全教は2月18日、標記の書記長談話を発表しました。
文科省は1月31日に「教師不足」に関する実態調査 の結果を公表しました。文科省がようやく「教師不足」に関する調査を行い公表したことは、この間、現場で深刻となる教職員の未配置の広がり、いわゆる「教育に穴があく」問題を明らかにするうえで重要です。調査結果によると始業日の時点で、小・中学校、高校、特別支援学校で1897校(全体の5.8%)、2558人(全体の0.31%)の教員不足が起きています。この間、年度当初から欠員が生じ、少人数指導などの目的で配置されている教員や教頭・校長を担任に充てるなど、教員不足の常態化が広がっています。現場では子どもたちの教育を保障するために、教職員の努力でなんとか対応していますが、すでに限界を超えています。「教師不足」により現場の教育活動に支障をきたすことは、子どもたちの学習権が保障されていないという意味で、重大な問題であることを指摘します。
5月1日時点では、1591校(全体の4.8%)、2065人(全体の0.25%)と若干の改善がみられるものの解消には程遠い状況です。さらに、5月1日以降も育児休業・病気休職などがあり、全教の調査では2022年1月現在、千葉県で315人、大阪府では小・中学校で154人など教員の未配置が各地であり、現場からは「病気休職の欠員補充が来ず校内で負担した教職員が病気休職になった」など悲痛な声があがっています。学校現場には文科省の調査に示される数字以上に深刻な「教育に穴があく」実態が広がっています。
文科省の同調査では、学校に配置されている臨時的任用教員が、小・中学校、高校、特別支援学校で9万177人(全体の10.78%)にのぼり、そのうち定数内の臨時的任用教員は5万9668人(全体の7.14%)となるなど、学校現場が臨時的任用教員に支えられている実態も明らかになりました。
末松文科大臣は教員不足の要因として、大量退職に伴い臨時的任用教員が正規採用されたこと、産休・育休取得者の増加や特別支援学級の増加、教員採用選考試験の採用倍率の低下などを挙げ、教員不足に対応するため、学校における働き方改革、教職の魅力向上を進めるとしています。しかし、教員不足は国が正規教員を抜本的に増員するための「定数改善計画」を策定せず、人件費抑制のための「定数崩し」や「総額裁量制」によって、正規で配置すべき教員が臨時的任用教員や非常勤講師に置き換えられ続けた結果、引き起こされている問題です。地方自治体の財政力には限界があり、さらに、臨時・非常勤教職員が増えることが懸念されます。
また、学校現場で常態化している、過労死ラインを超える長時間過密労働や管理統制の強化が、若者の教職離れを加速していることが背景にあります。国の責任で正規教職員を抜本的に増員し、教員の授業持ちコマ数の上限設定などによる長時間過密労働の解消、競争的な教育施策をあらためること、教職員の待遇改善をすすめることが喫緊の課題です。
全教は競争的な教育政策を抜本的に転換することを求め、公財政支出の対GDP比でOECD諸国平均最低クラスの日本の教育予算を大幅に増額するとともに、義務・高校標準法を改正し、抜本的な定数改善による、20人学級を展望した少人数学級の前進・正規教員の増員を実現するために全力を尽くす決意です。