日頃から北九州市教職員の勤務条件の向上に努力されていることに敬意を表します。
文科省は4月28日、2022年に実施した教職員勤務実態調査の速報値を発表しました。 2016年度実施の前回調査より、平日の在校等時間が小学校教諭で30分間減少し10時間45分、中学校教諭で31分間減少し11時間1分となりました。この在校等時間から所定の勤務時間(7時間45分)と取得できた休憩時間(小学校5分、中学校7分)を差し引くと、小学校では1日当たり2時間55分、中学校で3時間9分、1か月換算では小学校62時間30分、中学校67時間30分の時間外勤務を学校でしていることになります。ここに持ち帰り時間を加えると、平日の時間外勤務は小学校では75時間42分、中学校で79時間55分になります。土日を加えると月80時間の過労死ラインを超える時間外勤務をしている実態が明らかになりました。また、小学校教諭の64.5%、中学校教諭の77.1%が週あたりの在校等時間が50時間を超え、1か月の時間外勤務の上限45時間に収まっていません。6年前より改善の傾向はあるものの、依然として学校現場の長時間過密労働は深刻な状況にあります。北九州市内では時短ハラスメントにより虚偽の打刻を行っている人が多数いることも申し添えます。学校現場は「ブラックだ」との見方が広がり、教員不足を生み出し、さらに長時間過密労働が促進される悪循環を生み出しています。有為な人材を確保し、安心して働き続けられる職場環境をつくることが求められています。人事委員会のみなさまには、労働基本権制約の代償機関としての役割を果たしていただくよう強く求めます。
まず、賃金改善が必要です。41年ぶりといわれる物価高は落ち着く兆しはありません。2月の毎月勤労統計(速報)で、物価の影響を考慮した「実質賃金」は、前年同月比2.6%減。11か月連続のマイナスで、1年近くも物価高に賃金上昇が追い付かない状況が続いています。実質賃金の低迷は、日本経済の地盤沈下に拍車をかけ、特に地方経済への打撃は大きいです。地方経済の活性化と教職員の奮闘に報いるため、初任給をはじめ、再任用職員の賃金をさらに引き上げるとともに、すべての教職員の処遇改善を実施するよう求めます。同時に地域間格差の是正に向けて、国に対する要請を行うよう求めます。
会計年度任用職員は、均等待遇の観点から勤勉手当相当額の支給が行われるべきです。人事委員会が、勤勉手当の支給をはじめとする労働条件改善に向けた勧告を行うよう求めます。
最後に、労働時間管理についてです。際限のない時間外労働が続くことは、職員の命と健康にかかわる重大な問題です。給特法により時間外手当が出ない教員は、「定額働かせ放題」になっており、使用者に業務を抜本的に改善しようとする責任を放棄させ、教職員の自己責任に追いやられています。また、業務量に見合った教職員の配置をすみやかに行うことを強く求めます。 第一線で奮闘する教職員の労苦に報い、ゆきとどいた教育をすすめるためにも、北九州市人事委員会が労働基本権制約の代償機関としての責務と役割をふまえ、下記の要求の実現に尽力されることを要請します。
- 子どもたちの教育のために、日夜献身的に奮闘している教職員を励ますとともに、職務に専念できるように、生計費原則をふまえ、正規、非正規を問わずすべての教職員の賃金・労働条件の改善に向けた勧告を行うこと。また、定年年齢の引き上げにあたっては、生計費をふまえた所得水準を確保するとともに、安全配慮の徹底をはかるなど、65歳まで安心して働き続けられる職場・仕事となるよう人事委員会としての役割を果たすこと。
- 会計年度任用職員については、合理的な説明のつかない時間短縮(15分カットで非常勤扱い)を早期にやめ、賃金をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現などに向けて必要な対策を行うこと。さらに、均等待遇に向けた必要な意見表明を行うとともに、賃金・労働条件の改善に向けた勧告を行うこと。すべての会計年度任用職員に期末勤勉手当を支給すること。
- 民間給与実態調査をもとに人事委員会勧告を出すにあたっては、単に民間の賃金水準と機械的に比較するのではなく、教職員の専門性や労働実態を十分加味すること。
- 給特法の検討については、教職調整額を維持するとともに、学校現場と教職員の実態をふまえた、教育現場にふさわしい時間外手当制度をつくるよう求めること。
- 教職員の分断を生む、政府、人事院による給与制度改悪に反対するとともに、人事委員会として意見表明すること。
- 「1年単位の変形労働時間制」は教員になじまない制度であり、導入を行わないよう、使用者に意見すること。
- 教職員の異常な長時間過密労働を解消するために必要な正規の教職員を増員する勧告をすること。また、労働基準監督機関として適切な労働時間管理が行われているか監督するとともに、適切でない事象が明らかになった場合は必要な措置を講じさせること。児童生徒数300人以下の学校から事務補助を剥がすのをやめ、事務補助を全校配置すること。
- ジェンダー平等推進の立場から、不妊治療、妊娠、出産、育児、看護、介護に関する休暇・休業制度等を拡充するとともに、男女ともに取得しやすい職場環境と人員体制を整備すること。
- 病気の治療と仕事の両立支援の立場から、長期治療を必要とする者への休暇・休業制度を拡充するとともに、休暇・休業制度を取得しやすい職場環境を整えさせること。また、治療継続中の教職員の労働条件・職場環境も整えさせること。
- 勧告に係る内容については、政府・総務省の不当な干渉に屈することなく、第三者機関としての独立性を守り、公平・公正な立場で勧告作業を進めること。
- 人事委員会の勧告に向けた調査や作業にあたっては、全教北九州市教職員組合との交渉・協議、合意にもとづいてすすめ、組合の意向を充分反映し早期勧告に向けて努力すること。