萩生田文部科学大臣は、11月1日、2021年度大学入試の英語民間検定利用を「延期」した上で2024年度からの実施をねらい、今後1年を目途に見直しをおこなうことを明らかにしました。
大学入試への英語民間検定利用は、経済格差や地域格差を容認するものであり、目的の異なる英語民間検定を合否判定に利用するなど不平等・不公平な制度であることは明らかです。「延期」ではなく中止すべきです。
また、英語民間検定利用は「公教育の市場化」を加速させるという点で重大な問題をもっています。今以上に市場化をすすめることは、すべての子どもたちがひとしく教育を受ける権利を保障するのではなく、新自由主義的教育政策の中でまさに「身の丈」に合った教育を受けるよう国が強要することになります。
同時に、「大学入学共通テスト」の国語・数学での「記述式」導入も採点を民間事業者に丸投げするものであり、英語民間検定利用と共通の問題をもつものです。さらに、わずか1か月足らずの期間に50万人もの受験生の採点をおこなう上で採点の質担保と採点者の確保ができるか、試行調査の段階で明らかになった自己採点との不一致率が3割もあり2次試験出願に影響を及ぼすことが懸念されるなど、重大な問題を抱えたまま実施されようとしています。
英語民間検定利用だけでなく「記述式」の問題が大きく取り上げられ、共通の問題をもつものであることが明らかになった以上、英語民間検定利用「延期」と同様の対応が求められます。しかし、萩生田文科大臣は11月8日の参議院予算委員会で「採点しやすい、きちんとした制度をつくり上げていく」と述べ、予定通り実施する方針を強調しました。受験生にとって公平公正な大学入試制度とするには、「記述式」導入を中止し、抜本的な見直しをおこなうことが必要です。同時に、萩生田文科大臣の責任も問われます。
「大学入学共通テスト」を中心とする「大学入試改革」に対する不安や不信感が高まり、大学入試そのものへの信頼性が大きく損なわれている現状をふまえ、文科省にはこのような不安や問題を払拭することが求められていれます。
つきましては、以下の点について要請します。
- 多くの問題をもつ「大学入学共通テスト」の「記述式」導入を中止すること。
- 営利を目的とする民間業者に公教育を委ねる「教育の市場化」を見直し、国は責任をもって教育条件整備に努め、公平・公正な大学入試制度とすること。