全教は、2月22日、書記長談話『子どもたちのいのちと健康を守り、誰もが安心して学ぶことのできる学校を(卒業式におけるマスクの取扱い等について)』を発表しました。
2023年2月10日、文部科学省は「卒業式におけるマスクの取扱いに関する基本的な考え方について」を通知し、政府新型コロナウイルス感染症対策本部の決定により、「4月1日より前に実施される卒業式におけるマスクの着用については、卒業式の教育的意義を考慮し、児童生徒等はマスクを着用せず出席することを基本」とすることを明らかにしました。
続けて、「卒業式は、学校生活の中で節目となる重要な行事であり、児童生徒等にとっても特別な意味を有するものとなります。このため、卒業式が有する教育的意義に鑑み、・・・別添『卒業式におけるマスクの取扱い等について』のとおりお示しします」とし、「各地域や学校の実情に応じて、卒業式の適切な実施」に努めるよう求め、「卒業式は子どもたちのマスクなし」を強く学校に押しつけようとしています。
卒業式は子どもたちにとっても、保護者・教職員にとっても重要な行事です。これまで、コロナ禍での卒業式にはあらゆる制限がかけられ、子どもたちが学校生活を振り返り、教職員や在校生との交歓を行うとりくみや、保護者・地域の人たちから優しく見送ってもらう心温まる交流ができないようにされてきました。この3月に卒業する子どもたちは学校生活の半分以上をコロナ禍で過ごし我慢を強いられてきました。だからこそ、卒業式は子どもたちのいのちと健康を守り、誰もが安心して参加できる形にすることが大切です。
「政府対策本部決定」は、「卒業式の教育的意義を考慮」するから「児童生徒等はマスクを着用せず出席することを基本」とすると、ごく当たり前のことを言ってるだけであるかのような書き方になっています。果たして、卒業式に参加する子どもたちや保護者、教職員、地域住民のみなさんは、それで納得するでしょうか。国は一体なぜ、そこまで「卒業式は子どもたちのマスクなし」にこだわるのでしょうか。突然の「通知」に学校は混乱しています。子どもたちの中には様々な事情でマスクを外せない子どもたちがいます。保護者に納得いく説明がされているとはいえない状況にあります。
「通知」の別添「卒業式におけるマスクの取扱い等について」には「児童生徒はマスクを外して差し支えありません」と繰り返し書かれていますが、これは明らかに子どもたちに「マスクを外せ」と言っているに等しいものです。一方で、留意事項に「健康上の理由によりマスクを着用できない児童生徒もいることなどから、学校や教職員がマスクの着脱を強いることがないようにすること」と書いていることは、同調圧力による差別・偏見や教職員による強制のおそれがあるからです。それならば、「卒業式は子どもたちのマスクなし」などを国が「決定」して、教育委員会・学校、自治体に押しつけることは、国家権力の濫用と言わざるを得ません。
文科省は、直ちに「通知」を撤回するとともに、各学校で準備されている、卒業する子どもたちを主人公にして、マスクのあるなしに関わらず、その学校で受ける「最後の授業」ともいえる卒業式を尊重し、誰もが安心して参加できるような形とすることをすすめるべきです。
文科省の「通知」を受けて都道府県・政令市教育委員会ではすでに文科省「通知」と同様の指示を地方教育委員会・学校にしているところが出ています。卒業式まで準備期間が少なくなる中で、このような「通知」や指示が出されれば、学校の計画は急な変更を迫られ、子どもたちの思いを裏切ることにもなりかねません。文科省は、直ちに「通知」を撤回し、教育委員会も学校への指示・強制を行わないようにすべきです。
子どもたちが心から参加してよかった卒業式となることを最優先に考えて、子どもたちのために無用な「通知」は直ちに撤回すべきです。