の深刻な実態を見ようとしない姿勢であることが明らかです。「建議」は、中教審特別部会の「審議のまとめ」が「教師を取り巻く環境は我が国の未来を左右しかねない危機的状況にあると言っても過言ではない」と述べた認識を共有しようとしません。

財政審が、その主張を正当化するために、都合のよいデータのみ用いていることも問題です。たとえば、小学校教員採用試験受験者の新卒者が減っていないデータを示す一方で、中学校や高校教員採用試験受験者の新卒者が減っているデータは示していません。また、「採用倍率の低下は、教員の年齢構成による近年の大量退職・大量採用に伴う構造的な現象である」と決めつけていますが、その裏付けとなるデータは示していません。さらに、採用間もない教員の退職者が増加していることや、病気休職者が増加しているデータを示さず、教職が長く働き続けられなくなっている現実から目を背けています。したがって、「建議」は教職員の長時間労働と教職員未配置問題の解決を求める切実な願いと完全に乖離しています。

全教は、5月14日の中央執行委員会声明 で、中教審特別部会の「審議のまとめ」には重大な問題があることを指摘しました。教職員増について基礎定数増を先送りして加配定数増にとどめたことは、現場の願いを裏切るものです。教職調整額の増額は長時間労働の歯止めになりません。メリハリある給与体系と称して上意下達の体制を強化することは、子どもたちの教育をつかさどる教職員の専門性をまったく尊重しないということにほかなりません。

全教は、引き続き、実際に生じている時間外勤務に手当を払うしくみを設けるよう給特法を改正すること、教育予算を増やし、教職員定数を抜本的に改善することを求めてとりくみをすすめます。

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