2020年6月15日
日頃から北九州市職員の勤務条件の向上に努力されていることに敬意を表します。
さて、今年は新型コロナウィルスの感染拡大、その防止対策のために社会全体の景気が落ち込んでいます。政府による各種給付金の額は低く、時期も遅く、路頭に迷う人々が後を絶ちません。私たち公務員は雇用と賃金が保障されているとはいえ、その家族が職を失っているケースも多く、影響を受けていることは否めません。また、教職員は緊急事態とはいえ、本来の業務ではない業務も増え、今後本来の学習活動、部活動の時間に戻った以降の働き方にも多くの不安を抱えています。
給特法により、教員については「原則として時間外勤務を命じないこと、命じる場合は、(1)生徒の実習(2)学校行事(3)教職員会議(4)非常災害等のやむを得ない場合、の業務に限定(いわゆる超勤4項目)」と決められ、その代償としての教職調整額が支給されています。この裏付けは1966年の文部省が実施した「教員勤務状況調査」の結果であり、現在の勤務実態と比べると大きくかけ離れた数値です。この点からいっても、教員の賃金は労働の対価に応じておらず、改善が必要です。にもかかわらず、国家公務員の「超過勤務上限1箇月45時間、1年360時間」人事院規則の改定の流れを受け、北九州市の教員にも「在校等時間の上限1箇月45時間、1年360時間」が6月議会に上程されています。時間外手当も出さないのに、定時以外の仕事を「在校等時間」として管理し上限を45時間に設定することは、教員にとっては全く意味のない条例であり、勤務時間の拡大という誤った解釈に繋がる恐れがあります。私たち全教北九州市教職員組合は、長時間過密労働はこの条例がなくても進められるし、政府が導入を認めている「一年単位の変形労働時間制」の前提条件にするための条例であると反対しています。
ようやく学校再開の扉が開かれましたが、3月以降の休校による学習時間数の不足、今後も新型コロナの感染者が出れば休校となる恐れがあり、学習をどう保障していくかの対応が求められています。また、コロナ不安のための欠席者も多く、休校中の児童生徒に加え欠席者への学習保障をオンラインでするという、新たな仕事が加わる方向です。機材の準備、学習形態の研究、対面授業とオンライン授業の両立等、先の見えない業務量の負担に多くの教員が不安を感じています。
新しい生活様式が学校にも求められています。最低1メートルの距離をとった座席配置は38人が限度。しかし、クラスを分割すれば授業数や教室が増え、人の確保や教室環境の整備のない中では簡単にできることではありません。感染防止のためにも、ゆきとどい教育を保障するためにも、今こそ少人数学級の拡大が求められます。
第一線で奮闘する教育公務員の労苦に報い、ゆきとどいた教育をすすめるためにも、北九州市人事委員会が労働基本権制約の代償機関としての責務と役割をふまえ、下記の要求の実現に尽力されることを要請します。
- 子どもたちの教育のために、日夜献身的に奮闘している教職員を励ますとともに、職務に専念できるように、生計費原則をふまえ、正規、非正規を問わずすべての教職員の賃金・労働条件の改善に向けた勧告を行うこと。
- 再任用教職員の賃金を改善すること。
- 非常勤教職員については、賃金をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現などに向けて必要な対策を行うこと。さらに、均等待遇に向けた必要な意見表明を行うとともに、賃金・労働条件の改善に向けた勧告を行うこと。
- 民間給与実態調査にあたっては、単に民間の賃金水準と機械的に比較するのではなく、教職員の専門性や労働実態を十分加味すること。
- 地方公務員の賃金引き下げを目的にした政府、人事院による給与制度改悪に反対するとともに、人事委員会として意見表明すること。
- 教員の異常な長時間過密労働を解消するために必要な正規の教員を増員する勧告をすること。また、労働基準監督機関として適切な労働時間管理が行われているか監督するとともに、適切でない事象が明らかになった場合は必要な措置を講じさせること。
- 男女共同参画推進、女性の活躍推進の立場から、妊娠、出産、育児、看護、介護、男性の育児、看護、介護に関する休暇・休業制度等を拡充するとともに、休暇・休業制度が取得しやすい職場環境を整えさせること。
- 病気の治療と仕事の両立支援の立場から、長期治療を必要とする者への休暇・休業制度を拡充するとともに、休暇・休業制度が取得しやすい職場環境を整えさせること。また、治療継続中の教職員の労働条件・職場環境も整えさせること。
- 勧告に係る内容については、政府・総務省の不当な干渉に屈することなく、第三者機関としての独立性を守り、公平・公正な立場で勧告作業を進めること。
- 人事委員会の勧告に向けた調査や作業にあたっては、全教北九州市教職員組合との交渉・協議、合意にもとづいてすすめ、組合の意向を充分反映し早期勧告に向けて努力すること。