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(全教談話)大軍拡予算を大幅に削減し、子どもの学ぶ権利を保障する教育予算への抜本的な転換を

全教は、12月27日、2023年度予算案の閣議決定に対する書記長談話を発表しました。


2022年12月23日、政府は総額114兆3812億円(2022年度当初予算比6.3%増)と過去最大の2023年度予算案を閣議決定しました。12月2日に可決された2022年度補正予算と合わせると143兆円余りとなる大型予算案となっています。防衛省予算案は2022年度当初予算より1兆4214億円増額され、9年連続過去最大を更新する6兆8219億円となりました。防衛政策の大転換である「敵基地攻撃能力」の保有等を具体化する安保3文書の改定が行われ、2027年度まで5年間で防衛費を43兆円程度確保するとされています。「防衛力強化資金」を2023年度予算とは別建てで3兆3806億円とするなど、「戦争する国づくり」をすすめる大軍拡予算となっています。一方で、文部科学省予算案は一般会計で5兆2941億円(2022年度比123億円増)、文教関係予算は4兆146億円(同82億円増)と今年度当初予算並みとなっています。国民的要求である教育予算の大幅増額に背を向け、大軍拡に突き進む岸田政権の姿勢が表れています。

教職員定数は「小学校における35人学級の推進」3283人、「小学校高学年における教科担任制の推進」950人等を含め、合計4808人の定数改善とする一方、自然減等6132人を含め合計7282人の定数減としており、差し引き2474人の定数減となっています。小学校4年生での35人以下学級をすすめ、小学校高学年での教科担任制を推進するものですが、少人数指導等の加配定数を一部振り替えて教科担任制を実施する等としており、加配定数削減により学校現場に困難をもたらす懸念があります。すべての学校での少人数学級前進、教職員の長時間過密労働の改善、教職員未配置解消には程遠いものです。

いじめ・不登校の増加などに対して、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの拡充が引き続き示されたことは重要です。さらに、正規の専門職として配置・拡充していくことが求められます。また、「子どもの心身の健康を担う養護教諭等の業務支援の充実」として養護教諭の定数改善が示されましたが、わずか20人に留まっており現場の困難に応えるには不十分です。

「『新たな教師の学び』を支える研修体制の構築」は第2次補正予算と合わせて40億円となっています。教員研修プラットフォームの構築、受講履歴記録システムの構築をすすめるとともに、学校DXの一環として、マイナンバーの「活用」、「別途構築する教員免許管理システム等との連携」等を示しており、教員の管理統制につながる恐れがあります。また、「文科省CBTシステム(MEXCBT)の改善・活用推進」等の「デジタル化」に伴う事業が強調され、オンライン上で学習・アセスメントできるプラットフォームの「活用」をはじめ、教育活動に関わる教育データの標準化、教育データのクラウド化をすすめ、行政系(福祉系含む)データの連携をすすめるとしています。子どもたち、教職員の教育活動をデータベース化して「利活用」をする狙いがあります。民間事業者によるデータの「利活用」がいっそう拡大する問題や個人情報保護への懸念等があり、慎重な検討とともに丁寧な説明、個人情報を保護する仕組みが求められます。

「高等学校等就学支援金」について、私立高校の授業料相当加算の対象は年収590万円未満世帯にとどまり、公立高校は年収910万円未満世帯に制限されます。「高校生等奨学給付金」について、引き続き第一子加算の増額があることは重要です。「高等教育の修学支援新制度」は対象が非課税世帯等に限られ、個人や機関への要件でさらに対象を制限する等、課題は解決されないままです。

全体として今回の予算は、教職員・保護者、地域が願う教職員定数の抜本的改善、少人数学級のさらなる前進に背を向け、国・財界のための「人材」育成や社会の「デジタル化」を学校教育へ強力に押し付け、公教育の市場化につながるものとなっています。

OECDの調査によれば、2019年度の日本の公財政教育支出の対GDP比は2.8%でOECD加盟38か国中、下から2番目です。OECD平均4.1%まで教育予算を増やせば、少人数学級や国際公約した高等教育の無償化の漸進的導入などを実現できます。物価高騰や引き続くコロナ禍から子どもたちのいのちと健康を守り、成長と発達を保障するために、大軍拡予算ではなく今こそ教育予算の増額が必要です。

全教は、大軍拡予算を大幅に削減し、「20人学級」を展望した国の責任による少人数学級のさらなる前進、正規・専任教職員の増員、給付奨学金制度拡充、公私ともに学費の無償化など、子どもの学ぶ権利を保障する教育予算への抜本的な転換を求め、保護者・地域住民とともに、2023年1月からの政府予算案審議における予算の組み替えに向けて奮闘する決意です。

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