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(全教談話)教員免許更新制廃止を歓迎するものの、新たな管理強化につながる教特法「改正」に強く抗議する

全教は、5月18日、「教育公務員特例法および教育職員免許法の一部を改正する法律案」についての書記長談話を発表しました。


5月11日、「教育公務員特例法および教育職員免許法の一部を改正する法律案 」が可決成立しました。これにより、2009年に導入されてから14年間教員を苦しめてきた教員免許更新制が廃止されます。全教は、制度導入によって図らずも教員免許を失う「うっかり失効」や更新時講習の負担など、制度の問題を訴え、強く廃止を求めてとりくんできました。2021年には「教員免許更新制の廃止を求める『私のひとこと』署名」を行ってわずか2ヶ月足らずで3万7000筆を集め、文科省に教職員一人ひとりの思いを届けました。その声が国を動かす力となり、制度廃止を実現させました。

改正教育職員免許法 は7月1日に施行され、その時点で有効な教員免許状は手続することなく「有効期限のない免許状」となり、施行日前に有効期限を超過した教員免許状は「失効」となるものの、都道府県教育委員会に再授与申請手続きを行うことで「有効期限のない免許状」の授与を受けることが可能とされました。文科省は、再授与申請手続きに必要な書類等については各都道府県教育委員会が定めているとして、「申請書」や「学力に関する証明書」、「戸籍抄本・謄本」などを例示しています。改正法の附帯決議では「『教師不足』を解消するためにも、改正前の教育職員免許法の規定により教員免許状を失効している者が免許状授与権者に申し出て再度免許状が授与されることについて、広報等で十分に周知を図るとともに、都道府県教育委員会に対して事務手続の簡素化を図るよう周知すること。また、休眠状態の教員免許状を有する者の取扱いについて、周知・徹底すること」とあり、各教育委員会は事務手続きの簡素化を行うことが求められます。

同時に改正された教育公務員特例法 は、教員の研修受講履歴の記録を義務化するとともに、記録にもとづく校長による「指導・助言」が人事評価の面接の場で行われることなどから、確実に教員の管理・統制強化につながるものと考えられ、容認できない問題をもつものとなっています。国会の参考人質疑でも多くの参考人が「教育公務員特例法の改正は必要ない」とはっきり陳述するほど、無用な「改正」であることは明らかです。教員免許更新制廃止と引き換えに、新たな管理・統制を押し付けようとするやり方は許されません。

すでに、法改正をめぐって検討していた中央教育審議会「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会・初等中等教育分科会教員養成部会合同会議」の「審議のまとめ」(2021年11月)にも同じ問題がありました。教員免許更新制廃止の理由に教員の負担軽減をあげているにもかかわらず、研修強化で新たな負担を教員に被せようとするのはまったく矛盾しています。

教職員にとって研修は必要ですが、それは本来強制されるものではなく、自主的・自発的に行うものです。しかし、学校現場では教職員が自由に研修を行うことが難しくなる中、国の定めた「研修」が一方的に押し付けられ、物言わぬ教職員づくりがすすめられてきました。研修履歴の記録が義務化されることによって、このような管理・統制が強化されることは明らかです。校長が人事評価の期首・期末面談で記録をもとに研修の奨励を行うとされていますが、新たなパワハラにつながるのではないかと懸念されます。

改正法の附帯決議には「教員の多忙化をもたらすことがないよう十分留意する」「教員から研修の報告等を求める場合には、報告等を簡潔なものとする」「本法による研修等に関する記録の作成及び資質の向上に関する指導助言等は、この人事評価制度と趣旨・目的が異なることを周知する」など、法改正によって教員のさらなる多忙化を生み出すことや、人事評価と同時に行われる「指導・助言」が教員への圧力となることなどの危険性を排除するよう求めています。附帯決議に記されたことは、すなわち、法改正の問題点ととらえ、教育委員会や管理職は、誤った運用を行わないようすることが求められます。

附帯決議が「各学校で実施する校内研修・授業研究及び教育公務員特例法第22条第2項に規定する本属長の承認を受けて勤務場所を離れて行う研修も『任命権者が必要と認めるもの』」と、研修のあり方を改めて強調していることを大いに活用し、各学校で自主的・自発的な研修を旺盛にすすめていく契機とすることが必要です。全教は、文科省に対して改正法の抜本的な見直しを求めるとともに、すべての教職員が積極的に研修を行うことができるような教育条件整備をすすめるよう求めるものです。

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