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(全教談話)2022年度政府予算案の閣議決定にあたって

全教は12月27日、標記の書記長談話を発表しました。


2021年12月24日、政府は総額107兆5964億円(2021年度比0.9%%増)の2022年度予算案を閣議決定しました。12月20日に可決された2021年度補正予算と合わせ140兆円を超える超大型予算案となっています。中でも防衛省予算案が5兆3687億円と過去最大となり、補正予算と合わせると6兆1744億円に達する大軍拡予算に歯止めがかからなくなっています。一方で、文部科学省予算案は一般会計で5兆2818億円(2021年度比162億円減)、文教関係予算は4兆64億円(同143億円減)と今年度当初予算を下回っており、日本の教育予算を増額することに背を向ける岸田政権の姿勢が表れています。

教職員定数については、「小学校における35人以下学級の推進」で3290人、通級指導や日本語指導教育の充実等で370人、計3660人の基礎定数増となっています。また、「小学校高学年における教科担任制」950人と「学校における働き方や複雑化困難化する教育課題への対応」180人から重複分100人を差し引いた1030人の加配定数増を行う一方、自然減等6912人を含め全体で7992人の定数減を行い、教職員定数全体で3302人の大幅減を行うとしています。

高学年での教科担任制については、4年間で8800人増員、2022年度は初年度分2000人増員の文科省概算要求に対して、4年間3800人、初年度分950人に止められ大きく後退させられました。抜本的な教職員定数改善に背を向けるものであり、長時間・過密労働など教職員の負担を軽減するための定数改善には程遠いものとなっています。また、いじめ対策・不登校支援等の予算が若干増額され、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置拡充等が示されたものの、不登校や自殺の増加など、深刻化する子どもたちをめぐる環境を改善する支援体制の整備・教職員等の拡充には不十分な予算であり、大幅に増額することが求められます。

一方で、「GIGAスクール構想」など「教育のICT化」関連予算が目立ちます。補正予算で前倒しされた分も含めて「GIGAスクール運営支援センター整備事業」「デジタル教科書の普及促進」などの予算が大幅増額されています。1人1台端末が導入・活用され、民間企業の参入が急速にすすめられるもとで、子どもや教職員の教育活動がデータとして蓄積され、民間企業等に「利活用」される危険性が大きくなっています。どんな個人情報が集められているかを知り、不当に使われないよう関与する権利など、プライバシーの権利を保障することがきわめて重要です。また、端末やデジタル教材の高額な保護者負担も問題です。端末やデジタル教材など何をどう使うかは、子どもたちや保護者などの実情をふまえて学校現場が決めるもので、押しつけることは許されません。

「特別支援教育の充実」については、医療的ケア看護職員の増員など、医療的ケアの拡充は評価できるものがありますが、やはりICT活用やオンライン学習などに関する予算拡充が目立ち、父母・保護者や教職員が求める教育条件整備とは異なる予算が大きな位置を占めている点は問題です。

「高校生等への修学支援」については、「私立高校授業料の実質無償化」等に今年度と同水準の予算が計上されています。2020年度から私学にも拡充されましたが、支給上限としている授業料平均39万6000円は実際の授業料と約4万円の開きがあることや、年収590万円以上の世帯への支援が乏しい問題など、いっそう改善が求められます。「高校生等奨学給付金」について、非課税世帯への給付が毎年増額され、2022年度は第1子への増額とICT端末持ち帰り等への支援増額があり、貧困と格差が広がる中で低所得世帯への支援拡充として一定評価されるものとなっています。「高等教育の修学支援制度」は2021年度から増額されましたが、対象者全員に支給されないという制度上の問題や、個人要件・機関要件の厳しさ、財源が消費税増税分である点など、課題は解決されないままとなっています。

OECDインディケータ 2021」によれば、2018年の日本の公財政教育支出の対GDP比は2.8%でOECD加盟38か国中、下から2番目です。OECD諸国平均4.1%まで教育予算を増やせば、少人数学級や国際公約した高等教育の無償教育漸進的導入など教育無償化を実現することができます。コロナから子どもたちのいのちと健康を守り、成長と発達を保障するためにOECD諸国並みの「20人学級」がいまこそ求められています。

全教は、軍拡予算を大幅に削減し、「20人学級」を展望した国の責任による少人数学級のさらなる前進、給付奨学金制度拡充、公私ともに学費の無償化をすすめるなど、子どもが安心して学べる教育予算への抜本的な転換を求め、保護者・地域住民とともに、2022年1月からの政府予算案審議における予算の組み替えに向けて奮闘する決意です。

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