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子どもの生活及び教育条件の改善、高校生・青年の就職・修学、進路の保障を求める要請書(2018年)

この要請は全日本教職員組合(全教)、教職員組合共同闘争推進連絡会(教組共闘)と共同で行ったものです。


貴職におかれましては、児童・生徒・青年の未来を励ますために日頃よりご努力されていることに、敬意を表します。

全日本教職員組合(全教)、教職員組合共同闘争推進連絡会(教組共闘)は、この時期全国すべての都道府県を訪問し、高校生、青年の就職・修学、進路保障、児童・生徒の教育条件整備に関して担当部局の方と意見交換する要請行動を行っています。この九州でも、この間すべての県、北九州市で要請を行い、青年や子どもたちを取り巻く現状や環境の改善について意見交換を行ってきました。

子どもたちの笑顔があふれ、豊かな学びができる学校は、私たち教職員、保護者の願いです。ところが、貧困と格差の拡大が家庭を直撃し、子どもたちの教育にも影響をおよぼしています。憲法が保障する教育の機会均等を保障し、誰もがお金の心配なく、安心して学べる環境が必要です。

2014年度より「高校無償化」に所得制限を加えた「高等学校等就学支援金制度」がはじまりました。また、非課税世帯の高校生に支給される「高校生等奨学給付金(奨学のための給付金)」もはじまりました。しかし、所得制限を設けていることやその財源の在り方に問題が指摘されています。国や北九州市の責任で、幼児教育から大学教育まですべての子どもたちの学ぶ権利の保障、教育の機会均等・教育費の無償化をすすめるためにも、市独自のさらなる「就学援助制度」の充実と高校生への拡充や、高校生・大学生への「給付制奨学金」の拡充が求められています。

「教育に穴があく」といわれる教職員未配置問題が多くの自治体で問題になっています。背景には、正規採用ではなく臨時・非常勤教職員による安上がり配置を可能とした「総額裁量制」や「定数くずし」などの国の制度がありますが、教育委員会もこれまで正規採用を抑制してきたことが現在の状況を招いています。全国各地の自治体では、保護者、地域住民、子どもたちや教職員の願いをもとに自治体独自の少人数学級が確実に前進しています。さまざまな課題を抱えた子どもたちが増える中、一人ひとりにゆきとどいた教育を保障するために少人数学級の拡大、拡充が求められています。

特別支援教育の充実を求めます。そのために、国に対して、特別支援学校だけにない「設置基準」を策定することを、国に対して要望することを求めます。また、支援学級の学級編成標準の引き下げも強く求めます。さらに、今後も市内の特別支援学校・支援学級の教育条件、教育環境のさらなる改善・充実に努力していただくことを求めます。

児童・生徒・青年の就職・修学と進路をめぐる実態の解決は、国や地域の将来にもかかわる重要且つ緊急の課題です。そして、誰もが人間として大切にされる学校、地域をつくるために、また就職・修学、進路保障、教育に責任をもつ立場のものとして、ともに知恵を出し合い児童・生徒・青年の未来のために、以下の要請をします。誠実な対応をお願いします。

目次

小・中・高校生の就職・修学保障に関すること

  1. 国に対して以下のことを強く要請してください。
    1. 小・中学校における就学援助制度、特別支援学校における就学奨励費制度を充実させるよう要請すること。
    2. 小学校、中学校、高校の教育活動に必要な教材費や給食費など、学校納付金を無償にするよう要請すること。
    3. 「高等学校等就学支援金」の所得制限をやめて「高校無償化」を復活するよう要請すること。
    4. 私学助成を増やし、父母負担の軽減をすすめるよう要請すること。
    5. 現行の「高校生等奨学給付金(奨学のための給付金)」拡充、改善するよう要請すること。また、高校生、専修学校生、大学生、短大生に対する給付制による奨学金制度を確立するよう要請すること。
    6. 以上の制度を実現するための措置として、教育予算の増額を国に要請すること。
  2. 北九州市として以下の施策を検討、実現してください。
    1. 市独自の予算措置による小・中・高校における35人以下学級を早期に実現すること。
    2. 市の施策により、幼稚園や特別支援学校・支援学級の学級編成基準を引き下げること。
    3. 「小中一貫校」や「学校選択制」「適正規模」等を理由にした小・中学校統廃合を、学校、地域の実情、住民、保護者の声を無視して一方的にすすめないこと。
    4. 義務教育における就学援助制度の拡充を行なうこと。
    5. 北九州市奨学金返済支援事業の対象者を高校卒業まで拡大すること。
    6. 10月から段階的な生活保護基準引き下げによって、就学支援の認定基準や支援内容に影響がでないようにすること。
    7. 独自の予算措置により小学校、中学校、高校の教育活動に必要な教材費や給食費など、学校納付金を無償にすること。
    8. 経済的に困窮している家庭に、教科書代(高校)や副教材費、実験実習費、また、制服や体育用品、修学旅行費、通学費などの補助を今以上に拡充すること。市独自の「高校就学援助制度」を確立すること。

