全教は、10月4日、標記の書記長談話を発表しました。
9月24日、省令「特別支援学校設置基準 」 が「特別支援学校設置基準の公布等について(通知) 」(以下、「通知」)とともに示されました。この設置基準は学校を設置する上での「最低限の基準」であり、設置者は「これらの水準の向上を図ることに努めなければならない」としたことは、今後、特別支援学校で学ぶ子どもたちの教育条件の改善を図っていく上での足がかりを築くことができたことになります。また、施行日以降に設置される特別支援学校には、必要な教室が備えられ、ほとんどの学校において図書室が必置となります。さらに既存校の基準の適用について設置基準では「当分の間、なお従前の例によることができる」と猶予されながらも、「通知」には「可能な限り速やかに設置基準を満たすこととなるよう努めること」とされ、各自治体における「集中取組計画」の策定を今年度中におこなうことと、その計画の着実な実施を求めることが記述されました。養護教諭の配置について「通知」には、「可能な限り全ての特別支援学校に」置くことと記述されました。このように教育環境の改善につながる前進面がみられます。
この設置基準策定に至る経過で、保護者、教職員、教育研究者、地域の市民団体などの様々な共同のとりくみがありました。全教も参加する「設置基準の策定を求め、豊かな障害児教育をめざす会」による「特別支援学校の実効ある設置基準策定を求める請願署名」が各地でとりくまれ、世論にこの問題を広く訴えながら、約10年間の累計で57万4000筆を越える署名が国会に提出されました。また、保護者や教職員らが共同して文科省、国会、地方への要請をおこなってきました。このような10数年の共同による地道でねばり強い運動が、設置基準策定という成果を生みました。5月に公表された文科省「特別支援学校設置基準案」に対するパブリックコメント応募期間には、基準案の改善を求めた切実な要望が1606件送付されました。これらの意見を受けて文科省案のいくつかの箇所が加除訂正されて設置基準が策定され、共同のとりくみの重要な到達点と言えます。
しかし、策定された設置基準には、児童・生徒数の上限規定、1学級あたり2名以上の教員配置、備えるべき特別教室などの施設・設備、通学時間の上限規定、既存校の適用猶予年限などは、規定されませんでした。教室不足の解消と教育環境の改善という制定の趣旨に照らすと、あまりに不十分です。児童・生徒数の上限が規定されなければ、全国にある400人、500人を超える過大校を容認し続けることとなり、決して特別支援学校の過大・過密の抜本的解消にはつながりません。
今後の課題は、設置基準をふまえて、既存校の面積基準未充足や図書室未設置等の速やかな整備を求めることです。また、地域に根差した適正規模の学校の設置、必要数の教諭や専門職の配置、必要な特別教室等の施設を規定した設置基準となるよう、見直しが求められます。学校の新設には国による財政保障が必要です。学校新設を促進するための国庫補助率の引き上げについて、国に対して要請していくことも重要です。
全教は、憲法と障害者権利条約 第24条「教育」でうたわれている、障害のある人の最大限の発達と社会参加を保障することを、国や教育行政に強く求めます。そして今後も広範な方々と手をつなぎ、全国の教室不足数3162教室(文科省「公立学校施設実態調査報告 」2019年度)のすべての解消など、子どもたちの豊かに学ぶ権利の保障をめざして全力を尽くす決意です。