全教は、5月10日、書記長談話『2022年度文科省勤務実態調査の速報値について』を発表しました。
文科省は4月28日、2022年に実施した教職員勤務実態調査の速報値 を発表しました。
2016年度実施の前回調査より、平日の在校等時間が小学校教諭で30分間減少し10時間45分、中学校教諭で31分間減少し11時間01分となりました。この在校等時間から所定の勤務時間(7時間45分)と取得できた休憩時間(小学校5分、中学校7分)を差し引くと、小学校では1日当たり2時間55分、中学校で3時間9分、1か月換算では小学校62時間30分、中学校67時間30分の時間外勤務を学校でしていることになります。ここに持ち帰り時間を加えると、平日の時間外勤務は小学校では75時間42分、中学校で79時間55分になります。土日を加えると月80時間の過労死ラインを超える時間外勤務をしている実態が明らかになりました。また、小学校教諭の64.5%、中学校教諭の77.1%が週あたりの在校等時間が50時間を超え、1か月の時間外勤務の上限45時間に収まっていません。
6年前より改善の傾向はあるものの、依然として学校現場の長時間過密労働は深刻な状況にあります。調査結果は学校現場で勤務時間縮減の様々な努力が積み重ねられていることを反映している一方で、文科省による「学校における働き方改革」の限界を示していると考えることができます。
今回の調査結果から、長時間労働を是正する方向性を考えることができます。例えば教諭の業務内容について、小学校、中学校ともに6年前よりも「授業(主担当)」が増えています。全教がおこなった教職員勤務実態調査2022では授業の持ち時間数と時間外勤務の関連が明らかになっており、授業の持ち時間数に上限を設けることは長時間労働の是正にきわめて有効と考えられます。また、今回の調査では小学校、中学校ともに担任している児童・生徒数が多いほど、平日の在校等時間が多くなっています。全教の調査でも担任しているクラスが20人以下の場合、時間外勤務が少ないことが明らかになっています。少人数学級を推進することも長時間労働の是正に密接に関連すると考えられます。そして、今回の調査で、業務時間が短縮された場合、空いた時間をさらなる授業準備や教材研究、自己研鑽に充てたいという回答が約半数に及んでいることも注目されます。全教の調査でも授業準備、子どもと向き合う時間、自主研修にもっと時間をかけたいという教職員の願いが浮き彫りになっています。
以上の観点は、長時間労働解消について中教審で検討をすすめるにあたって重要視されるべきです。
全教はこれまでも教職員未配置(「教育に穴があく」)問題を指摘してきましたが、その実態はいっそう深刻になっています。穴をふさぐために学校現場の教職員の負担はますます過重となり、子どもたちの学ぶ権利を保障できない負の連鎖ともいうべき事態が進行しています。対症療法的な施策にとどまらない教職員の長時間過密労働解消のための抜本的な対策が求められています。教職員の長時間過密労働は、法的な規制力を強めること、教職員定数の改善なしには決して解消しません。給特法を改正し、時間外勤務に対する手当を支給できるような仕組みを整えること、持ち授業時間数等を軽減できるような教職員定数改善、それを可能とする教育予算の大幅増が必要です。全教は、この3つの一致点で幅広い共同を展開し、教職員の長時間過密労働を解消し、ゆきとどいた教育を実現する決意を表明するものです。