全教は、7月14日、書記長談話「憲法を守りいかし、教育予算を増やし、一人ひとりが大切にされる社会の実現を-2022年参議院選挙の結果を受けて-」を発表しました。
7月10日投開票でおこなわれた参議院選挙で、自民党が単独過半数を獲得し、改憲をあおり、核兵器の共有まで主張する日本維新の会が議席を伸ばしました。公明党、国民民主党とあわせた改憲勢力は参議院でも改憲発議に必要な3分の2以上を占めることになりました。選挙後、岸田首相は、「できる限り早く発議に至るとりくみをすすめていきたい」と述べていますが、出口調査や選挙後の世論調査では、国民が9条改憲や歯止めのない軍事力増強に信認を与えたとは言えないことは明らかです。
今後、加速するであろう改憲策動に対して、9条への自衛隊明記や緊急事態条項の創設が、軍事大国化をすすめ、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」を保障する社会の実現に逆行するものであることを明らかにし、改憲を許さない国民的な運動をさらに大きく広げていくことが求められています。
今回、32の1人区で野党統一候補が議席を確保したのは3つにとどまりました。改めて市民と野党の共闘が重要であることを示しています。そして、辺野古新基地建設反対を掲げたオール沖縄の候補の勝利を9月11日の沖縄県知事選挙に結びつけるとともに、全国各地で市民と野党の共闘の再構築につなげることが重要です。
投票率は前回を上回ったものの52.05%と低水準です。総務省の調査では18歳は38.67%、19歳は30.31%にとどまりました。選挙戦のなかで、経済政策や安全保障など、重要な争点をめぐって、活発な論戦が期待されたにもかかわらず、与党が、物価高騰に対する実効ある経済政策を示すことなく、防衛予算倍増の財源なども明らかにしないなど、はっきりと政策を示さなかったことが大きな要因です。さらに「野党の人からくる話をわれわれ政府は何一つ聞かない」という現職大臣の発言に見られるような民主主義そのものを否定する政府与党の姿勢が政治不信を生んだことも要因の一つです。
学校現場から、政治と日常のくらしが密接な関係があることを実感できるような主権者教育を広げ、充実させていくことが求められます。
今回の参議院選挙にあたり、全教は選挙闘争方針を確立し、憲法の平和主義をいかして国際平和の構築に貢献できる政府の実現、教育予算の拡充など「10の要求」を掲げ、各政党に要求実現を求めました。多くの組織が職場で政治を語ろう、選挙に行って職場の要求を実現しようと呼びかけるとりくみをすすめました。自民党を除く国政政党すべてが公約とした教育無償化の実現を求める世論をいっそう広げる必要があります。
おさまらない物価高騰、再び感染拡大しつつあるコロナ感染症から、国民のいのちとくらしを守る課題をはじめ、教育予算を増やして一人ひとりを大切にする教育の実現、核廃絶、気候危機への対応、ジェンダー平等社会の実現など、政治が向きあうべき課題は山積しています。一刻も早くロシアをウクライナから撤退させ、ウクライナの復興支援、国際平和の構築へ積極的にかかわることも日本政府の重大な課題です。
全教は「教え子を再び戦場に送るな」を高く掲げ、引き続き、改憲ではなく、憲法を守りいかし、一人ひとりが大切にされる社会の実現を求める運動と、教育予算を拡充し、ゆきとどいた教育を実現する運動に全力をあげる決意です。