全教(全日本教職員組合)は、9月4日、書記長談話『2025年度文部科学省概算要求について』を発表しました。
2025年度概算要求 が8月30日に締め切られ、各省庁の概算要求総額は過去最高の117兆円に達することが明らかになりました。防衛省の概算要求が8兆5389億円に対し、文部科学省概算要求 は一般会計で5兆9530億円、そのうち文教関係予算は4兆3883億円となっています。2020年度に初めて防衛予算が文科省予算を上回ってから、わずか5年で防衛予算の要求額は文教関係予算の要求額の2倍になっています。文教関係予算の内容は保護者、教職員、地域の願いである、中学校、高校での少人数学級の前進、教職員定数改善、「教職員未配置」の解消等には程遠い要求となっています。
教職員定数は、今年度は「小学校における35人学級の推進等、義務標準法の改正に伴う定数増」3637人、「小学校における教科担任制の拡充」2160人、「生徒指導担当教師の全中学校への配置」1380人、「多様化・複雑化する課題への対応」476人等、合計7653人の定数増に対して、自然減等8703人を見込み、差し引き1050人の定数減となっています。全国に公立小中学校はおよそ3万校あり、7653人の増員では4校に1人程度です。その上、教職員定数を減らすことは、深刻さを増す「教職員未配置」や過労死ラインを越える教職員の長時間過密労働の解消に反するものです。現場の教職員がもっとも強く求めているのは、抜本的に教職員を増やすことです。そのために基礎定数を増やすための標準法改正を視野に入れた改善が急務です。
「教師の処遇改善」として、中教審答申で示されたものが、概算要求として具体化されました。教職調整額の引き上げは、すべての教員の賃金改善となるものであり、重要です。しかし、教職調整額の増額だけでは「定額働かせ放題」と言われている今の働き方を是認し、さらに悪化させるおそれがあります。必要なのは実際に生じている時間外勤務に対して残業代を支給できるしくみをつくり、長時間過密労働に法的な歯止めをかけることです。
「新たな職」の創設は学校内の分断につながりかねません。差別化、階層化によって、目の前の向き合うべき子どもたちの実態よりも、いかに自らへの評価を高められるかを重要視する教職員を生み出してしまうことが懸念されます。学級担任手当も学校内の分断につながることが懸念されます。学校現場ではすべての教職員が子どもたちの教育に関わっているのであり、すべての教職員の処遇が一律に改善されるべきです。いずれも、学校現場の厳しい労働環境の是正にはつながらず、「処遇改善」とは言い難いものです。
「GIGA スクール構想支援体制整備事業等」が新規事業として88億円計上され、内容として「ロケーションフリーでの校務実施」も含まれていることも示されています。ロケーションフリーでの校務実施は、「在校等時間」縮減のための持ち帰り仕事推進につながりかねません。「高等学校DX加速化推進事業 」も新規事業として107億円が計上されています。採択校に求めることとして「産業界等と連携した最先端の職業人材育成の取組の実施」と例示するなど、国の求める人材育成最優先の内容です。
特別支援教育関係では、「公立学校施設の整備」として「特別支援学校の教室不足解消に向けた環境整備等のための改修等の補助率引き上げ(1/3→1/2)の時限延長(令和11年度まで)」が示されました。特別支援学校の教室不足が依然深刻であることは、文科省の調査からも明らかです。補助率の引き上げなど、さらなる改善を求めます。
私立学校への経常費助成や、施設設備の整備の推進費の増額が示された一方、高校生等の修学支援の要求は2024年度並みです。高等学校等就学支援金 は、公私ともに支給対象者を年収 910 万円未満世帯に制限し、私学の加算支給の対象は年収590万円未満世帯までとしたままです。所得制限撤廃や私学の加算支給世帯の対象拡大など高校無償化へ向けたさらなる改善が求められます。高等教育の就学支援新制度については、子どもを3人以上扶養する世帯の学生等についてのみ授業料を所得制限なく無償化としています。しかし、国際人権規約 に則って、世帯の子どもの数や個人要件、機関要件によらず、高等教育を速やかに無償化すべきです。大学等学費の引き下げ、給付奨学金の拡充など、教育無償化のための施策が求められます。
全教は、「戦争する国」づくりのための軍拡予算を大幅に削減し、国の責任による35人以下学級早期実現、20人学級を展望した少人数学級のさらなる前進、正規・専任の教職員増、給付奨学金制度拡充、公私ともに学費無償化など、子どもの権利が保障され、子どもが安心して学べる教育予算への抜本的な転換を求め、全国の保護者・教職員・地域住民とともに、政府予算編成に向けて全力を上げ奮闘する決意です。