全教(全日本教職員組合)は、2025年12月16日、書記長談話『2026年度政府予算案の閣議決定について』を発表しました。
本日、政府は総額122兆3092億円の2026年度予算案を閣議決定しました。4年連続の110兆円超えどころか、120兆円越えで過去最大の規模となりました。防衛省予算は8兆9843億円で、予算総額の7.3%となりました。一方で、文部科学省予算は一般会計で5兆8809億円と予算総額の4.8%です。その内、文教関係予算は4兆5981億円で、衆参ともに選挙公約として教育予算増を掲げた政党が過半数を占めていましたが、その国民の声に応えることなく、教育予算の大幅増額を行っていません。
この122.3兆円の内、29.6兆円が新規の国債発行であり、2025年度補正予算でも11.7兆円の国債が新規発行されています。高市政権下で40兆円を超える国債が発行され、国債費が2026年度歳出総額の1/4を超え、国債の格付け低下などが不安視されています。社会保障・教育・国民の生活が切り捨てられ、なおかつ国債への依存度を高めて大軍拡に突き進む高市政権の姿勢は、まるで戦前を想起させるものです。
教職員定数は、「新たな「定数改善計画」」と称し、7596人の増員を打ち出しました。しかし、概算要求時に含まれていた「いじめ・不登校対応等のための体制整備」という項目がなくなり、「養護教諭の配置充実」も、全校配置が撤回され、複数配置基準の見直しも引き下げ幅が概算要求時の100人から50人へ縮減されました。大きな後退です。さらに概算要求時には見られなかった「学校統合のための支援」の名目で50人を充てるなど、国民の要求よりも財政審建議で示された学校統廃合推進の方針に沿おうとする姿勢が見られます。教職員定数は合計で1万1289人の増に対し、自然減等が1万492人で、差し引きわずか797人増です。1年限りの措置である「特例定員」3345人を引くと、差し引きで2548人もの減になります。中学校35人学級の段階的ではない全学年での今すぐの実施や、高校の少人数学級化、小学校も含めて20人学級を展望したさらなる少人数学級化が必要です。すべての学校での少人数学級前進、教職員の長時間過密労働の解消、教職員未配置解消の実現には極めて不十分であり、文科省は抜本的な教職員定数の改善を行うべきです。
「教師の処遇改善」における、「主務教諭」の創設や、特別支援教育に携わる教員の「給料の調整額」縮減など、学校現場の実態を軽視するのではなく、一律の処遇改善こそ必要です。
「教育の無償化」について、その内容が明らかになりました。小学校の「給食無償化」については1人あたり月額5200円を上限として支給することが示されました。「教育の無償化」実現への大きな一歩です。金額の根拠は23年度文科省調査の全国平均月4700円に、物価高騰分として500円を上乗せした額とされています。しかし5200円を超える分について保護者負担があり得るとされ、これをもって「給食無償化」とは言えず、示された表現も「抜本的な負担軽減」であり、事実上の後退です。食料品の価格が上がり続けている中、5200円以内に抑えるよう学校栄養職員・栄養教諭に圧力がかかる懸念があります。学校給食法に規定された、健康の保持と増進を図る適切な栄養の摂取が脅かされ、豊かな食教育をあきらめざるを得ません。保護者や自治体負担の生じない、子どもたちに安全・安心な給食を保障する制度設計と予算措置を、国の責任で行うべきです。
「高校授業料無償化」は、所得制限を撤廃し、公立は今年度に引き続き無償、私立高校生には45.7万円を支給するという内容が示されました。私たちが長年求め続けてきた、「無償教育」の実現へ一歩近づいたと言えます。しかし私立高校における45.7万円を超える分は保護者負担であり、まだまだ無償化とは言えません。その他、入学金や施設設備費などの負担はいまだ大きく、教育条件の根本的な改善を行う点でも、「高校授業料無償化」に加えて私学経常費助成を抜本的に増やすべきです。公私ともに一度納入をした後、申請を経て支給されることに、一時的でも極めて大きな経済的負担や申請事務の負担が保護者にかかり、事務職員もほぼ全家庭からの申請に対応するなど、大きな負担増となっています。さらに、「対象者」として条件を7項目もあげ、外国籍の生徒を排除しようとする意図を強く押し出しています。今年度の「高校生等臨時支援金」でも定時制通信制の単位制に通う生徒の内、19単位以上を取得する生徒を対象外とするなど不十分なものでした。何より、今回の「高校授業料無償化」は、1/4を地方に負担させる設計です。国際人権規約A規約 13条(b、c)の留保撤回をした日本の「国の責任で」は、いつ果たされるのでしょうか。すべての生徒を対象とし、授業料そのものを不徴収とした、「いわゆる」という表現のない無償化へ、国の責任で今すぐ転換すべきです。
全教は、「戦争する国づくり」のための軍拡予算を大幅に削減し、国の責任による35人以下学級早期実現、20人学級を展望した少人数学級のさらなる前進、正規・専任の教職員増、給付奨学金制度拡充、公私ともに学費無償化など、子どもの権利が保障され、子どもが安心して学べる教育予算への抜本的な転換を求め、全国の保護者・教職員・地域住民とともに、政府予算編成に向けて全力を上げ奮闘する決意です。







