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(全教談話)第212回臨時国会に提出された国立大学法人法の一部を改正する法律案の廃案を求める

全教(全日本教職員組合)は、11月15日、書記長談話「第212回臨時国会に提出された国立大学法人法の一部を改正する法律案の廃案を求める」を発表しました。


第212回臨時国会に政府は「国立大学法人法の一部を改正する法律案」を提出し11月7日、衆議院で審議入りしました。

法案は、一定の規模以上の国立大学法人に最高意思決定機関として「運営方針会議」を設置することを義務づけるものです。「運営方針会議」は中期目標・中期計画・予算・決算などの「運営方針事項」を決議し、決議した内容にもとづいて運営がおこなわれていない場合には学長に改善措置を要求することや、学長の選考に関する事項について意見を述べることができるとされています。そして、運営方針会議のメンバーである「運営方針委員」は「文部科学大臣の承認を得た上で学長が任命する」と規定されています。すなわち、文科大臣の意に沿わない運営委員は承認されないおそれがある一方で、政府の意向を反映する運営方針委員を通じて大学の研究活動などを方向づけることも可能となります。

2020年12月、政府は「10 兆円規模の大学ファンドの創設」を閣議決定し、国立研究開発法人科学技術振興機構法 が改定されました。その後、内閣府に置かれた総合科学技術・イノベーション会議(CISTI)は「世界と伍する研究大学の実現に向けた大学ファンドの資金運用」について検討し、2022年、「国際卓越研究大学法」が制定されました。今年、国際卓越研究大学に東北大学が選定され、向こう25年にわたって大学ファンドから支援を受けることになりました。そもそも「運営方針会議」は国際卓越研究大学になる国立大学に設置が求められていたものです。なぜ、大学ファンドから支援を受けない国立大学にも「運営方針会議」設置を義務づける法案となったのか、中央教育審議会で議論されることもありませんでした。

2004年、「大学の自主性・自律性を高める」として、国立大学が法人化されて以来、政府は運営費交付金を削減し、教授会を学長の諮問機関にし、文部科学大臣が任命する監事の機能権限を拡大するなど、「大学の自治」を脅かし、「稼げる大学」への転換を誘導してきました。結果的に、日本の大学の研究力の低下が憂慮されている状況を招いています。大学関係者は今回の改悪法案を「大学の自治の死刑判決」とまで指摘しています。

「大学の自治」は「学問の自由」と一体であり、日本国憲法 第23条「学問の自由はこれを保障する」は、学問や科学が政治権力によって制約を受け、利用された反省をふまえた条文です。2020年、当時の菅首相は理由を一切示すことなく、「学問の自由」にもとづいて設立された日本学術会議の会員の選定に不当に介入したことは記憶に新しいところです。そして、岸田政権もまた「大学の自治」を踏みにじり「学問の自由」を侵そうとしています。

戦前・戦中の教育への痛切な反省をふまえ「教え子を再び戦場に送るな」の決意を心に刻む教職員の組合として、全教は今回の国立大学法人改悪法案提出を見過ごすことはできません。なぜなら「学問の自由」は教育基本法や「ILO/ユネスコの教員の地位に関する勧告 」にも位置づけられている通り、教職員がその専門性を発揮し、教育活動を進めることと不可分だからです。「学問の自由」の侵害は真理・真実を追究する教育をゆがめ、子どもたちの教育を受ける権利をも揺るがすものです。 全教は、今国会における国立大学法人法改悪法案に提出に抗議し、幅広い人々とともにその廃案をめざしてとりくみをすすめる決意です。

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