高校生・青年の進路・就職保障に関すること

  1. 的確且つ有効な就職指導や就職率向上のためのキャリアサポートスタッフ(就職指導専門員)を市立高校や特別支援学校へ配置すること。
  2. 市内の高校生・青年の就職率を向上させるため、教育・福祉・医療等の公務公共分野において雇用創出をはかること。また、地域における高校生・青年の雇用確保の条件整備をはかるため、必要な財政的措置も含め、中小企業や地域の振興策を強化すること。
  3. 特別支援学校高等部卒業生の就職、雇用を確保、拡大するため、企業等が障害者の法定雇用率以上の採用を行うことができる環境を行政も整えること。また、法定雇用未達成の企業に対する指導を強めること。
  4. 特別支援学校高等部卒業生で障害等のため、就職もできず施設の入所さえ断られる事態も発生している。そのため家族に多大な負担が生じることになる。すべての障害を持った人やその家族が、希望に沿った生活ができるように対策を講じること。
  5. 青年が経済的に自立し、健康で文化的な最低限の生活を送ることができるよう、最低賃金の大幅な引き上げ、偽装請負やサービス残業根絶、派遣労働の規制強化など、非正規雇用労働者の労働条件を改善し、正規労働者との均等待遇実現など働くルールを確立するための対策を講じること。
  6. 青年労働者の短期離職者の実態を把握するとともに、短期離職者の多い企業については労働条件の改善等の指導を強めること。
  7. 高校生に、労働者としての権利と人間らしくはたらくルールを学ぶ機会を提供するため、啓発学習資料等を活用した学習の機会をすべての生徒に保障すること。また、資料等の配布のみに留めることがないよう指導すること。

教職員の教育条件改善に関すること

  1. 国に対して以下のことを強く要請してください。
    1. 教員の長時間過密労働の温床となっている給特法を改正し、労働時間に見合った残業手当を支給することができるよう国に要請すること。
    2. 憲法とILO勧告に基づいた労働基本権の回復を国に要請すること。
    3. 教員免許の失効=失職の制度をやめるよう国、文科省に要請すること。また、教員不足の要因にもなっている教員免許更新制は廃止するよう国に要請すること。
    4. 教職員が子どもたちとしっかり向き合えるように、小・中・高校における35人以下学級を国の責任で早期に実現するよう要請すること。また、幼稚園や特別支援学級・学校の学級編成の基準を引き下げるよう要請すること。
    5. 特別支援学校の過大・過密問題を解消させるため特別支援学校の「設置基準」の策定を要請すること。
    6. 全国学力学習状況調査は廃止するか、数年おきの抽出調査にするよう要請すること。
    7. 小5、中2において悉皆調査で行っている「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」を抽出調査に戻すよう要請すること。
  2. 北九州市として以下の施策を検討、実現してください。
    1. 児童・生徒の学習権を侵害する教員未配置問題を早急に解決すること。そのための具体的且つ有効な施策を早急に検討、実施すること。
    2. 児童の学力向上のため専科教員をすべての小学校に同じ教科で配置すること。外国語についても専門的知識をもった正規の専科教員を各学校に配置すること。また、その場合定数外で配置すること。
    3. 生徒が心身ともに休養できる日にするため休養日(ノー部活動の日等)を増やすこと。また、全校一斉に実施できるよう職場環境を整えさせること。
    4. 児童・生徒の健全な発育・発達を保障するため、全国学力学習状況調査、体力・運動能力調査を行わないこと。また、放課後の補習や過去問の実施など学力テスト体制による過熱した取組みや施策を改め、子どもの健全な成長を保障すること。
    5. 夏休み短縮に伴い、早急に特別教室へのエアコンの設置等教育環境を整備すること。
    6. 児童・生徒の健康及び食育の観点から、学校給食では安全な県産品を使用すること。
    7. 校舎・教室の老朽化対策、安全対策、教育環境改善のための施設・設備の点検、補修・改築をすすめること。
    8. 北九州市の教員希望者を増やすため、県や福岡市の教員と同等若しくはそれ以上の給与、諸権利などの待遇を改善するとともに、常態化している長時間勤務・過重労働を排除することで魅力的な教育現場になるよう具体的措置を講じること。
    9. 教員相互の協力・協同の破壊や分断にもつながる「人事評価」による賃金リンクは実施しないこと。
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