全教(全日本教職員組合)は、10月9日、書記長談話『衆議院解散について』を発表しました。
石破茂首相は10月9日、衆議院を解散しました。10月15日告示、27日投開票で総選挙がおこなわれます。
石破氏は、かねて首相が解散権を持つという解釈に疑義があると述べ、9人の候補が乱立した自民党総裁 選選挙期間中には早期解散を否定してきたにもかかわらず、首相指名もされていない段階で解散日程を表明しました。岸田前首相の総裁選不出馬表明以降の経過で明らかになったのは、裏金づくりや旧統一教会との癒着に対する国民の怒りを軽視し、総裁選で刷新感を演出し、早期解散することで与党にとどまり続けようとする自民党の党利党略そのものです。それは国民本位の政治ではなく、一部のために政治権力を持ち続けるということにほかなりません。政権・与党の腐敗と劣化は深刻です。
1999年の自公連立政権発足後、政府は新自由主義的政策を続けるとともに、国会の議論を軽視し、閣議決定で防衛政策を大転換し、憲法の制約を無視して、戦争できる国づくりをすすめてきました。そのもとで、正規雇用から非正規雇用への置き換え、労働者の実質賃金は下がり続け、円安誘導と低金利政策が招いた物価高騰のなかで、貧困と格差の拡大が深刻化しました。
公共部門の民営化推進政策は、地域における公共の脆弱化を招きました。公立病院や保健所の縮小がコロナ禍を深刻化させました。国土交通行政の切り捨てが2024年1月の羽田空港での事故や能登半島地震の被災地の復旧がなかなか進まない原因のひとつにもなっています。
ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルによるパレスチナ・レバノンへの攻撃が激化する国際情勢において、日本政府は憲法の平和主義にもとづく外交努力をすることなく、中国包囲網の構築を急ぎ、北東アジアの不安定化を招いています。
教育分野においては、全国学力テストの悉皆実施と結果公表に代表される競争教育の強化により、学校現場のゆとりを奪い、登校拒否・不登校の児童・生徒数や精神疾患による教職員の病気休職者の急増を招いています。「教育再生」という名の教育改革政策を押しつける一方で、教職員の長時間過密労働は放置され、教職員未配置は深刻の一途です。8月の中教審答申が、結局、自民党の特命委員会の提言をほぼ丸写しするものであり、「このままでは学校がもたない」という危機を打開できない内容であったことに怒りが広がっています。OECDの調査によれば、教育への公財政支出の対GDP比は、OECD 諸国中、最低レベルです。しかも、2020年度に初めて防衛予算が文科省予算を上回って以来、わずか5年で防衛予算の2025年度概算要求額は文教関係の2倍に達しています。そして、日本学術会議に介入し、学問の自由を侵し、軍事研究に誘導し、軍産学複合体を形成しようとするとともに、安保3文書には「わが国と郷土を愛する心を養う」ことを防衛政策に位置付けています。
今回の総選挙は、このような政治の継続と改憲策動を許さず、憲法をいかして、国民のいのちとくらしを支える政治を実現する絶好の機会です。日本国憲法は、国民を主権者として位置づけるとともに、その自由と権利を保持するために国民に不断の努力を要請しています。いまこそ、憲法の要請に応え、積極的に参政権を行使し、政治を転換させるときです。
全教は、教職員の要求実現と結んで、総選挙の意義を職場で語り合い、教育予算を増やす政治を実現するために、すべての教職員に積極的な参政権行使をよびかけます。全教は、1月からの通常国会を中教審答申の具体化ではなく、教職員定数増、時間外勤務手当支給を可能とする給特法改正、「新たな職」導入阻止などを求める「教育国会」とするために奮闘する決意です。