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(全教談話)「高等学校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)~2040年に向けた『N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想』~」について

全教(全日本教職員組合)は、2026年3月13日、書記長談話『高等学校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)~2040年に向けた『N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想』~について』を発表しました。


2026年2月13日、文部科学省は「高等学校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)~2040年に向けた『N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想』~」を公表しました。この「方針」は「『国』がリーダーシップを発揮し、高校教育を具体的に実施する設置者である『自治体や学校法人』や学校と適切な役割分担を図りつつ進める必要がある」としており、トップダウンで国・財界の求める「人材」育成をめざす教育を押しつけようとするものです。

本構想は、高校改革の方向性を3つの視点「AIに代替されない能力や個性の伸長」「我が国や地域の経済・社会の発展を支える人材育成」「一人一人の多様な学習ニーズに対応した教育機会・アクセスの確保」で示しています。学校の魅力化を「校長のリーダーシップの下、スクールミッションやスクールポリシーに基づく学校運営の具体化」と位置づけ「生徒を主語とした」高校教育として、普通科の在り方を転換させ、将来的には、文系・理系の区分がなくなることを目指し、専門高校では特色化で志望者の増加につなげるとしています。そして、全国どこにいても学びを保障するとして遠隔授業等の推進を掲げています。まさに、経産省の「未来の教室」で提言している「『教科』『学年』『単位』等の概念の希釈化」や、「令和の日本型教育」の具体化・強制をトップダウンで推し進める姿勢を示しています。学校教育の集団性を解体し、学習の個別化と企業の参入を招く「公教育の解体」に向かっていくことは容易に想像できます。現行の教育基本法で示している教育の目的が、「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」とあるにもかかわらず、学校のイメージとして「地域産業や社会の課題を解決できる人材」「地域初のイノベーションを興す人材」「グローバル人材」など、人材の育成と能力の伸長の場所として表現されており、青年期を生きる人間としての学びや育ちの観点が見えません。また、「短時間で効率化された学び方」は、学習環境の差を浮き彫りにし、障害児教育や不登校経験者などの教育弱者を隔離・差別化することにつながりかねません。

各都道府県は、グランドデザインを踏まえた「高等学校教育改革実行計画」を策定し、「高等学校教育改革交付金(仮称)」を構築するとしています。また、2025年度補正予算で「高等学校教育改革促進基金」が3000億円の規模で新設され、都道府県に公募を開始しています。5月15日まで3回に分けて申請を受け付けています。また、「高等学校教育改革等推進事業債(仮称)」を2026年度から2031年度までに創設し、実行計画に基づいたとりくみをすることとされています。

これは、高校において2032年度から年次進行される、「文理を問わず「特性の理解」を身に付ける」ことや「産業界等との連携の深化」と書かれている次期学習指導要領を先取りするものです。各都道府県に資金を出し、改革実行計画を時間の余裕のないままに作成させ、経産省の主導する教育改革を貫徹させることには断固反対します。

グランドデザインの冒頭「2040年の未来を担うみなさんへ」には、「自分自身の理想を追い求め、多くの仲間と協力し、日本や世界の未来を創っていくことを願っています」と記されています。そのためにも教育の条理に基づいた、教育の公正性や公平性が保たれ、共通の一般的、基礎的な知識が幅広く理解され、それを基に多くの仲間と協力し、生徒それぞれの個性の伸長が十分に保障される教育条件の整備こそが必要になるはずです。個別最適化の名の下で、生徒がAIの判断などに無批判に従い、企業が用意した職業教育を選択することが、冒頭の「夢や希望を持って様々なことに挑戦」する方向に生徒を導くことができるとは思えません。

全教は、政府や財界が求める人材育成という経済政策に従属した教育の問題点を明らかにして異議申し立てをするとともに、人格の完成をめざすゆきとどいた教育を実現するために、全国の父母・保護者、国民、教職員と共同し、すべての高校生が学ぶ喜びと希望をもつことのできる高校教育への転換に向けて奮闘するものです。

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