全教(全日本教職員組合)は、7月10日、書記長談話『イスラエルとアメリカのイランの核施設への先制攻撃に抗議します』を発表しました。
6月13日、イスラエルはイランへの先制攻撃を開始し、6月21日にはアメリカがイランの核施設3か所を空爆したと発表しました。イスラエルは、「イランの核兵器開発が差し迫った脅威」として「自衛のための先制措置」だとしています。しかしこのような先制攻撃は国連憲章と国際法違反の不法行為です。しかも、アメリカのトランプ大統領は連邦議会の承認を経ておらず、大統領独断での攻撃であったことも明らかになっています。
一方、イランは核不拡散条約(NPT)からの脱退を検討していると報じられており、核兵器をめぐる情勢はいっそう危うくなっているといえます。
6月25日、イスラエルとイランの戦闘終結の後、トランプ大統領がアメリカの空爆について、広島、長崎の原爆投下に例え、「戦争を終わらせた点で本質的に同じ」と語ったことが報道されました。
今回の一方的なイランへの攻撃を、広島と長崎への原爆投下になぞらえて正当化することは許せません。一般市民を無差別に殺戮し、生き残った人々にも筆舌に尽くしがたい苦難を与えた広島と長崎への原爆投下を、「戦争の終結を早めた」と正当化することは、すべての被爆者と核廃絶へ向けた市民の運動を冒涜するものです。
全教は、イスラエルとアメリカのイランへの先制攻撃に対して、さらにトランプ大統領が広島・長崎への原爆投下を引き合いに出して正当化したことに断固抗議します。
2022年からのロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルのパレスチナへの攻撃が長期化し、子どもと市民のいのちとくらしを奪い続け、分断と対立を一層深めています。日本政府は13日、イスラエルに対して軍事手段を用いたことを非難しましたが、アメリカに対しては「イランの核保有を阻止するという決意を示した」と支持を表明しました。アメリカ言いなりの軍備増強による「防衛力」と抑止力強化は、国際社会の不安定化につながります。日本政府は日本国憲法に基づき、どちらの国に対しても国際法の順守と平和的な外交努力での解決を強く求めるべきです。
「教え子を再び戦場に送るな」を掲げてきた全教は、すべての人が平和に生きることができる社会の実現をめざして、力を尽くす決意をあらためて表明します。