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新聞全教北九州2023年1月号

文部科学省は、教員免許更新制に代わる新たな研修制度として、「改正教育公務員特例法に基づく公立の小学校などの校長および教員としての資質の向上に関する指標の策定に関する指針の改正などについて」(通知)を22年8月31日に発出しました。23年4月1日からは、新たな研修制度の中心となる「研修記録の作成及び資質の向上に関する指導助言等」が始まります。この研修制度で教員の「資質・能力」は向上できるでしょうか。

目次

「新たな教師の学びの姿」は何をめざしているのか

管理され主体性が保障されない

改正の趣旨では、「教職生涯を通じて探求心を持ちつつ主体的に学ぶ」「教師の個性に即した個別最適な学びの提供」「協働的な学びの機会確保」の重要性など共感を誘う言葉が並んでいます。

しかし概要をみると「校長の監督を受けた『研修主事』が、研修計画立案、連絡調整、指導・助言を行う」「教員は『研修履歴』を記録し、任命権者は履歴を活用して、研修について指導助言を行う」となっています。

これは教員間に「研修を管理する、される」の関係性をつくり、同僚性を損なう研修制度です。併せて研修履歴は24年度を目途に国が一元管理することや任命権者の「受講奨励」に応じない教師には懲戒処分をちらつかせ受講を強要するという内容も含まれます。

「探求心を持ちつつ主体的に学ぶ」教師像を求める一方で受動的、悉皆的要素を伴う研修体制をつくり教員を管理・規制する方法では、改正の目的である「資質・能力の向上」はできません。

「国による教員管理」の道具か

より効果的な教師の資質向上を図るための指針改正のポイントでは、次の4点が明記されています。

  1. 教師に求められる資質能力を5つの柱で再整理。(教職に必要な要素、学習指導、生徒指導、特別な配慮や支援を要する子供への対応、ICTや情報・教育データの利活用) 
  2. お互いの授業を参観し合い、批評し合うことも含め、校内研修を活性化させること 
  3. 研修後の成果確認方法を明確化、知識・技能の習得状況を確認するテストを含め、研修企画段階から成果の確認方法を設定すること 
  4. 教科指導については、指導主事による定期的な授業観察・指導助言に関し効果的・効率的な実施体制を整備すること

テスト等を課して研修の成果を確認することは、研修を通じて教師を管理するためのものに他なりません。

教員免許更新制廃止の目的には、教職員の長時間過重労働の解消が挙げられていましたが、これでは、研修の実績、成果、反省などを人事評価に反映させる「能力・実績主義」であり、精神的・身体的疲労による病気休職や離職の増加が危惧されます。

主体的な研修の保障を

「研修」は、「教職員の力量を高めることで、子どもたちにより良い教育を行う」ためのものです。

目の前の子どもたちにどのような力量を高めるかは、子どもたちの実態を知る教員が最もよくわかっています。教員の誰もが「子どもたちのためによい実践をしたい、そのために学び、実践力をつけたい」と願っています。

国や教育委員会の定めた上からの資質・能力の向上策や官制研修の押し付けで教師のやる気、意欲を削ぐのではなく、主体的・創造的な教育研究活動を保障することやそのためのよりよい環境を整えることが教育行政の役割です。

教育の主体は「教員」であり「学問・教育の研究の自由」「研修の自主性」が尊重・担保されてこそ「教師の学びの姿」が保障され、活気ある教育現場が実現できるのです。

任命権者である北九州市教育委員会には、これらの課題・問題点を事前に想定・把握し「新たな研修制度」が教育の充実に沿った制度になることを要求します。

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