全教北九州市教職員組合(全教北九州)
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願いかなえる


年度の最初の要求交渉ということで、全教北九州から本年度の重点的な要求についての趣旨説明をさせていただきます。なお、例年通り、6月に「教育条件整備に関する要求書」を提出します。こちらは、さらに具体的項目を要求にまとめたものです。検討をお願いします。

まず、市費負担教職員となり県費負担教職員の時の権利や待遇が切り下げられたものがあるなか、勤務、労働条件の改善を強く要求致します。

北九州の教職員の勤務・労働条件については、組合でも改善の要求を続けてきましたが、長時間過密・過重労働は一向に改善されるどころか、悪化する一方です。精神疾患等による病休者の減少も見られず、健康破壊、悪化を心配しながら日々先生方は教育実践に励んでいます。

教育委員会もこの現状を認識されているからなのでしょう、北九州版働き方改革ともいえる「学校における業務改善プログラム」を策定し、働き方の見直しを積極的に進める姿勢に対し、組合として評価しているところです。業務改善プログラムが、現場の先生方や児童・生徒にとって本当に実効あるものになるように期待するとともに、是非教育委員会からの目線だけでなく現場の先生方の意見、要求にも耳を傾けていただき、本年度の周知期間中にプログラムの問題点を検討、把握し、来年度からの本格実施に向け修正・改善していただきたいと思います。全教北九州も、現場からの声をこれまで通り届けさせていただきます。よろしくお願いいたします。

さて、教育委員会は、教職員の現在の待遇や労働実態をどのようにとらえているのでしょうか。先の文部科学省の教職員の働き方に関する調査結果が出されましたが、組合はこれまでも、松野文科大臣が「看過できない深刻な実態」というまでもなく、毎年深刻さを増す待遇・労働環境の悪化を具体的な事例を交渉の席などで教育委員会に伝え、改善の要求を続けてきました。今回、電通の高橋まつりさんの長時間勤務による過労とパワハラによる自死を受け、政府も「働き方改革」に本腰を入れざるを得なくなっているのもご存知の通りです。教師の長時間労働、過密労働の深刻さについても、マスコミなどで大きく取り上げられ、多数の国民、市民にその実態の一部が報道され、過酷な労働実態を知ることとなりました。

文科省調査で問題としている長時間労働ですが、中学校教諭の約6割、小学校教諭の約3割が「過労死ライン」を超えた働き方をしているとしています。一方で、名古屋大学の内田先生の調査のような、全国の9割の教員の出退勤が正確に把握されていない、というデータもあります。北九州は出退勤が正確に把握されているでしょうか。この北九州でも教職員の在校時間が長いところは教育委員会からの指導があるため、管理職も面倒なのでしょう。4月に入って早速、退勤を先に済ませそこから部活の指導をするようにと言っている教頭先生がいるとか、産業医の面談や保健指導の時間がもったいない、そんな時間があったら残っている仕事をしないと帰れない、だから在校時間が60時間を超えないように早く退勤処理を済ませそれから9時、10時まで職場で仕事をしている先生、それでも終わらないので土、日の休日出勤をする先生。もちろん、土、日に出勤しても、学校に出たことにしていない先生大勢います。残業手当もつかないので別に問題はないと考えているのですが。このように「過労死ライン」を超えている先生は数字には出てきませんが大勢いることは勤務時間を管理している校長先生、教頭先生はご存知です。管理職には、要求書に出退勤をシステムだけに頼らず、目視も含め正確に把握してほしいと要求しているのは、そのような現場の実態があるからです。委員会も文書で毎年通知していますが、「効率的な公務執行体制の確立や厳格な労働時間管理の徹底」を実現していただきたいと思います。

