11月15日、中教審(中央教育審議会)は「教員免許更新制を発展的に解消することを文科省において検討することが適当である」との「審議のまとめ」を末松文部科学大臣に報告しました。しかし、「審議のまとめ」では、「新たな教師の学びの姿」を実現する研修をおこなうとしています。「懲戒処分の要件となりえる」新たな研修は、教員の多忙化と管理・統制の強化につながります。
「新たな教師の学びの姿」の実現は、研修の「管理・強化」の実現
免許更新制廃止は歓迎
文部科学省は、22年の通常国会で教育職員免許法を改正し免許更新制の廃止をおこなう予定です。22年に法律が施行された場合、令和4年度(22年度)に教員免許の有効期限を迎える教員は免許更新の手続が不要となります。これを受け、これまで免許更新制廃止の運動をおこなってきた全国の教職員、保護者、市民からは歓迎の声があがっています。
しかし、末松文科大臣は19日の記者会見で、「(改正教員免許法)成立日イコール廃止日ではない」ことを強調しました。一日も早く法改正を行い、時間を置かず速やかに施行すべきです。
「新たな教師の学びの姿」の実現で教員はより多忙になる
文科省は、免許更新制廃止と引き換えに「新たな教師の学びの姿」を実現するとし、新たな研修制度を導入するとしています。負担軽減を理由に免許更新制を廃止する一方で、研修強化で新たな負担を教員に被せようとする文科省の方針は矛盾しています。
文科省は、今後も「働き方改革」を進め、小学校の35人学級の整備、業務支援員等の充実、部活動改革等により校内研修や授業研究等の「新たな教師の学び」を実現する研修は勤務時間内におこなうことができるといっています。
しかし、45分の休憩時間はままならず、児童・生徒の下校後も翌日の教材研究や授業準備、学年等の打合せ、会議、研修等で勤務時間内に仕事が終わらないのが現状です。
文科省は、「新たな教師の学びの姿」の実現の前に、校務や研修・授業研究を精選・削減し、勤務時間内に仕事を終えることができる制度設計をするべきです。
矛盾する文科省の方針から見える「介入・管理・統制」
「新たな教師の学びの姿」を実現する研修のあり方として、研修履歴の記録管理、管理職による受講の奨励(職務命令違反による懲戒処分の要件となり得るとしている)の制度化を検討しています。また、研修の実績、成果、反省などを人事評価に関する面談の場でおこなうことも検討しています。人事院も人事評価による「能力・業績主義」の強化を示しており、これを根拠に、今後の人事評価が昇任等の任用や給与等の処遇へ活用されるようになることも想定されます。
「新たな教師の学びの姿」は、国による教育への介入、教職員の管理・統制の強化につながり、今以上に自由にものが言えない窮屈な職場になるのではないでしょうか。
研修等の強化に反対「働き方改革」の着実な実行を
今のような心身を消耗させる働き方が常態化している職場にあって、新たな研修制度で「教師の専門職性の高度化を進める」(「審議会まとめ案」概要)ことは不可能です。
全教北九州市教職員組合(全教北九州)は、速やかな法改正と施行を求めます。加えて、21 年度末に期限を迎える教員にも適用させること、これまでに不利益を受けた教職員の救済を図ること、法改正までの間の免許更新制と更新講習の凍結を求めます。
また、定年延長実施で生涯賃金に重大な影響が出る給与水準の見直しや「働き方改革」の着実な実行、今年度後退、悪化した賃金、休暇制度等の待遇改善も併せて求めます。
免許更新制は、研修等の強化とセットで発展的に解消ではなく速やかな廃止を求めます。