2021年6月2日
日頃から北九州市職員の勤務条件の向上に努力されていることに敬意を表します。
さて、新型コロナウィルスの感染拡大は収束しないばかりか変異株が猛威をふるっています。
内閣府が5月18日に発表した2020年度の国内総生産(GDP)は前年度比4.6%減と、2年連続でマイナスとなりました。下落率はリーマン・ショックがあった08年度(3.6%減)を超え、統計上さかのぼれる1956年度以降、実質的には戦後最大の落ち込みを記録しています。
3月15日幻冬舎GOLDONLINEの都道府県+政令都市「教員給与」ランキングでは、北九州市の教員給与(平均)は最下位の67位で、近隣の福岡市とは18711円/月の差がありました。(出所は総務省の『給与・定員等の調査結果等』より)冷え込む景気の中で、北九州市の教員給与は全国最下位と報道され、現職の士気や採用試験への応募にも影響してきます。
このような状況の中で、既に教員にも導入された「在校等時間の上限1箇月45時間、1年360時間」制度。時間外手当も出さないのに、定時以外の仕事を「在校等時間」として管理し上限を45時間に設定することは、教員にとっては全く意味のない条例であり、勤務時間の拡大という誤った解釈に繋がります。学校現場では、本来教員の仕事である内容であっても「在校時間から削除する」ことや、「退勤時間をコントロールする(在校時間の詐偽)」ことを管理職が求めることもあります。また、業務量が増えている中で早く退勤するように呼びかけられる等、あらゆる「時短ハラスメント」がある中、単に出てきた数字のみで判断して「1年単位の変形労働時間制」を導入することのないように求めます。
教職員は、コロナ禍の緊急事態とはいえ、本来の業務ではない業務が増えています。感染防止対策はもちろん、一気に進んだGIGAスクール構想では、タブレットの整備、タブレットを使った授業の強要など、現場の知識や技術が不十分なままに進められ、疲労と不安が広がっています。
今年度から北九州市では、国に先駆け「小学校全学年での35人学級」が始まりました。新しい生活様式では、最低1メートルの距離をとるため座席配置は38人が限度。感染防止のためにも、ゆきとどいた教育を保障するためにも、更なる少人数学級の拡大(中学校、高等学校への拡大、そして20人学級へ)が求められます。
また、昨年度から始まった会計年度任用職員制度は、労働条件の詳細が不透明なまま稼働しています。同一労働同一賃金の基本に照らして、会計年度任用職員はじめ臨時教職員の処遇の改善が求められます。
第一線で奮闘する教育公務員の労苦に報い、ゆきとどいた教育をすすめるためにも、北九州市人事委員会が労働基本権制約の代償機関としての責務と役割をふまえ、下記の要求の実現に尽力されることを要請します。
- 子どもたちの教育のために、日夜献身的に奮闘している教職員を励ますとともに、職務に専念できるように、生計費原則をふまえ、正規、非正規を問わずすべての教職員の賃金・労働条件の改善に向けた勧告を行うこと。
- 再任用教職員の賃金を改善すること。
- 会計年度任用職員については、合理的な説明のつかない時間短縮(15分カットで非常勤扱い)を早期にやめ、賃金をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現などに向けて必要な対策を行うこと。さらに、均等待遇に向けた必要な意見表明を行うとともに、賃金・労働条件の改善に向けた勧告を行うこと。
- 民間給与実態調査をもとに人事委員会勧告を出すにあたっては、単に民間の賃金水準と機械的に比較するのではなく、教職員の専門性や労働実態を十分加味すること。
- 地方公務員の賃金引き下げを目的にした政府、人事院による給与制度改悪に反対するとともに、人事委員会として意見表明すること。
- 1年単位の変形労働時間制は教職員にとって必要のない制度であり、現行の業務を減らして8時間労働の原則が守られるよう、使用者に意見すること。
- 教員の異常な長時間過密労働を解消するために必要な正規の教員を増員する勧告をすること。また、労働基準監督機関として適切な労働時間管理が行われているか監督するとともに、適切でない事象が明らかになった場合は必要な措置を講じさせること。
- 男女共同参画推進、女性の活躍推進の立場から、妊娠、出産、育児、看護、介護に関する休暇・休業制度等を拡充するとともに、男女ともに取得しやすい職場環境を整えさせること。
- 病気の治療と仕事の両立支援の立場から、長期治療を必要とする者への休暇・休業制度を拡充するとともに、休暇・休業制度が取得しやすい職場環境を整えさせること。また、治療継続中の教職員の労働条件・職場環境も整えさせること。
- 勧告に係る内容については、政府・総務省の不当な干渉に屈することなく、第三者機関としての独立性を守り、公平・公正な立場で勧告作業を進めること。
- 人事委員会の勧告に向けた調査や作業にあたっては、全教北九州市教職員組合との交渉・協議、合意にもとづいてすすめ、組合の意向を充分反映し早期勧告に向けて努力すること。