長時間過密労働に関連した要求項目についてです。まず、中学校の多忙の原因である部活問題ですが、今回教育委員会も月一回の休養日の提案や指導員の配置など組合側も一歩前進と評価しています。が、もうすでに休養日に高校の敷地を借りての練習など、生徒の休養の趣旨を逸脱したこともやられているそうです。これからこのようなことが広がることも予想されます。注視していただきたいと思います。

さて、長時間勤務の原因に「学力テスト」の取り組みがあります。先生方は、子どもたちのためにより質の高い教育を実践し、学力をつけたいと願っています。それは、「学力テスト体制」のなかで、学力テスト対策のための過去問練習をさせたり、学テでいい点数をとるために単元末テストをさせたりするために教師になったのではありません。教師なら、その本務である教育実践に希望と情熱をもって取り組みたいのです。小学校では、ほかにも、体力テスト、研究授業、道徳、英語の教科化による研修や授業研究、カリキュラムづくり、学体室の学校訪問、さらに書類の提出など、日常の授業やその準備、成績・評価の処理の仕事、生徒指導など、勤務時間内に終わらない仕事を抱え、さらに様々な行事や研修などが新しく現場におろされています。また、学力テスト対策のため、校時表を見直し、昼休みが短くなり、子どもの連絡帳やノートの点検もできなくなりました。法律で決められている45分の教師の休憩時間さえ今まで以上に取りにくくなったと不満を言う先生がいっぱいいます。校時表見直しで特設された補習授業は子どもの下校を遅くし、子どもたちから遊びの時間、仲間と触れ合う時間を奪いました。これが人間を育てる学校のやることでしょうか。

一日中休む間もなく働き続ける教師、疲れ果て疲弊しきっている教師が、子どもと向き合ったとき楽しい授業、楽しい学級をつくることができるのでしょうか。学校の主人公は子どもたちなのに、第一線でその子どもたちと接している教師がこんな状況で、よい教育、よい授業などできるはずもありません。よりよい学校、教育と教師の労働条件は車の両輪と考えます。北九州の子どもたちの健やかな成長のためにも、先生方の笑顔を取り戻し、子どもたち前で充実した教育活動が実践できる環境を保障していただきたいと思います。

このような働き方をしている先生方に対し、今回の待遇、勤務・労働条件の切り下げは、働く意欲をさらに低下させました。それまでも、長時間の労働を余儀なくされているその働き方に見合った報酬、待遇を要求していましたが、逆に切り下げられるなど全く納得できませんでした。これにさらに追い打ちをかけるように、4年前に退職手当400万円を減額したにも関わらず、本年度も官民格差3.08パーセント分約80万円を減額しようとしています。給与の減額と相まって、退職が近い教職員だけでなく、若い世代の教職員にも将来の生活設計に不安を抱かせています。退職手当の減額については、教育委員会も反対の意見をあげていただきたいと思います。

賃金も減額、権利、勤務条件も下がり、長時間過密、過重労働で不健康な生活を強いられ、仕事量だけは増え続ける。このような職場を世間ではブラック職場といいますが、長時間過密、過重労働の改善を早急に実現するとともに、その働きに対しては適正な待遇改善策の提案、具体化を強く要求致します。

また、「教育に穴があく」ことが問題となっています。4月なかなか担任が決まらない、学校事務職が配置されない、産休、育休の変わりの先生が配置されない、このような教育条件悪化が、職場の多忙化の誘因になっています。さらに専科教員の増員や6年までの35人学級の実施は、確かに組合でもこの間要求してきたことですが、しかし教員定数内のやりくりでは、それまでいた加配の先生が専科や担任に回され、人が足りずますます学校では多忙化が進み、大変を通り越して異常な状態です。これは、正規の教職員が足りないことにも起因しています。是非、市の独自の予算で教職員を増やすことを要求します。

過労・ストレスによる病気休職者、現職死亡をなくすためにも、教職員の健康管理の徹底、教育、勤務・労働条件の改善・見直しを教育委員会及び管理職が責任をもって行うことも要求させていただき、全教北九州からの趣旨説明と致します。