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新聞全教北九州2022年5月号

来年度から65歳定年に向けて段階的に定年年齢の引き上げが始まります。定年の引き上げによって、60歳に達した翌年から、仕事はそのままでも、賃金水準ははこれまでの7割に減らされます。これは年齢による差別であり、「職能給の原則」にも反しています。これでは教職員が仕事へのやりがい、働きがいを失くしてしまいます。

目次

定年年齢は上がり、モチベーションは下がる

「均衡の原則」による賃金水準抑制?

政府が働き方改革を打ち出して5年。北九州市も「業務改善プロブラム」で働き方改革を進めていますが、長時間労働は解消されず、家庭生活や個人の自由な時間等が犠牲になっています。

労働環境の明確な改善がないなか、国家公務員に追随する形で10年かけて段階的に定年年齢を65歳とする定年引き上げが始まりました。

制度導入により、60歳に達した翌年から、仕事はそのままでも、給与は7割水準に減らされます。役職手当が支給されている管理職等の場合は、役職定年制度により役職手当がなくなるためその水準は更に下がります。給与水準について教育委員会は、地方公務員法第24条3項(均衡の原則)を根拠に、民間企業が60歳以降の給与をそれまでの7割水準していることをあげています。

「職能給の原則」に反する賃金水準抑制

全教北九州は、同様の仕事をさせながら年齢を理由に給与を引き下げるのは地方公務員法第24条1項(職務給の原則)に違反であると考え、給与引き下げに反対しています。定年延長は職務にふさわしい処遇を基本に、賃下げのない制度とするべきです。

交渉では、3割給与を減額するなら、その分仕事の内容、量を減らすべきであり、給与引下げの対象者には仕事量を減じた労働条件を提示することを要求しました。

新たな賃金水準抑制への布石

今回の交渉の議題には上がりませんが、人事院が目指しているのは、退職年齢65歳の完成時からの新たな賃金抑制です。

「国家公務員法等の一部を改正する法律」案の「概要」によれば、検討課題として「60歳前後の給与水準が連続的なものとなるよう、国家公務員の給与制度について、人事院において公布後速やかに行われる昇任・昇格の基準、昇給の基準、俸給表などについての検討の状況を踏まえ、定年引上げ完成の前(令和12年3月31日まで)に所要の措置を順次講ずること」としています。これは、60歳前から昇給を今以上になだらかにし中・高齢層の給与水準を抑制しようとするもので、これによって生涯賃金も大きな影響を受けます。

給与引下げでモチベーションと生活水準の維持は両立するか

今の働き方のままでの定年引上げによる、60歳からの7割水準の給与には納得できません。

このような制度設計では、現場で奮闘している教職員の仕事へのモチベーションを低下させ、子どもたちへのよりよい教育の保障にも重大な影響を及ぼします。

改正地方公務員法の付帯決議では、「全ての世代の職員が英知と情熱をもって職務に従事することを可能とするため、職員のワーク・ライフ・バランスの確保など、地方公務員の働き方改革の一層の推進に向け努力すること。また、非常勤職員と常勤職員との給与・手当等の格差をなくすための処遇の改善等に一層の努力を行うこと。」とあります。

教育委員会は、この附帯決議の具体化と生活水準の維持をどのように両立させるのかという課題にたいして、明確な回答と具体的対策を示すべきです。

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