全教は、8月10日、標記の中央執行委員会声明を発表しました。
- 人事院は本日、一般職国家公務員の給与等に関する勧告と報告 を、内閣総理大臣と両院議長に対しておこないました。その構成は、「給与勧告・報告」、「公務員人事管理に関する報告」および「国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申出」からなっています。
- 職種別民間給与実態調査の結果にもとづき、今年4月における官民較差は、マイナス19円(0.00%)と国家公務員給与が民間給与をわずかに上回っており、較差がきわめて小さいことから2年連続で月例給の改定は見送られました。一時金については、昨年8月から今年7月までの民間の支給割合が4.32月であるとして、現在の4.45月分を0.15月分引き下げ4.30月分としました。
「職員の給与に関する報告」では、給与勧告制度の基本的考え方として「本院の給与勧告は、労働基本権制約の代償措置として、国家公務員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する機能を有するもの」で、「給与勧告を通じて国家公務員に適正な処遇を確保することは、職務に精励している国家公務員の士気の向上、公務における人材の確保や労使関係の安定に資するもの」としています。
にもかかわらず勧告の内容は、コロナ禍のもとで国民のいのちと安全を守るため、長時間過密労働のもと昼夜を分かたず奮闘している国家公務員の現場実態を顧みない極めて不当なもので、公務員全体の士気を下げ、地域経済にも大きな打撃を与えるものであり、強く抗議するものです。 - 一時金の引き下げ分について、今年度は12月期の期末手当に充て、来年度以降については6月期と12月期の期末手当に均等に割り充てるとしています。「勤務実績に応じた給与を推進するため」として、一時金の引き上げ改定では勤勉手当に充て、引き下げる時は全員に影響する期末手当に充てることは、能力・実績主義を推進する政府方針に追随するものであり、断じて容認できません。さらに、正規職員との格差是正が求められているにもかかわらず、昨年は引き下げられなかった再任用職員の一時金が引き下げられることも許しがたいものです。
- 今回の給与勧告は到底納得できるものではありませんが、コロナ禍の厳しい経済状況のもとで、月例給のマイナス改定を許さなかったことは、全労連・国民春闘共闘に結集する民間の奮闘、官民一体となった全国一律を求める最低賃金闘争、公務・公共サービスの充実を求める国民世論の高まりや政府・人事院宛署名に寄せられた11万筆(全教・教組共闘連絡会分3万5302筆)を超える現場の要求の力によるものです。
また、その他の取組として、非常勤職員の給与について指針を改正し、任期が相当長期にわたる非常勤職員の期末手当及び勤勉手当に相当する給与について、常勤職員の支給月数を基礎として支給するよう各府省に指導することや、育児休業制度の改正に併せた、一時金の在職期間等の算定の改善などが図られたことは重要です。 - 定年年齢引き上げにかかわって、能力・実績主義を強化する方向が示されています。4月に公表された内閣人事局の「人事評価の改善に向けた有識者検討会」の報告書では、評語区分を現行の5段階から6段階に細分化して、職員間の分断を図ろうとしています。人事院がこの方向に追随し、人事院規則を「改正」しようとしていることは到底許されるものではありません。国家公務員における人事評価制度の「改正」が、地方公務員や教職員におよぶことがないようとりくみの強化が必要です。
- 「公務員人事管理に関する報告」では、「公務職場全体の魅力を高め、個々の職員が能力・経験を十全に発揮し、意欲を持って働ける環境を実現する」ことを述べ、長時間労働を是正するとともに、仕事と家庭生活の両立を図ることが重要と、働きやすい勤務環境を整備することを求めています。
長時間労働の是正では、「各府省において業務の合理化等を行った上で業務量に応じた要員が確保される必要があることを改めて指摘したい」としています。しかし、この間、政府は総人件費抑制政策を変更することなく、全体の配置調整で対応する域を出ていません。コロナ禍で明らかになった危機管理に対応できない現状を打開するためには、定員削減計画を撤回し抜本的な定員増を図ることを求める報告こそ、人事院に求められています。 - 妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援について、男性職員による育児の促進や女性職員の活躍促進をすすめるための方策の一つとして、「国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申出」を行い、あわせて、不妊治療のための有給の特別休暇が新設を求めました。また、男性の育児休業取得の促進等として、育児休業の取得回数制限の緩和や請求期限が拡大され、非常勤職員についても妊娠、出産育児等の休暇・休業等に関する措置を常勤職員と同様に有給で一体的に講じ、育児休業、介護休暇等の取得要件を緩和するなど、これまで強く要求してきた内容が前進しました。今後、実際に制度が取得できる条件整備をすすめる必要があります。
- 7月16日、中央最低賃金審議会 が2021年度の地域別最低賃金改定の基礎となる引き上げ目安について、全国平均3.1%、A~Dランクすべての地域で28円の引き上げを答申しました。現在、各地の最低賃金審議会で地域別最低賃金が審議されていますが、目安額そのままでの改定だと、全国平均最賃額は930円となり、一般国家公務員高卒初任給の時間給換算額897円との格差がさらに広がることとなります。地方経済の活性化のためには、地方で働く公務員賃金の底上げ・引き上げ、地域間格差の是正は喫緊の課題です。そもそも公務員賃金が、最低賃金法の適用除外であること自体重大な問題であり、民間との均衡の原則からもただちに改善されなければなりません。
- 今後、各地方においても人事委員会に対し、賃金引き上げにつながる勧告を求めるとりくみが必要です。確定闘争では再任用職員や会計年度任用職員をふくむ臨時・非常勤教職員の待遇改善、ハラスメントの根絶、妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援の前進、能力・実績主義を許さないたたかいなどとともに、定年引き上げの条例化にむけたとりくみが求められます。
全教は、新自由主義的政策から憲法が生きる社会への転換をめざし、菅政権の国民のいのちを蔑ろにした強権政治を許さず、教職員の長時間過密労働の解消、地域間格差の是正、能力・実績主義賃金の拡大を許さないたたかいに引き続き全力を挙げる決意です。