2021年度に公立の小中高校と特別支援学校で精神疾患を理由に休職した教員は20年度より694人多い5897人で、過去最多になったことが文部科学省の調査でわかりました。また、精神疾患で一か月以上の病気休暇を取得した人を合わせると計1万944人となり、初めて1万人を超えました。精神疾患の休職者は、「働き方改革」が推進されているにも関わらず、この15年ほどは5千人前後で高止まりしています。
21年度の教員「心の病」の病気休職・休暇取得者、過去最多に
市教委は現実に向き合い改善を
教育委員会に病気休職取得者数を照会したところ「令和2年度は29人で10年前と比較して半減している」との回答でした。一方、文科省の人事行政状況調査で北九州市の状況を調べたところ、直近3年間の病気休職・休暇取得者は、令和元年度66人(内病休者24人)、2年度56人(病休者29人)、3年度68人(病休者41人)と高止まりの傾向が続いていました。
市教委には、北九州市全教職員の1%以上の教員が「心の病」で休職・休暇に追い込まれている現実と真摯に向かい合い、教職員の長時間労働、過密・過重労働の背景・原因を検証し、改善する責務があります。
全教の調査にみる問題の背景
1月19日、全日本教職員組合(全教)が10年に一度実施している「教職員勤務実態調査2022」の第1次集計の結果を発表しました。(詳細2面)全教では、これまでの調査結果と比較することで、教職員の深刻化している勤務実態を可視化し、長時間過密労働をなくす取り組みに生かしています。
この調査では、教職員の時間外勤務の月平均時間は、10年前と比較して、校内での時間外勤務の時間が増え、持ち帰り仕事の時間が減っていました。時間外勤務の総計は平均92時間32分で過労死ラインである月平均80時間を越えていました。
また、法律で使用者が労働者に保障しなければいけない休憩時間も、平日の休憩時間の平均は11.4分(前回調査は19分)で、57.7%が全く休憩時間を取れていないと回答しており、過密で多忙な教育現場の実態が明らかになっています。
持ち帰り仕事も、一層厳しくなった個人情報漏洩防止策などで減少しているものの、今でも多くの教職員が行っている実態が明らかになりました。このような働き方が健康を蝕み精神的疾患の一因となっていると考えられます。
このような結果について全教は、10年前に実施した調査と大きな変化はなく、「月平均で80時間の『過労死ライン』を超えておりきわめて遺憾」としています。
全教北九州の取り組み
2000年代年初頭には1500人程度だった病気休職者が、この20年間で3.5倍と異常な増え方です。全教北九州市教職員組合は10年前、急増する病気休職者・休暇者に危機感をもち、リーフレットを作成し配布しました。教育委員会との交渉では、長時間労働の背景や原因を現場の教職員の声や実態を交えながら明らかにし、改善を強く求めました。しかし、教職員の長時間労働、教員特有の過重・過密労働は一向に改善されていません。
組合の会議では時短に関する多くの不満が聞かれます。また、これから具体化が予想される教員免許更新制廃止後の新たな研修制度による管理・統制の強化、勤務評定の賃金リンクによる職員間格差や分断など息苦しい職場環境は今後も増え続けるでしょう。
このような教育現場では、自身の健康を自衛することも重要です。きつい時には我慢や無理をせず休養する、周囲の同僚に相談する、周囲にそのような人がいなければ全教北九州に相談してください。
組合には悩みを共有する仲間がいます。全教北九州の組合員となり、教職員が「健康で安心して働き続けることができる環境のもとで、より良い教育を行える」教育現場をご一緒に実現していきましょう。