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新聞全教北九州2021年3月号

2021年1月26日、中教審(中央教育審議会)は「『令和の日本型学校教育』」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」を取りまとめました。しかしその内容はICT万能論というべきもので、子どもの貧困と較差の拡大を是正し子どもたちを包括的に保護する施策の拡充には触れず、競争主義的な施策を改めず、すべての子どもたちの豊かな成長・発達を保障するための教育条件整備も行おうとしない問題のあるものです。

目次

ICT万能論では行き届いた教育は実現しない

「日本型学校教育」がピンチ!

答申では「今日の学校教育が直面している課題」として、学校の役割が肥大化し教員は教育に携わる喜びを持ちつつも疲弊しているため「教師の献身的な努力」だけでは、世界に誇る「日本型学校教育」を維持できないといいます。その原因として

  • 子供たちの多用化
  • 子供の相対的貧困
  • 生徒指導上の課題
  • 生徒の学習意欲の低下

を挙げています。

「新しい時代の学校教育」とは何か

そして、学校教育にとって極めて重要な取組として、

  • 新学習指導要領全面実施
  • 学校における働き方改革
  • GIGAスクール構想

をあげ、これらを加速・充実し「新しい学校教育」を実現するとしています。

民間頼みのGIGAスクール構想

「GIGAスクール構想」は「児童生徒向けの一人一台端末と高速大容量通信ネットワーク一体的整備」ありきの経済界、特に情報通信業界主導の施策です。「令和時代における学校の『スタンダード』」と強調するものの、教材開発や指導方法づくりは教育産業に丸投です。

ICTによって人と人のかかわりが軽視されないか、発達への影響が懸念され、拙速な導入は将来に禍根を残すことになります。

「個別最適な学び」がもたらすもの

また、「個別最適な学び」によって、

  • 児童生徒の実態に応じて、学びに向かう力等の一層の育成を図りつつ、学習内容の確実な定着を図る
  • 教師が、学習履歴(スタディログ)や生徒指導上のデータ、健康診断情報等をICTの活用により蓄積・分析・利活用する
  • 児童生徒が自らの学習の状況を把握し、主体的に学習を最適化することができるように促していく

ことができるとしています。

ビックデータの蓄積は、情報流出事件などすでに社会問題となっています。マイナンバーとの紐つけも報道されており、保護者からも懸念の声が上がっています。公教育が営利目的の民間企業に個人情報を預けることには、慎重を期すべきです。

「誰一人取り残さない」は 難しい

「個別最適な学び」により、「多様な子供たちの誰一人取り残さず,全ての子供たちに必要な資質・能力を育成し、その個性を生かしていく」とする一方で、「それが孤立した学びに陥らないよう、留意する必要がある」とも言っています。誰一人取り残さない教育が容易でないことは中教審自身も認めています。

ICTは万能ではない

ICT万能論に陥り、人間を育てているという意識を失えば、子どもたちにとって百害あって一利なしです。

他にも、義務教育段階での修得主義導入にも触れており、このことは「教育の複線化」と「格差拡大」を招き、留年や落第、「飛び級」制度の導入などにつながるのではないかと危惧します。

高校教育では「適格者主義」を助長する「特色化・魅力化」を押しつける問題もあります。

特別支援教育では、殊更に特別支援学級の子どもたちを普通学級でともに学ぶことを促しています。「インクルーシブ教育」は一人ひとりの発達を保障することであり、「共に行う」という原則を国が持ち込むべきではありません。

小規模校統廃合問題では、ICTを利活用して遠隔授業などを取り入れることで人や予算の切り捨てを図ろうとしています。

中教審が答申した歪んだ教育政策を厳しく指摘し、ゆきとどいた教育を実現するものに変えていくことが求められています。

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