全教北九州市教職員組合(全教北九州)
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願いかなえる

2019年5月18日

北九州市人事委員会
委員長 河原一雅 様

日頃から北九州市職員の勤務条件の向上に努力されていることに敬意を表します。

さて、賃金の引き上げは、労働者の生活改善はもちろん、景気への刺激対策として社会的な要請となっていることは、首相が経済界に賃上げを要請したことからも明らかです。とりわけ、私たち地方の公務員賃金は地場の賃金にも影響し、地域経済と密接な関係にあり、その改善は北九州地域の活性化にもつながります。しかし、この間の公務員への給与制度の総合的見直しなどにより、改善にはほど遠いのが現実です。

教職員にあっては、権限移譲後地域手当率や職務段階別加算の引き下げ等で、退職前の教員では年間で約10万円の給与が引き下げられました。また、給特法により、教員については『原則として時間外勤務を命じないこと、命じる場合は、(1)生徒の実習(2)学校行事(3)教職員会議(4)非常災害等のやむを得ない場合、の業務に限定(いわゆる超勤4項目)』と決められ、その対償としての教職調整額が支給されています。この裏付けは1966年の文部省が実施した「教員勤務状況調査」の結果であり、現在の勤務実態と比べると大きくかけ離れた数値です。この点からいっても、教員の賃金は労働の対価に応じておらず、改善が必要です。

また、教職員の健康破壊も深刻です。精神疾患が原因での病気休職者数は高止まり状態で改善されていません。昨年度の文科省調査では、中学校教諭の約6割、小学校教諭の約3割が「過労死ライン」ということが明らかになりましたが、その背景にある長時間過密労働は改善されておらず、喫緊の課題となっています。

昨年度より小学校では学習指導要領の移行措置が始まりました。「特別の教科 道徳」の本格実施や「外国語活動」「外国語」の全面実施前倒しにより、教材研究、授業準備、評価にかかる時間がそれまで以上に増え、心身への負担は増大するばかりです。その解決策として「教科担任制」「持ち合い授業」「乗り入れ授業」の試行が始まりましたが、実施校では児童理解、教材研究において逆に時間不足が生じているなど、大きな混乱を招くなど疲弊の原因となっています。現場の教職員が求めているのは、少人数学級の拡大、専科教員の配置、持ち時間の上限設定であり、そのために必要な教員を増やすことです。

文科省は「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」の中で、「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を策定し、超勤が月に45時間を超えないようにとしています。また、「1年単位の変形労働時間制」の導入も検討されていますが、これらの施策は時間外労働の実態を覆い隠すだけで何の解決策にもならないことを強く訴えます。

第一線で奮闘する教育公務員の労苦に報い、ゆきとどいた教育をすすめるためにも、北九州市人事委員会が労働基本権制約の代償機関としての責務と役割をふまえ、下記の要求の実現に尽力されることを要請します。

  1. 子どもたちの教育のために、日夜献身的に奮闘している教職員を励ますとともに、職務に専念できるように、生計費原則をふまえ、正規、非正規を問わずすべての教職員の賃金・労働条件の改善に向けた勧告を行うこと。
  2. 非常勤教職員については、賃金をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現などに向けて必要な対策を行うこと。さらに、均等待遇に向けた必要な意見表明を行うとともに、賃金・労働条件の改善に向けた勧告を行うこと。
  3. 民間給与実態調査にあたっては、単に民間の賃金水準と機械的に比較するのではなく、教職員の専門性や労働実態を十分加味すること。
  4. 地方公務員の賃金引き下げを目的にした政府、人事院による給与制度改悪に反対するとともに、人事委員会として意見表明すること。
  5. 教員の異常な長時間過密労働を解消するために必要な正規の教員を増員する勧告をすること。また、労働基準監督機関として適切な労働時間管理が行われているか監督するとともに、適切でない事象が明らかになった場合は必要な措置を講じさせること。
  6. 男女共同参画推進、女性の活躍推進の立場から、妊娠、出産、育児、看護、男性の育児、介護に関する休暇・休業制度等を拡充するとともに、休暇・休業制度が取得しやすい職場環境を整えさせること。
  7. 病気の治療と仕事の両立支援の立場から、癌を含む長期治療を必要とする者への休暇・休業制度を拡充するとともに、休暇・休業制度が取得しやすい職場環境を整えさせること。また、治療復帰後の環境も整えさせること。
  8. 雇用と年金の確実な接続をはかるため、以下の要請実現に向けた勧告を行うこと。
    1. 職務給原則に基づき、年齢のみを理由とした賃下げは行わないこと。
    2. 定年延長後の退職に際して、現行の60歳定年時に支給される退職手当を下回らないこと。
  9. 勧告に係る内容については、政府・総務省の不当な干渉に屈することなく、第三者機関としての独立性を守り、公平・公正な立場で勧告作業を進めること。
  10. 人事委員会の勧告に向けた調査や作業にあたっては、全教北九州市教職員組合との交渉・協議、合意にもとづいてすすめ、組合の意向を充分反映し早期勧告に向けて努力すること。