2020年10月9日
貴職におかれましては、私たち全教北九州市教職員組合の要求について鋭意ご検討していただいていることに感謝申し上げます。
さて、今年は新型コロナウィルス感染拡大により、20年4-6月期の実質GDP成長率は、前期比マイナス7.8%(年率27.8%)と、09年1-3月期に記録した前年比マイナス4.8%(年率17.8%)を大きく下回り、遡れる1980年以降で最大のマイナス成長となりました。私たち公務で働く者は雇用喪失がないとはいえ、家族の解雇、企業倒産、減収により世帯収入が減じた教職員は多く、さらに昨年10月に行われた消費税率の改定により各種料金が値上げされており、厳しい生活状況となっています。このような状況の中、人事院は10月7日に特別給の0.05月分の引き下げを勧告しました。人事委員会勧告はまだ出ていませんが、月例給が確定しないまま一時金のみを見直すことは異例のことであり、また、評価制度に関して引き下げが予想される一時金がさらに引き下げられることは到底受け入れがたいことです。コロナ対応ですべての教職員が奮闘しているにもかかわらずこのような結果になることは認められません。
生計費原則に基づき地方公務員の賃上げによる家計の改善を行うことは、個人への供与に留まらず内需を拡大し地域経済を支えることにつながるはずです。
北九州市の学校現場で働く教職員の処遇は権限移譲後悪化しました。一昨年度の交渉で0.5%の改善が見られた職務段階別加算割合も、来年度からは人事評価の賃金リンクの原資に使われるため減率されることになりました。北九州市の地域手当は福岡市に比べると7%低いですが、交通網が整備されていない北九州市では通勤や日常生活に自家用車が必要な場合が多く、自家用車の維持費等を計上すると都会での生活と変わらない出費となり、地域手当で差別化されることには納得がいきません。また、過密・過重な長時間勤務のなか、「労働の対償としての適正な給料」の支給を望む職員が多数いることも全教北九州が実施した「教職員意識・要求アンケート」の結果で確認されています。特にコロナ禍のもと、早朝からの検温、消毒作業や清掃作業等で今まで以上の業務が増えている教職員には、その分の計上が求められます。
教員不足は益々現場の教職員の長時間過密労働の原因になっています。今後の少人数学級促進のためにも教員確保は急務です。しかし教員離れが進む中、青年世代の教員確保と並行して、退職世代の活用も今後需要が増すはずです。今の再任用教職員への給料は、労働に見合ったものとはいえず改善が求められます。
一方、臨時、非常勤の教職員の処遇改善も急務です。現在、学校には多くの臨時・非常勤の教職員が働いています。教育現場は、このような方々の働きなくしては一日たりとも学校運営、教育活動は成り立ちません。
また、適正な労働時間と勤務内容等の改善を求めます。全教北九州の調査では、今でも長時間勤務は解消されていません。それどころか、三年前の北九州市人事委員会の勧告が指摘した、「時間外勤務の自己抑制」「退勤時間と時間外勤務実績の乖離」が今でも学校現場では常態化しています。それが市教委の労働時間の正確な把握の妨げの要因となっています。業務改善プログラムの実施により改善されてきた部分もありますが、勤務実績の乖離の主な原因は、学力・体力テストの対策や部活動に追われる学校現場から目を背け、多忙の根本的要因に手を付けていない市教委に主要因があります。北九州の教育が、それを支えている現場の教職員のいのちと健康、家庭や人間らしい生活の犠牲の上に成り立っていることは、教職員組合として看過できません。
以下、給与改定交渉にあたり、趣旨に沿った諸問題・課題の改善・解決に取り組んでいただくことを要求いたします。
職責と勤務実態に応じた教職員の適正な賃金水準及び手当を確保するための要求
- 月例給の改定は、教職員の専門職性や勤務の特殊性、労働実態を十分加味し、安心して職務に専念できるようにするため12%以上の賃金水準の引き上げをおこなうこと。
- 一時金の引き上げ分は、成果主義賃金の定着・強化につながる勤勉手当への配分ではなく、期末手当に配分すること。
- 「雇用の安定」「均等待遇の実現」等の観点から、臨時教職員の給料及び一時金等の手当を 改善すること。そのため、教育職2級の適用を講じること。
- 会計年度任用職員の学校支援講師の報酬を日額制から月額制にすること。
- 再任用は、希望するすべての教職員の任用を保障し、生計費をふまえた所得水準確保とその職責、勤務実態を反映した給与、一時金等(年収ベースで60歳前の80%以上)を支給すること。
- 地域手当を権限移譲前の水準に戻すこと。教育職2級等に在級する55歳以上、または経験年数30年以上の教職員の職務段階別加算割合をそれまでの10%に戻すこと。
適正な労働時間、待遇の実現、及び業務改善に関する要求
時間外勤務を制限した給特法、法定労働時間を規定した労基法を守り、違法な長時間勤務を職場から排除するために具体的施策を講じること。
