2023年3月29日
貴職におかれましては、すべての子どもの成長・発達を保障するゆきとどいた教育の条件整備に向けてご尽力されていることに、敬意を表します。
記録的な物価高騰と労働者の実質賃金の低下は、子どもたちの成長や学びにも深刻な影響を及ぼしています。また、長時間過密労働は一向に改善されず教職員の健康と生活も危うい状況におかれています。 全教北九州市教職員組合は、学校現場で子どもと正面から向き合っている教職員の切実な要求を中心に、2023年春闘期の要求書を提出します。貴職におかれましては、今後とも、憲法と子どもの権利条約をいかした教育施策をすすめていただき、以下の具体的な事項の実現に最大限のご尽力をいただくことを要求します。
目次
教職員の賃金・雇用に関する要求
教職員の給与制度等の見直しについて
- 総人件費抑制と成果主義賃金の拡大、「メリハリある教員給与」の政策を見直し、働き方に応じた適正な教員賃金水準を確保できるよう、国に要請すること。
- 「同一労働同一賃金」の原則に基づき、低位となっている常勤講師の教育職給料表2級への変更又は1級の給料表の足伸ばし等によって給与水準を引き上げること。
- 教員の給与水準の引上げのため、教育職2級の職務段階別加算割合をそれまでの10%に戻すこと。
定年延長、雇用と年金の接続について
- 定年延長職員、定年前短時間勤務職員、再任用職員が学校現場で果たしている職務の実態を踏まえ、賃金水準の引き上げ、支給する手当の種別拡大をはじめとした労働条件を抜本的に改善すること。
- 短時間職員を定数から除外すること。
教職員賃金などの改善について、以下の要求の実現に向けて努力すること
- 教職員の賃金を平均給与月額4万3千円、臨時・非常勤職員の時給を250円以上引き上げること。
- 会計年度任用職員にも勤勉手当を支給すること。また、時間講師の授業時間単価を引き上げるとともに、期末・勤勉手当を支給すること。
- 賃金改善にあたって、初任給の大幅な水準引き上げを行うこと。
- 事務職員の昇給にあたっては、経験年数など客観的基準にもとづき、全員を対象に行政職表4級まで昇級させること。栄養職員についても事務職員に準じて昇級を実現すること。
諸手当について
- 扶養手当の支給範囲、支給基準、支給額を改善すること。
- 借家の住居手当の支給内容を改善し、支給額を引き上げること。
- 通勤手当を大幅に改善すること。
臨時教職員の待遇改善について
- 臨時教職員の雇用の安定を図ること。
- 会計年度任用職員の任用期限を廃止すること。
教職員の働き方に関する要求
長時間過密労働の解消に関する要求
- 教育委員会は、管理職の目視や出退勤記録などから教職員の在校時間を正確に把握し、削減のために必要な具体的措置を、責任をもって講じること。
- 教育委員会は、教員の時間外労働は、限定4項目以外は違法であり許されないとの給特法の趣旨を全ての学校に徹底すること。現に存在している時間外勤務については「振替」などで適切に調整すること。
- 「上限45時間」を表面上守らせるために、管理職の「持ち帰り仕事の呼びかけ」「退勤時間の違法な打刻の呼びかけ」「自己研鑽への削除時間の呼びかけ」が行われている。管理職への指導を徹底すること。
- 「一年単位の変形労働時間制」を導入しないこと。
- 管理職が休憩時間付与義務を守らない職場に対しては、労基法の趣旨を徹底させること。
- 超過勤務の具体的解消に向け、行事や会議、研修の削減・精選を教職員の合意のもと進め、勤務時間内に退勤できるための労働環境の改善、整備をおこなうこと。
- 教材研究、成績処理等の時間を勤務時間に確保するため、全ての教員の持ち授業時数の上限を小学校で週20時間以下、中学校では週18時間以下(道徳、総合、学活、裁量を含む)とすること。
- 上記の実施を行うために必要な専科教員をすべての小学校に配置すること。
- 児童生徒数300人以下の学校から事務補助員を引き上げ、学校事務職員にその仕事を充てることは、学校事務職員の労働強化につながっている。この施策の見直しを図り、学校事務職員の労働改善を図ること。また、学校事務職員の超過勤務に対しては、必ず残業手当の申請を行うように指導すること。
- 給食費等の学校徴収金の公会計化を行うこと。
- 休校や学級閉鎖等の措置があっても行き過ぎた授業時数の確保を行わないこと。
- 教職員の定数については正規教員で完全に配置しすること。
- 部活動は、教員も生徒も希望者のみで行うこと。最低でも土日のいずれかを休むことを徹底させること。
- 研究指定校を大幅に減らすこと。
- 宿泊を伴う行事には、適正な勤務時間の割振り行わせること。
- 校内新採研修は勤務時間内におこなわせること。
- 校務支援システムを活用しやすいものに改善すること。
- 年休など各種有給休暇の取得を保障すること。
- 土曜日授業を実施しないこと。
育児介護に関わる制度に関する要求
- 育児休暇の男性の取得促進を具体化すること。
- 子育て支援休暇の対象に中学校卒業時までの子、特別支援学校高等部在籍の子を加えること。
- 育児のための短時間勤務制度について、代替教員の配置など条件整備をおこなうこと。
- 「介護休暇」「短期介護休暇」の取得日数を増やすこと。
その他の休暇制度に関する要求
- 学期途中で産前休暇に入る教員の代替教員を学期初めから任用すること。
