岸田政権は、戦後日本の防衛戦略の基本としてきた「専守防衛」を投げ捨て、12月16日、「安保3文書」を閣議決定しました。戦争放棄を掲げた憲法9条のもとで戦後を歩んできた日本が、今戦争国家としての道を突きすすもうとしています。国のあり方を根本的に変えてしまうこのような重大な決定を日本の国民より先に米国訪問で発表し、国会の議論もなく勝手に下した政府の暴挙に断固抗議し、その撤回を求めます。
「安保3文書」では、相手の領域内を直接攻撃する「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」という名称で保有することを明記しましたが、「武力による威嚇」は明らかな憲法9条違反です。「専守防衛という考え方は変えない」と強弁しても、他国の領土を先んじて攻撃することにほかなりません。先制攻撃は国際法違反であるばかりか、他国の攻撃を呼び込むことになります。日本がアメリカなどの同盟国の戦争に参加することになれば、日本が攻撃されるリスクはさらに高まり、そうなれば日本は焦土と化してしまいます。また、「敵基地攻撃能力」の保有は、日本の国民のみならず他国の人々のいのちを危うくするものです。
すでに5年間で43兆円の防衛予算を確保することとし、防衛予算を対GDP比2%とする方針を打ち出していた岸田内閣は、2月3日、防衛財源確保の特別措置法案を閣議決定しました。防衛費増額については税外収入や決算剰余金等で捻出し、不足分は増税や国債で賄うとしています。そもそも軍拡ありきの議論が先行し、国民の負担増を求め復興特別所得税の転用まで持ち出す国の姿勢に対し、8割以上の国民が反対しています。防衛費増額により社会保障費や医療・福祉・教育予算が削られることは明らかで、長期化したコロナ禍のもと、上がらない賃金や急激な物価高で生活が圧迫される中、国民のいのち・くらしはいっそう脅かされます。
防衛費が増額されれば日本は第3位の軍事大国となります。一方、教育予算の対GDP比がOECD諸国の中で最下位レベルの日本で、国民的要求となっている少人数学級の前進や教育無償化、教職員定数増などの実現は遠のくばかりです。さらに、「安保3文書」の閣議決定を理由にして、教科書の記述内容の変更を迫る動きや愛国心をおしつける教育をすすめようとする動きが強まることも予想されます。着々とすすむ日米軍事一体化が他国にとって軍事的な脅威となり、北東アジアの緊張を高め、国際情勢を不安定化させることは目に見えています。憲法9条を持つ国として、他国との対立を深めたり排除したりするのではなく、対立する相手を含む国際平和秩序を構築するための外交努力こそが求められています。
ウクライナの惨禍にふれて多くの子どもたちが心を痛めています。学校でも、戦争や平和、人間の尊厳について考え合うとりくみがすすめられました。教職員組合は戦後一貫して「教え子を再び戦場に送るな」を掲げ、武力で平和は築けないと声を上げ、平和を求めるすべての人々と連帯してきました。この間改憲を許さない市民と野党の共闘を広げ、改憲策動を押しとどめてきたことに確信をもち、新たに提起された「平和、いのち、くらしを壊す大軍拡、大増税に反対する請願署名」のとりくみを強めることが求められます。今こそ歴史の教訓に学び、全教が先頭に立ち、子どもたちを戦争に送るのではなくともに平和な未来を築くために、この声をいっそう大きく広げていきます。
以上、決議します。
全日本教職員組合第40回定期大会特別決議
全教北九州市教職員組合は、北九州市立の幼稚園・学校に勤める方を対象とした労働組合です。
私たちは、子どもたちの意見、保護者・地域のみなさん、他の労働組合や市民団体とともに、学校づくり・地域づくりのための様々な活動を行っています。(もっと詳しく)