- 長時間過密労働に対する対償としての手当等の待遇改善の措置が困難な場合は、当然の措置として労働時間を縮減するための施策を講じること。
- 長時間勤務削減に向け、教職員の年間総労働時間の削減計画と段階的削減目標を設定すること。計画立案に際しては、労使間で協議の場を設け、合意のもと削減計画を行うこと。
- 勤務時間内に業務を終えることができるよう、業務量の削減、少人数学級・専科授業等の推進による労働量の削減のための具体的施策を検討、推進すること。
- 中教審「緊急提言のまとめ」でも出された、担当授業時数の軽減を実施すること。また、すべての教員が小学校週20時間、中学校週18時間の授業時数(道徳・学活・総合等を含む)を上限とする施策を実現すること。
- 校外での研修、校内研修(時間・場所・期日・報告・授業案形式等)の実施方法を更に改善すること。
- 職場でしか使えず、超勤、休日出勤の原因になっている校務支援システムによる報告書の作成、成績処理・通知表等は、他都市の状況も勘案し簡素化すること。また、校務支援システムを利用しなければいけない業務とそうでない業務を明確にわけ、過重な負担を軽減すること。
- 養護教諭の複数配置をすすめること。
- コロナ感染拡大防止のための業務補助員は市の責任において完全に配置すること。
- GIGAスクールのためのタブレット整備や環境整備のための人的配置を行うこと。
勤務時間の適正管理及び超過勤務に対する適切な削減措置と健康で安心して働くことができる職場環境を実現すること。
- 2020年2月3日から2月9日までの7日間、教育委員会がおこなった「教育職員の勤務実態に関する調査」の結果によれば、実際に取得した教諭の休憩時間は、5日間の平均が小学校6.5分、中学校6.8分、特別支援学校20.4分となっており、法律に定められた休憩時間が確保できていないことが検証された。当然確保するための適切な措置を講じなければならないが、条件が整うまでの当面の措置として、取れなかった休憩時間に対しては割振り等の措置を講じること。
- 勤務時間内に終えることができない労働を命ぜられている教職員※には、職場に拘束された超勤分の労働時間に見合った対償の措置を講じること。
(※「黙示の指示・命令」も労働にあたるとする厚労省見解・今年度の北九教教教第338号「勤務時間等の適正管理について」(通知)でも言及) - 長時間勤務削減の結果のみを問題にするような職員に対する「時短ハラスメント」は改めること。
- 年次有給休暇等各種休暇を取得しやすい環境を整えること。(教職員の増員、校内での補欠体制の確立)
- 病気休暇からの復帰後や、妊娠している教職員のための勤務軽減の措置(時短勤務・体育授業の代替講師完全実施・宿泊を伴う学校行事への参加禁止等)を講じること。
妊娠、出産、育児・子育て、看護や介護に関する休暇・休業制度に関する要求
- 子育て支援休暇の対象を中学校と特別支援学校高等部に在籍する子にも拡大すること。または、子育て、子や親の看護、介護を合わせた家族支援休暇を新しくつくること。
- 妊娠中の教職員がいる場合、臨時教職員(産休代替予定者と同じ者)を学期当初から配置すること。
- 自己負担が伴う医師の診断書の提出(4日以上)を、これまでの7日以上に戻すこと。
- 児童生徒の学習保障の観点から、病気休暇取得単位1日を1時間単位にすること。経過措置ではなく制度として構築すること。
- 病気休暇の期間を、1年につき90日を権限移譲前の水準に戻すこと。
- 臨時教職員の産休、病気休暇等にも、正規職員と同様に代替教員の配置をすること。
- 介護休暇を6月取得後復帰不可能な場合、欠勤を6月まで認めること。
- 介護休暇後復帰不可能な場合、2年を上限に離職を認め、直近の4月より再採用すること。
- 仕事と育児の両立に向け、男性教職員の育児休業、育児短時間勤務の取得しやすい環境を整備するため、教職員を増やし理解ある風土づくりに努めること。
教職員の管理・統制を廃除する要求
- 結果がすぐに出ない学校現場には馴染まない、現行の教職員評価制度を中止すること。
- 評価結果と処遇とのリンクは、協力・共同が必要な教育現場に馴染まない制度であり、廃止を前提に検討すること。
- 評価結果は全員に本人開示を行い、苦情処理など、恣意的・主観的評価をチェックする仕組みを確立すること。
- 現行の教職員評価制度や変更点が生じた場合、教職員にわかりやすく説明を行うこと。
- 管理職が行うべきは評価により教職員を管理・統制することではなく、チームの一員としての共感と指導であるべきである。ハラスメントともとれる圧力的な言動を行わないこと。
その他の要求
- 安全衛生委員会の委員構成の公平、公正を担保するため、北九州市の総括労働安全衛生委員会と北九州市教育委員会の安全衛生委員会に全教北九州市教職員組合を加えること。
- 北九州市の豊かな教育を実現するために、確定交渉以外の場でも、教育長、教育次長、教職員部長、教職員課長との意見交換の場を設けること。