- 臨時教職員の産休取得にあたって、代替措置をおこなうこと。
- 不妊・不育治療のための休暇制度をさらに充実させること。
- 会計年度任用職員の休暇等について、常勤教職員に準じた制度にすること。
- インフルエンザ以外の疾病についても、診断書の提出を7日以上の場合にすること。
- 病気休暇の日数計算に休業日を含めないこと。
- 病気治療と仕事の両立のために、短時間勤務制度を新設すること。
- 教職員及びその家族等の感染により勤務できない状況が生じた際、当該の教育活動に支障がないよう適切な人員の確保・配置を行い、安心して病気療養、介護が出来るように校務の体制を整えること。
教職員の評価に関する要求
- 教員間の共同を妨げる教職員評価を押しつけないこと。また、賃金リンクを行わないこと。
- 評価結果の本人への開示を制度として行うこと。
- 学校長は、評価制度について全職員に説明を行い、面談は年2回必ず行うこと。
- 不服申し立てについては、労使双方に中立的弁護士を含む第三者機関に判断をゆだねること。
- 教職員の分断につながる主任手当制度を廃止すること。
教職員のいのちと健康を守る施策に関する要求
- 管理職の責任による教職員の勤務時間管理をすすめること。
- すべての学校に男女別トイレ、更衣室、休憩室の設置、保健室・プールに温水シャワーを設置すること。
- 妊娠教職員、病気治療中、休職明けの教職員などの労働軽減をおこなうこと。
- 腰痛多発職場である特別支援学校の労働条件・環境を改善すること。
- 労働安全衛生委員会の趣旨をいかすため、職場の衛生推進者を機能させること。
職場におけるハラスメント対策に関する要求
- ハラスメントはどこの職場でもあるという認識のもと、教職員が安心して働ける職場環境を整えること。
- 公益通報制度を含む相談窓口を全職員に周知徹底すること。
憲法と子どもの権利条約に基づく民主的教育確立に関する要求
- 「特別の教科 道徳」の指導と評価のありかたについては、児童生徒の内心の自由の侵害につながらないようにすること。
- 「新たな教師の学びの姿」を押し付けないこと。「研修等に関する記録」作成と「資質の向上に関する指導助言」などによる、特定研修のおしつけや命令が行われたり、教職員の負担が増大したりすることのないよう、徹底すること。
- 中堅教諭等資質向上研修、初任者研修は、教職員の自主性を守り、教員の子どもと向き合う時間の確保などの観点からその在り方を見直すこと。
- 免許外教科担任、臨時免許状の授与がなくなるよう教育委員会としての責任を果たすこと。
- 小中一貫校、義務教育学校の設置や、学校統廃合の押し付けを行わないこと。小中一貫教育モデル校において、年齢に応じた発達保障が損なわれないようにすること。
- 学習者用デジタル教科書・教材の「普及促進」で、教員の自主性や専門性を損なうことのないよう配慮すること。
- 児童支援加配の勤務内容について公教育に反する不適切な勤務実態、事象に対しては毅然とした態度で改善のための指導を行うこと。
- 防衛省や自衛隊による中・高校生への入隊の勧誘、職場体験学習や総合的な学習の時間などでの体験入隊、学校行事への自衛隊の参加などを行わせないこと。
学力テスト・体力テストに関する要求
- 市独自の学力テストは中止すること。学力テスト後の自校採点、過去問対策、単元末テスト、学力定着サポートシステム等の活用を強制しないこと。
- 新体力テストの全学年での実施をやめること。
- 「全国学力テスト」は、抽出校のみで実施することを文科省に要望すること。
- 得点競争を助長する「全国学力テスト」の学校別結果を公表しないこと(平均より上、下も含める)。
- 「学力テスト」の結果、平均点を下回る教科の教員を対象とする「特別研修」等を実施しないこと。
教育条件の整備に関する要求
学級編成に関する要求
- 中学校・高等学校の全学年で35人学級を実施すること。
- 情緒学級の児童生徒が交流授業に入り定数を超える場合は、その児童生徒の人数も踏まえて学級編成を行うこと。
- 特別支援学級の定数を、8名から6名に減らすこと。
特別支援教育に関する要求
- 特別に支援が必要な児童生徒に対する人的配置を充実させること。
- すべての小・中学校に専任の特別支援コーディネーターや学習・生活支援員を配置すること。
- 希望する児童・生徒が一人でもいる場合は、特別支援学級を設置すること。
- 特別支援学校では、学級の数だけ普通教室を確保すること。
- 通級指導教室の学習環境を整えること。
学校への職員配置に関する要求
- すべての小学校に「外国語」の専科教員を配置すること。
- すべての小学校に専科教員を配置し、担任の持ち授業時間が減るようにすること。
- 養護教諭の複数配置をすすめること。
- 日本語指導の担当指導教員数を増やすこと。
- 学校事務職員の全校配置を行うこと。
- 事務補助員を全校配置すること。
- ICT支援員を全校配置すること。
- スクールカウンセラーを全校配置すること。
- スクールソーシャルワーカーを増員し、学校に配置すること。
学校の施設・設備に関する要求
- 室内の適切な照度、騒音防止等良好な教育環境を確保すること。
- 特別教室にエアコンを設置すること。
- 手洗い場を増設すること。
- 洋式トイレやユニバーサルトイレを増設すること。